シリーズ 太平洋の親日国家・パラオの真実
レメンゲサウ大統領単独インタビュー:「日本とパラオは兄弟関係、私には日本人の血が流れている」

野嶋 剛【Profile】

[2018.02.09]

パラオのトミー・レメンゲサウ大統領に、日本との友好関係や自国の安全保障環境を巡る問題、台湾との国交関係、今後の観光施策などについて幅広く話を聞いた。

トミー・E・レメンゲサウ・Jr

トミー・E・レメンゲサウ・JrTommy E. Remengesau, Jr.パラオ共和国大統領。1956年生まれ。米国で犯罪学を学んだ後、28歳で上院議員に。2001年から2009年にかけて2期8年大統領を務めた後、12年に再選されて現在4期目。15年の天皇・皇后両陛下のパラオ訪問で接待役を務めた。毎年のように訪日しており、安倍晋三首相とも親しい関係で知られている。

パラオ

人口約2万人。首都はマルキョクだが、旧首都のコロールが商業や経済の中心になっている。透明度の高い海はダイビングの世界的な聖地であり、政府も環境保護を重要政策に掲げる。第一次世界大戦後、国際連盟の委任統治領として日本が約30年間統治。コロール島にはミクロネシア北部の島々(旧南洋諸島)を管轄する南洋庁が置かれ、パラオ人の人口を大きく上回る最大で2万5000人の日本人が暮らした。太平洋戦争の激戦地であるペリリュー島があり、戦後70年の2015年には天皇、皇后両陛下がパラオを訪れ、同島で慰霊祭に参加した。

今も強い日本との絆

野嶋 パラオと日本の友好関係はよく知られています。大統領は、パラオと日本の関係はどのように形容しますか。

レメンゲサウ大統領 パラオと日本との関係は「兄弟」と称してもいいものです。われわれからすれば日本は兄です。パラオの国旗は海の青色の下地に黄色い月で、日本の国旗は白地に赤い太陽。月と太陽が共存しているようなイメージです。パラオと日本の関係には長い歴史があり、昨日今日、急に近づいたわけではなく、太平洋戦争の前も後も、互いにを尊重し、理解に努める先人たちの功績がありました。

私たちパラオの社会には、いまも多くの日本語が使われています。料理などには日本語の語彙(ごい)が非常に多く、われわれは日本料理を日常的に食べています。日本が残したその文化は、パラオ社会と深く絡み合いながら、(戦前の人々を第1世代とすれば)第2、第3、第4世代にまで伝えられています。

野嶋 パラオ人の4分の1が日本人の血統を有しているとも言われますが、大統領のご先祖にも日本人がいたそうですね。

大統領 その通りです。私の祖母の家系には日本人の血が入っています。祖母の父が日本人だったのです。

野嶋 パラオ社会で日本語が使われていると大統領はおっしゃいましたが、特にご自身で子ども時代から使い続けた印象深い言葉はありますか。

大統領 多くの言葉が家庭の「しつけ」に関するものです(笑)。「しょうがない」や「直らない」など。「美味しい」はよく使いますね。「疲れた」も。政府関係でも「電話」「選挙」「大統領」などよく使います。パラオ語には3000以上の日本語の語彙が残っていると言われています。

天皇のパラオ訪問、観光にも波及効果

野嶋 大統領も2期勤めていったん大統領職を離れ、そのあと返り咲いていま3期目を迎えていますが、安倍首相と大統領の親しい関係もよく知られています。

大統領 安倍首相との関係は温かく、強いものです。2人とも長期政権ですからね。私は「2人の安倍首相」を知っています。2期目の安倍首相のほうが好きです。何と言っても1期目は短かった(笑)。1期目の経験から学び、成長したように思えます。私も含めて、一度目より二度目のほうがうまくやれるものです。安倍首相はオープンな人で、太平洋地域の重要性をよく理解している。太平洋地域の島しょ国との人的交流や持続的な経済成長を目指し、米国とも協力しながら、日本のリソースやテクノロジーを提供してくれています。

野嶋 大統領は日本を何度、訪れていますか。

大統領 20回は行っています。上院議員のとき、副大統領のとき、そして大統領のときも含めると。常に日本には行きたいし、行く必要があるからです。日本は安全で親切で清潔、そして魅力的な場所です。和食は、味も盛り付けも素晴らしい。しかし、何よりもわれわれパラオと日本の歴史的な結びつきから、人と人との交流が心地よく、常に日本滞在を楽しんでいます。

「第7回太平洋・島サミット」の記者会見を終え、安倍晋三首相(右)と握手するレメンゲサウ大統領=2015年5月23日、福島県いわき市(時事)

野嶋 天皇陛下が来年退位されることになりました。天皇陛下は皇后陛下と共にパラオを慰霊のために訪れていますね。

大統領 第1に、天皇陛下が、日本、パラオ、そして世界の海洋環境と生物多様性の保護に対して大きく貢献していることに深い敬意を覚えます。彼は特に魚類に対して非常に鋭い見識を持っておられる。彼のパラオ訪問は、パラオ・日本関係における素晴らしい瞬間でした。天皇皇后両陛下との交流の時間は、パラオの人々にとっても誇りと喜びであり、日本との特別な友人関係を象徴するものです。

パラオで多くの人が天皇陛下と握手を交わしました。日本でも、そこまで近づくことは大変難しいと聞いています。パラオで歓迎会が開かれた時、陛下は参加者やパフォーマーたちと一人ずつ握手してくれました。皆が「私、本当に天皇陛下と握手したの?」と感激していました。

彼の訪問によって、日本の方々がパラオにより注目し、日本からのツーリストも増えました。天皇が訪れたのと同じ場所に訪れたいという波及効果を生んでいます。戦争を二度と起してはならないという天皇陛下のメッセージは明確です。天皇陛下には引き続きご活躍してほしいところですが、お身体を休め、ご家族とゆっくり過ごされることも大切でしょう。

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  • [2018.02.09]

ニッポンドットコム・シニアエディター。ジャーナリスト。1968年生まれ。上智大学新聞学科卒。在学中に、香港中文大学、台湾師範大学に留学する。1992年、朝日新聞入社。入社後は、中国アモイ大学に留学。シンガポール支局長、台北支局長、国際編集部次長等を歴任。「朝日新聞中文網」立ち上げ人兼元編集長。2016年4月からフリーに。現代中華圏に関する政治や文化に関する報道だけでなく、歴史問題での徹底した取材で知られる。著書に『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『故宮物語』(勉誠出版)等。オフィシャルウェブサイト:野嶋 剛

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