福島、元気です!

「福島、元気です!」特集を私たちが始める理由

社会

30本近い原稿による「福島、元気です!」をスタートする理由は、現在の「福島」を理解し、思考する素材にアクセスできる情報プラットホームの提供にある。

nippon.comでは、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きた2011年3月11日から7年が経過した今年の3月11日を控える中、本日より、30本近くの原稿による大型特集「福島、元気です!」をスタートする。

この特集を始める最大の理由は、「福島」という問題を理解し、思考する素材にアクセスできる情報のプラットホームを提供したいからだ。

福島第一原発では、人類史上未曽有の放射能災害が起きた。このことは、私たち日本人が背負った巨大な十字架であり、福島の人々は特に大きな苦しみの中にある。福島第一原発に残された放射能汚染物質の処理は終わっておらず、福島第一原発をどのように廃炉まで持っていくのか、日本人はまだ技術的な解決方法を見つけていない。福島の課題は事故後7年が経過しようとしているにもかかわらず、解決というには程遠い状態で、原発周辺の12市町村に対する避難指示は今もなお解除されていない。これが現実である。

福島第一原発の事故による放射能汚染が、日本と国境を接する世界の人々に与えた恐怖の大きさを、日本人は想像しなくてはならない。そこには、科学的な数値だけでは計れない心理的恐怖も含まれている。この点については、日本は世界各国に迷惑をかけた立場であり、大変申し訳なく思っている。

筆者は日本人と台湾人半数ずつ

日本からの食品輸入に対して、台湾は、福島県および茨城、栃木、群馬、千葉の近隣4県の輸入を禁止している。この点について、日本側はすでに食品の安全性に問題はないとして、台湾に対して、輸入規制の解除を求めている。しかしながら、台湾の中では、2016年以来、この問題が政治問題化して議論に決着がついておらず、解決に至っていないのは周知の通りだ。

私たちnippon.comは民間のメディアであり、日本政府の立場がどうであれ、台湾の輸入規制の是非について、賛否を含めて一つの方向に誘導する考えはない。

世界貿易機関(WTO)などの国際ルールに従えば、解除が妥当であるという意見もある。欧米や東南アジアの国々には規制を解除した国が大半だ。アジアでは、韓国や中国が台湾と並んで厳しい態度をとってきたが、中国は今年の日中関係改善の中で、この規制緩和について協議に応じる構えを見せている。そして、台湾の中にもいろいろな声がある。

最終的に、輸入規制を解除すべきかどうか、解除するとしたらどのようにするべきか、台湾の人々が決める問題であり、規制について、科学的な根拠があってもなくても、台湾の人々が「嫌だ」と思うものを、無理やり輸入させるようなことはするべきではない。食物の安全性に対する人々の感情は、科学的数値だけでは測り切れないものがあることを私たちは理解している。

しかし、一方で、福島を含む5県の農産物や水産物を普通に日常生活の中で安全だと考えて食べている日本人として、「核災食品」などという差別的な名称が使われていることは残念である。台湾には「福島」について、十分な情報がないことが今日の事態を生んでいるのでないかと私たちは考えた。

そこでこの特集では、まずは、福島についてのさまざまな情報や見解を読者の皆さんに読んでいただくことにした。その内容は科学的なものから福島のグルメ情報に至るまで多岐にわたっており、半数は日本人の筆者、半数は台湾人の筆者によるものになる。

特に統一的な編集方針はない。ただ、福島について、いいことも悪いことも含めて、多種多様で豊富な情報を提供することを目標としている。メディアの役割はここまでだ。これらの文章を読んだ上で、どのように考えるかは台湾の人々に任せたい。

台湾の若者の「福島、お元気ですか?」に感謝

この特集をやりたいと考えたきっかけは、台湾の若者たちが昨年11月、「福島、元気?」という展示を、台北で開いたことだった。台湾の若者たちが、福島について関心を持って、自ら福島に乗り込み、現地の人々と対話し、その情報を台湾に伝えたことに感謝するとともに、ショックも受けた。

私たち日本人も、彼らのように、福島について、何か、自分たちができることを、するべきではないか。なぜなら福島の問題は日本人の問題であり、日本の情報を対外的に発信するnippon.comこそ、取り組むべき課題だからだ。台湾の若者たちが行ってくれた「福島、元気?」の企画に感謝を込めて、この特集のタイトルは「福島、元気です!」とした。

台湾と日本は現在、極めて良好な関係にある。相互往来は空前の活況を呈しており、毎年の訪問者は650万人を超えようとしている。日本の日本台湾交流協会が台湾で行った世論調査でも、台湾の台北駐日経済文化代表処が日本で行った世論調査でも、どちらも「最も好き」という国に5割以上の民衆がお互いを挙げているのである。活発な交流と良好な感情。簡単なようで、なかなか実際には実現が難しいことを成し遂げている現在の日台関係をわれわれは大切にしなくてはならない。

福島の問題があっても台湾の人々は日本に来てくれているし、台湾が日本の福島食品を輸入しなくても、日本人は台湾に観光に行くだろう。ただ、複雑な歴史を経ながら、今ピークを迎えているといえるこの良好な日台関係の中で、唯一、喉に刺さった骨のように痛みを発し続けている福島の問題はいつか解決されなければならない。その時は、台湾の人々も日本の人々も納得のいくような決着点が、お互いの知恵によって見いだされることが大切だ。

この特集「福島、元気です!」がその一助になることを願っている。

バナー写真=地域の復興のシンボルとなっている「かしまの一本松」(福島県南相馬市鹿島区)。約3キロあった松林で、東日本大震災の津波から唯一残ったが、防災林の整備工事が始まるため、今秋に伐採される予定だ(編注:2017年12月27日に伐採された)。工事終了後、地元の有志たちが一本松の種から育てた苗木を、同じ場所に植樹するという、2017年3月10日(時事)

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