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シリーズ 日本語が通じない?日本人
教科書が読めない子どもたち:AIに仕事を取られる前にすべきこと
[2018.03.06]

人工知能(AI)が言葉の意味を理解していないことについては、先の記事でも書いた。それでは私たちは十分に言葉の意味を理解できているのだろうか? その疑問に答えるべく開発されたのが、読解力を測る「リーディングスキルテスト」だ。2017年11月のフォーラムで発表されたテストの仕組みと、危機感を覚えるその結果を踏まえ、主導した国立情報学研究所の新井紀子氏に聞いた。

新井 紀子

新井 紀子ARAI Noriko国立情報学研究所教授、一般社団法人教育のための科学研究所代表理事・所長。一橋大学法学部卒業、イリノイ大学数学科博士課程修了。専門は数理論理学。11年、「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトを開始。16年より読解力を測定する「リーディングスキルテスト」の研究開発を手掛ける。主な著書に『数学は言葉』(東京図書)、『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)など。近著に『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)がある

大学入試でAIが人間を上回る

「ロボットは東大に入れるか?」というプロジェクト名を聞いて、どう思うだろうか? ロボットを東大に入れることを目的にしていると思うかもしれない。しかし、このプロジェクトを率いた国立情報学研究所の新井紀子氏が目指したのは、東大に入れることではなく、人間と比較し、AIの可能性と限界を明らかにすることだった。

約6年間の研究の結果、AIは東大には入れないが、偏差値57を超え、高校3年生の上位20%に相当する成績で、一部の有名私立大学に合格できるレベルにあることが分かった。しかしAIは、言葉の意味を理解して問題を解いているのではない。プロジェクトのために開発された「東ロボくん」というAIは、例えば小論文なら教科書とウィキペディアを検索し、文を取り出して組み合わせ最適化して書くだけだが、たいていの学生が書くものより質が高いという。なぜ文章を読んで理解できないAIが人間に勝てるのか? そう考えた時に新井氏はこう思った。「中高生は読めているのか?」。

子どもたちの実態を知るために

そこで読解力を測るために新井氏らが開発したのが、リーディングスキルテスト(以下、RST)だ。2016年4月から17年7月末までに全国で2万5000人がこのテストを受検した(現在までの受検者数は4万人を超えている)。強制でもない調査にこれほどの協力があることは異例のことだと新井氏は言う。

「とても多忙な学校と先生たちが、このテストをやろうと決断してくれました。日々の授業の中で先生たちが不安に思っていたことが読解力だったからこそ、RSTで子どもたちの読解力の実態を知りたかったのだと思います。この受検者数は、RSTへの支持の声と受け止めています」

問題は6タイプあり、「それ」「これ」など指示詞、省略された主語や目的語が何を指しているか判断する「照応」、主語や目的語がどれか判断する「係り受け」、論理と常識を用い与えられた文から推論する「推論」、定義を読んで具体的にどのようなコトやモノがその例になりうるか見分ける「具体例同定」、2つの文が同義であるか判断する「同義文判定」、文章に対応する図表を見分ける「イメージ同定」だ。中学・高校の教科書や辞書、新聞に掲載された文から問題を作成している。つまり、これが読めなければ、教科書も辞書も新聞も読めないことになる。

「数学の入門書を書き始めた頃から、私はしばしば実際に中学校に行って教えたり、一緒に給食を食べて子どもたちと話をしたりしてきました。彼らがどんな所で分からなくなってしまうのか知るためです。これは今始めたわけではなく、私自身が『3年B組金八先生』が流行っていたころの荒れた公立中学校の生徒で、学級委員として、髪を立て裏に派手な刺繍のある学ランを着ている同級生に勉強を教えていた時から続けていることです。簡易宿泊所の集まる山谷で2年間、毎週炊き出しをする中でも、人がどこでつまずいてしまうのかを見てきました。それがRSTに繋がっています」

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