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油断できない日本の台風被害:年平均3個が上陸

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日本は毎年のように台風に襲われる。2014年の台風8号では沖縄本島地方と宮古島地方に、台風(暴風・波浪・高潮)としては初めての「特別警報」が出された。重大な災害を引き起こす、日本における台風のデータをまとめた。

7月から10月に日本に接近・上陸

台風とは北西太平洋で発生する熱帯低気圧のうち、最大風速が17.2メートル/秒のもの。気象庁によると、1981-2010年の30年に平均年26個の台風が発生し、約3個が日本列島に上陸している。低緯度で発生する台風は春先には西に進んでフィリピン方面に向かうが、夏になると太平洋高気圧の周りに沿って北上するものが多くなる。日本へは7-10月に接近し、上陸は8月から9月が最多。特に9月に上陸する台風は秋雨前線の活動を活発にし、大雨が災害発生につながる。

過去10年、大きな災害が平均年2回弱発生

下の表は、過去10年間に起きた日本での主な台風被害。平均すると年2回弱のペースで大きな災害が発生し、100人近くの死者・行方不明者を出した台風も2回あった。引き起こされる災害は風害・水害・高潮害・波浪害などがあるが、多くの場合はこれらが複合して発生し、大きな被害をもたらす。

2004年以降の主な台風被害

  被害地域主な被害
2013年10月 26号 中部~北海道 死・不43、負傷130、住家1,094、浸水6,142
2013年9月 18号 近畿~東北 死・不7、負傷143、住家1,650、浸水10,089
2011年9月 15号 全国 死・不19、負傷337、住家3,739、浸水7,840
2011年8月 12号 四国~北海道 死・不98、負傷113、住家4,008、浸水22,094
2009年10月 18号 全国 死・不6、負傷133、住家2,387、浸水3,310
2009年8月 9号 九州~東北 死・不28、負傷29、住家1,173、浸水5,217
2007年9月 9号など 近畿~北海道 死・不3、負傷87、住家672、浸水1,345
2007年7月 4号など 沖縄~東北 死・不7、負傷83、住家295、浸水3,993
2006年9月 13号 沖縄、九州など 死・不11、負傷556、住家9,251、浸水934
2005年9月 14号など 全国 死・不29、負傷179、住家7,452、浸水21160
2004年10月 23号 沖縄~東北 死・不99、負傷704、住家19,235、浸水54,850
2004年10月 22号 近畿、東北など 死・不8、負傷169、住家5,553、浸水7,843
2004年9月 21号 沖縄~東北 死・不27、負傷95、住家3,068、浸水19,153
2004年9月 18号 全国 死・不47、負傷1364、住家57,466、浸水10,026
2004年8月 16号 全国 死・不18、負傷285、住家8,627、浸水46,581
2004年8月 17号 沖縄、西日本 死者4、負傷28、住家3,719、浸水1,256
2004年8月 15号 全国 死・不12、負傷24、住家513、浸水2,724
2004年7月 10号など 九州、近畿など 死・不3、負傷17、住家113、浸水2,215
2004年6月 6号など 全国 死・不7、負傷116、住家180、浸水202

注)死・不:死者・行方不明、住家:住宅家屋の全・半壊と一部破損、浸水:住宅家屋の床上・床下浸水
(理科年表などを基にニッポンドットコム編集部が作成)

2004年には6月から11月まで、過去最多の10個の台風が日本に上陸。人や建物などの被害に加え、農・林・水産業の被害も甚大(16号が1,054億円、18号が1,262億円、23号が934億円など)で、経済への打撃も深刻だった。この年は平年より太平洋高気圧が北側に位置し、台風が日本付近を経路としやすい気圧配置が続いた。

「昭和3大台風」では数千人の犠牲も

日本では1930-50年代、数千人が台風の犠牲となる大災害を経験している。特に「室戸台風」、「枕崎台風」、「伊勢湾台風」(発生・上陸順)は昭和の3大台風とも呼ばれている。

大災害を引き起こした過去の主な台風

1959年9月26-27日 伊勢湾台風 九州を除く全国 死者4,697、行方不明401、負傷38,921、住家833,965、浸水363,611
上陸時の中心気圧929ヘクトパスカル。伊勢湾などで記録的な高潮が発生し、大惨事に。全国の被災者数は150万人以上に及んだ。
1934年9月20-21日 室戸台風 九州~東北 死者2,702、行方不明334、負傷14,994、住家92,740、浸水401,157
上陸時の中心気圧911.6ヘクトパスカル。大阪では4メートルを超える高潮で多くの溺死者が出たほか、多くの学校の木造校舎が全半壊した。
1945年9月17-18日 枕崎台風 西日本 死者2,473、行方不明1,283、負傷2,452、住家89,839、浸水273,888
上陸時の中心気圧916.3ヘクトパスカル。終戦直後で気象情報が少なく、防災体制も不十分だったため、各地で大きな被害に。特に広島県で多数の死者。
1954年9月25-27日 洞爺丸台風 全国 死者1,361、行方不明400、負傷1,601、住家207,542、浸水103,533
北上して北海道に達したころ勢力が最大に。青函連絡船「洞爺丸」の遭難で1,139人もの犠牲者が出た。
1958年9月26-28日 狩野川台風 近畿以北 死者888、行方不明381、負傷1,138、住家16,743、浸水521,715
最低気圧が一時877ヘクトパスカルにも達した巨大台風。衰えながら神奈川県に上陸したが、大雨により関東と伊豆半島に大水害を引き起こした。

日本政府はその後、高潮対策や河川の洪水対策など防災に力を入れ、以前のような規模の台風被害はなくなった。1970年代の台風による死者の最大は76年17号の169人、80年代は82年10号の95人、90年代は91年19号の62人だった。2000年代、2010年代にも死者・行方不明者が100人を超す台風被害は起きていない。

一方で、この40年以上にわたり「3大台風」に匹敵するほどの巨大台風が、九州から北海道にかけては接近していないことも確かだ。

2005年に米南東部を襲ったハリケーン・カトリーナ、2013年の台風30号のフィリピンでの大惨事を契機に、「地球温暖化がスーパー台風を生んでいる」と主張する議論がある。しかし、気象庁は「これまでの発生数や強い台風の発生割合などに明瞭な増減傾向はない」と説明。同庁気象研究所が参加した研究グループによる今世紀末ごろを想定した温暖化シミュレーション実験では、熱帯低気圧の数は減少する一方、非常に強い熱帯低気圧の出現数は増加する傾向があるとの結果が出たという。

タイトル写真:米航空宇宙局(NASA)の衛星が撮影した台風8号=2014年7月6日(提供:NASA/ロイター/アフロ)

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