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東日本大震災から3年――復興の現状

社会

未曾有の被害をもたらした東日本大震災から3年が経過した。大震災・大津波・原発事故からの復旧・復興はどこまで進んだのか。

未曾有の被害をもたらした2011年3月11日の東日本大震災から3年が経過した。政府は2014年3月11日に東京・国立劇場で追悼式を主催し、天皇、皇后両陛下、安倍首相、犠牲者の遺族代表らが参列し、犠牲者の冥福を祈った。安倍晋三首相は被災4年目に向け、復興を加速させる決意を表明した。大震災・大津波から3年。復旧・復興はどこまで進展したのか――。

避難生活者は今なお26万7000人

被災被害状況は3月10日現在、死者1万5884人、行方不明者は2633人(警察庁まとめ)。避難生活を送っている人は1年前に比べ4万7000人減少したが、今なお26万7419人いる(2月13日現在、復興庁まとめ)。また、仮設住宅での生活を余儀なくされている入居者も減少しているが、まだ10万2650人(8県で4万6275戸)と10万人を超え、住まいの復興は遅れている。

東日本大震災直後の気仙沼では船が打ち上げられ、周辺はがれきで埋め尽くされていた(写真左)。女川でもがれきの山がいくつも見られた(写真右)。(撮影=久山城正)

一方、被災地域におけるがれき(災害廃棄物)処理については、この3年間で1613万トンに達し、福島県の汚染廃棄物対策地域を除けば、全体の95%まで処理が進展した。津波による堆積物も894万トンと全体の94%の処理が完了した。

気仙沼(写真左)も女川(写真右)もがれきの山は撤去されていた。(撮影=コデラケイ)

住環境整備、産業回復は“遠い道のり”

しかし、産業の復旧・復興状況を見ると、大震災の前の水準を回復している割合の高い業種は、建設業(66%)、運輸送業(42・3%)に集中し、東北の地場産業である水産・食品加工業(14%)や卸小売り・サービス業(30・6%)の回復はまだ進んでいない。また、被災自治体全体で、事業所の減少や人口流出などにも直面している。

特に、福島県では原子力災害に伴う帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域を抱えているため、復旧・復興状況は岩手、宮城両県に比べ遅れている。現在、避難者や被災者の居住の安定を図るため、福島県が中心となり復興公営住宅の整備を進めており、被災者の住環境整備や生活再建への道のりはまだ長い。

岩手県大槌町の仮設住宅。(撮影=三輪憲亮)

安倍首相、被災4年目の復興加速を表明

安倍首相は復興4年目を迎える3月10日の記者会見で、「東北の復興なくして日本の再生なし」とのスローガンのもと、被災地の復興を加速させる考えを改めて強調。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催までに「復興を成し遂げた東北を世界に示したい」と表明した。

また、安倍首相は「被災地住民に復興を実感できる1年にしていく」として、2015年3月までに、200地区の高台移転や1万戸を超える災害公営住宅(復興住宅)を完成させると約束した。東京電力福島第一原子力発電所の事故で復旧が大幅に遅れている福島県に対しては、汚染水対策の推進や常磐自動車道の全面開通など県内のインフラ整備に力を入れる方針を示した。

東日本大震災による被災状況

(*復興庁、警察庁、環境省、岩手・宮城・福島各県のデータなどを基に編集部作成)

避難者の状況

(人)

 全体避難所住宅等
2011年3月
発災3日目
47万人
2012年12月 321,433 159 305,048
2013年12月 274,088 0 259,916
2014年2月13日 267,419 0

*青森・岩手・宮城・福島・茨城・栃木6県の避難所合計

仮設住宅の入居状況

 公営住宅等(人)民間住宅仮設住宅 
2012年12月 30,222 157,576 112,996 全国計
2013年10月   
(戸)
24,797 131,102 102,650 岩手・宮城・福島・茨城・栃木千葉・長野各県
9,153 53,392 46,275

*仮設住宅に避難している人は、2013年10月現在で10万2650人に上っている。

災害廃棄物(がれき)処理の状況

  • 福島県の一部地域を除き、2014年3月末までに処理可能な見込み。
  • 避難区域を除く福島県では、仮置場への搬入は2013年度内の完了をめざすとともに、2014年度のできるだけ早期の処理完了をめざす。

災害廃棄物処理の状況

 推計量(A)撤去済み量(B)撤去率(B/A)処理・処分量(C)処理・処分割合(C/A)
災害廃棄物 1,661万t 1,614万t 97% 1,515万t
(605万t)
91%(34%)
津波堆積物 1,087万t 1,026万t 94% 894万t
(140万t)
82%(15%)

*岩手県、宮城県、福島県の沿岸32市町村
*2013年11月末現在
*福島県の汚染廃棄物対策地域(国直轄処理地域)を除く、( )内は2012年11月末の数値

処理割合市町村等
完了 利府町、松島町、亘理名取ブロック(名取市、岩沼市、亘理町)
9割以上 洋野町、野田村、普代村、田野畑村、岩泉町、宮古市、大槌町、釜石市、大船渡市、気仙沼ブロック(気仙沼市、南三陸町)、石巻ブロック(女川町、石巻市、東松島市)、宮城東部ブロック(塩竈市、多賀城市、七ヶ浜町)、仙台市、亘理名取ブロック(山元町)、いわき市
8割以上 陸前高田市、山田町
8割未満 久慈市、新地町、相馬市、南相馬市、広野町

*沿岸市町村の処理割合の実績

市町村の除染の進捗状況

福島県外(2013年12月末時点)

 除染進捗状況
学校・保育園等 98%
公園・スポーツ施設 95%
住宅 59%
道路 90%
農地・牧草地 73%
森林(生活圏近隣) 8%

*環境省まとめ

福島県内(2013年11月末時点)

 除染進捗状況
公共施設等 72.6%
住宅 35.4%
道路 26.7%
農地 81.0%
森林(生活圏) 12.7%

*福島県まとめ

産業の復旧・復興の状況

農業(被災3件の水稲作付面積)

岩手県 震災前の101%まで回復
宮城県 震災前の99%まで回復
福島県 震災前の85%まで回復
被災3県の合計 震災前の94%まで回復

*2013年産水稲の収穫量(東北)を基に作成

水産業

被災3県の主要な魚市場の水揚げ(数量) 震災前に比べ約69%まで回復
(金額ベースでは約75%)
*2012年11月~13年10月実績
水産加工施設(被災3県で被害を受けた821の水産加工施設) 78%(638施設)が業務再開
*2013年9月末時点

 

公共インフラの復旧・復興の進捗状況

復興住宅(災害公営住宅の整備に着手した割合)

着工  61% 完了 2%

*2013年11月末時点

復興まちづくり(防災集団移転)

事業計画の同意地区割合
100%
造成工事の着工地区数割合
64%
造成工事の完了地区数割合
5%

*水道施設、下水道などの生活関連公共インフラや医療施設、学校施設など復興まちづくりの進捗状況は9割以上になっている。しかし、復興住宅は着工61%で、完了は2%。防災集団移転も「着工」は64%だが、「完了」はまだ5%にすぎない。

バナー写真=久山 城正

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