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シリーズ 国際社会とともに
ヤンゴンの“山手線”再生へ:渋滞緩和と鉄道近代化への挑戦(上)
[2018.07.25]

2011年に民主化にかじを切り、「アジア最後のフロンティア」として外国からの投資が増えているミャンマー。経済が活性化する一方で、社会基盤(インフラ)の整備がなかなか進まず、新たな社会問題が発生している。都市部の深刻な交通渋滞もその一つ。最大都市ヤンゴンでは日本の支援を受け、国鉄環状線の近代化・リニューアル工事が進んでいる。

バス頼りの交通体系で渋滞慢性化

ミャンマーの最大都市ヤンゴンは、周辺人口も含め730万人。この30年間で人口が80%も増えた一方、長く続いた軍政による国際社会からの孤立の影響が尾を引き、インフラ整備は遅れに遅れている。

平日の朝8時半、ヤンゴン中心部から北に5キロ離れたビルの屋上から周囲を見渡すと、眼下の幹線道路はバスとタクシーでびっしりと埋まっていた。現地在住の日本人駐在員は「30年前のバンコクと同じような渋滞」と話す。市中心部に向かう(南北に走る)幹線道路が2本しかない上に、東西方向に延びる道路はあまり整備されていない。渋滞解消の決め手は今のところ見つかっていない。

ヤンゴン中心部に向かう渋滞の列

都市交通の中に鉄道の選択肢がほとんどなく、バスに頼り切っているのも交通渋滞が慢性化する一因だ。ヤンゴン管区政府は2017年1月、民営バスを統合してヤンゴンバスサービス(YBS)に一本化。複雑だった路線を整理し、中心部への乗り入れ路線を制限したが、今のところ「焼け石に水」のようだ。

市内の企業、事業所は通勤対策として、マイクロバスや屋根付きのトラックを借り上げて従業員を送迎している。このシステムはカーフェリーと呼ばれ、「自宅近くにフェリーが停車してくれるかどうかが、勤め先を決める大きな基準にもなっている」(地元住民)という。加えて、日本からの輸入中古車を使ったタクシーも急増。管区政府は、今後タクシーの台数制限も検討するとしている。

ヤンゴン市内を走るバス。中国製の中古が多い

小規模事業所の借り上げ通勤トラック。従業員は荷台に乗って帰宅する

速度アップで「使える」市民の足に

ヤンゴンの人口は今後も増え続け、2030年代には1000万人に達するとの予測もある。急速な都市化に対応する交通対策の当面の「切り札」として、現在進められているのがミャンマー国鉄・ヤンゴン環状線の近代化・リニューアル工事だ。

環状線は、東京の山手線よりやや長い一周46キロメートル。英国植民地時代の1877年に一部区間で運行を開始し、1954年に環状線として一周がつながった。車両、線路の老朽化で、現在は平均時速15キロでしか運行できず、一周に約3時間もかかっている。リニューアル事業では軌道や路盤を改修、日本の円借款を最大250億円利用し、新たな信号機器と沿線に自動踏切装置を設置するほか、日本の新車両(電気式ディーゼル気動車)を11編成、66両導入する。既に工事は始まっており、2020年の暫定運用開始を目指している。

ヤンゴン環状線の路線図

ミャンマー国鉄でヤンゴン近郊地域を統括するディレクター、ゾー・ウィンさんは「環状線の近代化は、国鉄の最重要プロジェクト。鉄道が便利で快適な乗り物であると認識されれば、交通渋滞も一定程度緩和される」と力を込めて語る。

ゾー・ウィンさん

計画では、リニューアル後の環状線は平均時速が26キロ、最大速度60キロにスピードアップし、一周にかかる時間は60分短縮されて約2時間に。現在15~45分に一本しかないラッシュ時の運行間隔は、10分に一本程度になる予定だ。

ゾー・ウィンさんによると、ヤンゴン中央駅から7駅先のチミダイン駅、ここは新都市開発が行われている地区だが、この区間は道路の激しい渋滞で、現在バスや自動車だと45分はかかるという。「ですが、リニューアル後はこの区間を20分前後で鉄道が走る。他の主要駅とヤンゴン中央駅間でも、鉄道の方が早く移動できるようになります」。

沿線では、ヤンゴン中央駅周辺で大規模な再開発の動きがあるほか、中央駅以外の3つの駅を対象に国鉄が再開発の提案を募集している。現在のヤンゴンは中央駅南側に都市機能が一極集中しているが、環状線がリニューアルを機に東京の山手線のような役割を果たし、都市機能が分散すれば、交通渋滞の緩和も期待できる。

ミャンマー政府は環状線リニューアルに加え、膨れあがるヤンゴンの人口増加を見越して、都市の東西、南北を結ぶ新路線も視野に入れている。高架や地下鉄部分などを含む近代的な鉄道システムが必要だが、国際協力機構(JICA)はこのほど、この将来的な計画についての実行可能性能調査(フィジビリティスタディ)に着手した。

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