HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話(2017年9月)
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作品情報
監督・脚本・編集=佐藤 慶紀
キャスト=西山 諒、西山 由希宏、荒川 泰次郎、岩井 七世、野沢 聡、他
製作=佐藤 慶紀、塩月 隆史、小林 良二
撮影=喜多村 朋充
音楽=ベンジャミン・ベドゥサック
配給=渋谷プロダクション
製作年=2016年
製作国=日本
上映時間=95分
公開日=2017年9月9日より、新宿K’s cinemaほか全国で公開
公式サイト=https://www.hermother-movie.com/
フェイスブック=https://www.facebook.com/Her-Mother-323206188119383/
見どころ
「もし肉親を殺されたら…」などと物騒なことを考えることは日常めったにない。あるとしたら、死刑の是非を考えるときくらいだろう。そして、死刑制度が存置されている日本では、「遺族の気持ち」が存置派の論拠の柱の一つとなっているのだから、とりわけこの問いは避けて通ることができない。
もし肉親を殺されたら、犯人がどうなることを望むだろう。自らの手で殺したいという気持ちになるのだろうか。それができないために、国家に処刑されることを願うのだろうか。加害者がこの世からいなくなることで、気持ちに区切りが付けられる、殺された肉親の無念が晴れるような気がする、という人がいるかもしれない。逆に、犯人に簡単に死んでほしくないという人もいるだろう。来る日も来る日も懺悔(ざんげ)し、苦しみ抜いて生き続けるべきだと。
この物語では、娘をその夫に殺された母親が、拘置所にいる犯人との対話を望む。謝罪の言葉などいらない。娘を殺した本当の理由が知りたいのだ。しかし死刑が確定してしまうと、死刑囚と遺族の接見は許されない。母は夫や弟と袂(たもと)を分かってまで、殺人犯の死刑を止めようと動き出す。
私たちには、抽選で裁判員に選ばれれば、死刑が適用され得る重大事件について判断を迫られる可能性がある。死刑制度について深く考え続けることは、市民としての責務なのだ。この映画は、法や人権をめぐる議論を越えて、現実感に訴えかけてくる。賛成か反対かという結論に短絡せず、よくある「ゆるし」というテーマに帰結することもなく、死刑について深く考えさせる新たな視点を提供してくれる。
文=松本 卓也(ニッポンドットコム多言語部)
予告編
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