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沈黙—サイレンス—(2017年1月)

文化 Cinema

マーティン・スコセッシ監督の最新作『沈黙—サイレンス—』は、信仰とは何か、善と悪とは何かという本質的な問いに迫るスコセッシ監督入魂の作品だ。

作品情報

原作=遠藤 周作「沈黙」(新潮文庫刊)
監督=マーティン・スコセッシ
脚本=ジェイ・コックス/マーティン・スコセッシ
撮影=ロドリゴ・プリエト
美術=ダンテ・フェレッティ
編集=セルマ・スクーンメイカー
キャスト=アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚 洋介、浅野 忠信、イッセー尾形、塚本 晋也、小松 菜奈、加瀬 亮、笈田 ヨシ
製作年=2016年
製作国=米国
配給=KADOKAWA
公開日=2017年1月21日
上映時間=162分
公式サイト=http://chinmoku.jp/
フェイスブック=https://www.facebook.com/SilenceMovie.Japan/

見どころ

マーティン・スコセッシ監督の最新作『沈黙—サイレンス—』が1月24日アカデミー賞「撮影賞」にノミネートされた。台湾のロケ地に再現した江戸時代の長崎を舞台に、荒々しい海、自然景観の中で、過酷なキリシタン弾圧と、棄教を迫られ苦悩する宣教師のドラマが繰り広げられる。なるほど、その強烈な印象は、撮影監督ロドリゴ・プリエトの手腕によるところも大きい。だが、巨匠スコセッシ監督の執念、いや魂の込められたこの壮大な作品には、むしろ監督賞ノミネートがふさわしかったと思う人は少なくないはずだ。

昨年10月にスコセッシ監督は10年ぶりに来日したが、その時にはまだ映画は完成していなかった。1月16日に再び来日した際の記者会見では、ようやくこの映画が完成して日本で公開できることはまさに “dream come true” だと感慨深げに語った監督。遠藤周作の原作小説との出会いから映画化が実現するまでに28年もの歳月を要したのだから、無理もない。

映画の評価、好き嫌いは個々の観客次第だが、3時間近い上映時間を通して圧倒され、見終わった後にいつまでも心に残る作品であることは間違いない。見どころの1つは役者たちの鬼気迫る演技だ。信仰を貫くか、棄教して信者達の命を救うか―究極の選択を迫られる若きポルトガル人宣教師ロドリゴを演じるのは、アンドリュー・ガーフィールド(今回のアカデミー賞では、メル・ギブソン監督『ハクソー・リッジ(Hacksaw Ridge)』で主演男優賞にノミネート)。ロドリゴと共に日本に潜入するもう1人の宣教師ガルペを、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でカイロ・レン役を演じて一躍スターとなったアダム・ドライバーが演じる。その独特の鋭角的な風貌が、役作りのための減量によりさらに研ぎ澄まされ、不思議な存在感を醸し出す。

そして、日本人の役者たちの個性的な演技が、映画全体に緊張感をもたらす。『鉄男』『野火』などの作品で海外でも評価が高い映画監督、塚本晋也は隠れキリシタンのモキチをまさに体当たりで演じている。モキチの海の中でのはりつけシーンは、目をそむけたくなるほどリアルであり、神の沈黙と自らの無力に苦しむロドリゴの苦悩に観客の心を共振させる。

キチジロー役の窪塚洋介、長崎奉行井上役のイッセー尾形、通辞役の浅野忠信も、新境地を開いたと言っていい演技だ。海外でその映画が高い評価を得たイッセーは、この映画の見どころをこう語っている。「日常生活からかけ離れた世界、過酷な絵巻です。まるで万力で締め付けられ、そこから人間が絞り出されたような…。それでいて見終わった後に、清らかなものが残っている。それは一生続くだろうという確信があります」(1月12日東京・外国人特派員協会での記者会見)。

台湾で撮影中のマーティン・スコセッシ監督(中央)と撮影監督のロドリゴ・プリエト(右) © 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

ロドリゴ役のアンドリュー・ガーフィールド(右)を演出中のスコセッシ監督 © 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

キチジローを演じる窪塚洋介 © 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

2017年1月5日、ロサンゼルスで開催されたプレミア上映に登場した監督とキャスト(左から塚本晋也、浅野忠信、マーティン・スコセッシ、アンドリュー・ガーフィールド、窪塚洋介、イッセー尾形)© MICAFOTO

『沈黙-サイレンス-』特別映像

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