シリーズレポート「老いる日本、あとを追う世界」

超高齢化社会の先頭を走る日本

社会

笹川平和財団「アジアにおける少子高齢化」プロジェクトチームによるシリーズの第1回として、日本の高齢化の現状と、「課題先進国」としての取り組みの概要を紹介する。

21世紀は「人類の老いる世紀」

世界の人口が、歴史上例をみないないほど激しく揺れ動いているのはご存じだろうか。第1は、南北間の人口格差。増えつづける「南」と減りつづける「北」。同時に、南から北へ大量の難民や移民の移動がつづき、さまざまな摩擦が生じている。

第2は、農村から都市への移動だ。世界的に農村の空洞化が著しくなるとともに、ついに世界の都市人口は史上はじめて農村人口を上回った。そして第3が、人口の年齢構成の急変、とくに高齢人口の増加と年少人口の減少だ。

先進国の高齢化は1990年ごろから目立ってきた。とくに日本は世界のトップを走り、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は2015年に26.7%に達した。2060年前後にはほぼ40%に達すると予想されている。

世界を見回しても、これから2040年ごろまでの間に、ドイツ、イタリア、スペインなどのヨーロッパ諸国、少し遅れて韓国、タイ、シンガポールなどのアジア諸国が次々に30%ラインを超えていく。65歳以上の世界人口は、2050年までに約2倍に膨れあがることからみても、21世紀は「人類の老いる世紀」といっても過言ではないだろう。

人口の3割が65歳を超える「超・超高齢社会」の到来

これからの10年、日本はどうなっていくのだろう。2025年には総人口が1億2000万人を割り込む。団塊世代の大部分が75歳以上の後期高齢者に達し、国民の3割が65歳以上、2割が75歳以上になると予測される。歴史上、例をみない「超・超高齢社会」の到来である。

当然のことながら、介護・医療費など社会保障費が急増する。介護費用は今年度予算では10.4兆円だったのが、2025年には約20兆円に近づくとみられる。認知症を患う人の数は、2025年には現在の1.5倍の700万人を超え、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症になるともいわれる。そのとき、介護要員が100万人も不足する事態も心配されている。むろん、税・社会保険料負担率の引き上げや給付水準の抜本的な見直しを迫られるだろう。

しかし、こうした暗い未来予測をはね返すそうと、さまざまな取り組みが民間や自治体などで盛んになってきた。日本人の昨年の平均寿命は83.7歳で、長寿世界一の座を20年間守りつづけている。健康寿命でも男性が71.1歳、女性が75.6歳で世界のトップだ。健康増進、病気予防などさまざまな努力が実ったといってよいだろう。

東京・巣鴨の商店街を歩くお年寄り(時事)

高齢化社会の先頭を走る日本を手本に

日本人は高齢になっても勤労意欲が高く、また社会参加率も高い。これも、長寿の延長につながっている。元気な高齢者たちが中核になった活動も増えている。高齢者を支援するための介護機器も重要な産業に育ちつつある。高齢化社会の先頭を走る日本は、あとを追って高齢化しつつある国々にとっては格好のお手本にもなっている。

笹川平和財団は、昨年からアジア地域の高齢化に対応するための研究プロジェクトを立ち上げた。その一環として、高齢化に取り組む、内外の情報を発信していきたい。

 

プロジェクトの概要について

笹川平和財団 新領域開拓基金「アジアにおける少子高齢化」事業

バナー写真=小浜島のばあちゃん合唱団「KBG84」(AFP=時事)

少子高齢化 笹川平和財団