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世界一の高齢社会・ニッポン

社会

日本は世界トップクラスの長寿国である。人々が長生きを享受できる社会は望ましいことだが、それは世界で例を見ない「高齢社会」を意味する。今や日本人の4人に1人が「65歳以上」の高齢者だ。人口減少と高齢化が同時進行する中で、日本が取り組むべき課題は多い。

最高齢男性は「ギネス世界記録」に認定

2014年8月、英国のギネスブックがさいたま市在住の百井盛さんを111歳196日で「存命中の世界最高長寿の男性」に認定した。前記録保持者の米国人が今年6月に111歳124日で亡くなったのを受けて調査が始まり、百井さんが新たに認定されたものだ。

厚生労働省が9月15日(敬老の日)の時点でまとめた調査によると、国内で100歳以上の高齢者は5万8820人で過去最多を更新した。前年より4423人増え、44年連続の増加となった。国内最高齢の女性は、大川ミサヲさん=大阪市在住=で116歳。男性はギネスに登録された百井盛さん。厚労省は「医療や介護の分野が進歩し、高齢になっても健康に暮らせる環境づくりが進んでいる」と分析。急速な高齢化の実態が改めて裏付けられた。

日本人男性の平均寿命、初めて80歳超える

厚労省作成の「簡易生命表」によれば、日本人男性の平均寿命(※1)は2013年で80・21歳と前年を0・27歳上回り、初めて80歳を超えた。これは香港(80・87歳)、アイスランド(80・5歳)、スイス(80・5歳)に次ぐ世界4位で、前年より順位を一つ上げた。

女性の平均寿命も前年より0・2歳伸びて86・61歳となり過去最高を更新。2年連続の「世界一」となった。日本に続くのは、香港(86・57歳)、スペイン(85・13歳)、フランス(85・0歳)、スイス(84・7歳)などだ。平均寿命がさらに延びた背景には、各年齢でがんや心疾患、脳血管疾患、肺炎などの死亡状況が改善したことが挙げられる。

人口高齢化は世界的潮流だが…

世界保健機関(WHO)によると、人口の高齢化は世界的潮流で、2012年の世界平均寿命は、女性72・7歳、男性68・1歳で、1990年時点より6歳も長くなっている。しかし、長寿を享受できるかどうかは生まれた場所に左右されるのも事実。経済的に豊かで生活環境に恵まれていることが条件の一つといえる。その中で、日本はWHO加盟国の中で「世界一の長寿国」とされる。

高齢化の現状

※2013年10月1日のデータ

人口
(万人)
 総数
総人口 12,730 6,191 6,539
高齢者人口(65歳以上) 3,190 1,370 1,820
 65〜74歳人口 1,630 772 858
 75歳以上人口 1,560 598 962
生産年齢人口(15〜64歳) 7,901 3,981 3,920
年少人口(0〜14歳) 1,639 840 800
構成比
(%)
総人口 100.0 100.0 100.0
高齢者人口(高齢化率) 25.1 22.1 27.8
 65〜74歳人口 12.8 12.5 13.1
 75歳以上人口 12.3 9.7 14.7
生産年齢人口 62.1 64.3 59.9
年少人口 12.9 13.6 12.2

出所:総務省「人口推計」を基に編集部作成

平均寿命が伸びれば、人口の高齢化も進む。内閣府がまとめた2014年版「高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者人口は2013年に3296万人となり、前年より111万人増えた。日本の総人口(1億2707万人)に占める65歳以上の高齢者割合(高齢化率)も25・9%と前年より0・9ポイント上昇し、過去最高を更新した。「団塊の世代」(※2)が2014年中には全員65歳を超えるため、高齢化率が急上昇している。

男女別では、65歳以上の男性が1421万人、女性が1875万人。また75歳以上の人口は1590万人で、総人口に占める割合は12・5%、85歳以上は478万人で3・8%を占める。つまり、8人に1人が75歳以上の後期高齢者という状況である。

高齢化のスピードが最速の日本

日本の高齢化率は既に、他の国々が到達していない水準にあるが、これまでの高齢化のスピードが速いのが特徴だ。一般に、65歳以上の人口が7%になると「高齢化社会」(※3)と位置付けられ、14%に達すると「高齢社会」と呼ばれる。日本はこの高齢化社会から高齢社会に至る期間を1970年から1994年までの24年間で達成した。欧州で最も高齢化が速いドイツでも、1930年から1972年まで42年間かかっている。フランスでは1865年に7%に達した後、14%になったのは114年後の1979年といわれる。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2012年1月推計)」によると、高齢者人口は今後も増え、2042年に3878万人でピークを迎える。その後は減少に転じるが、高齢化率は上昇する。その結果、2060年には高齢化率が39・9%に達し、2・5人に1人が65歳以上となる。75歳以上も総人口の26・9%となり、4人に1人が75歳以上となる。2060年時点での平均寿命は、男性84・19歳、女性90・93歳になる―との予測だ。

生産年齢人口の減少で活力低下も

日本の人口が少子化を背景に減り続ける中で懸念されるのは、「生産年齢人口」(15歳~64歳)の減少である。総務省の「人口推計」では、2013年の生産年齢人口は7901万人と、32年ぶりに8000万人を割り込んだ。高齢化が進む中での生産年齢人口の減少は、国際競争力の観点から見ても日本の活力低下や衰退につながりかねない。

また2015年には、高齢者1人に対して現役世代(15~64歳)2・3人が支える状態から、2060年には高齢者1人に対し現役世代1・3人が支える社会が到来する。世代間の不公平感が一層強まり、高齢社会ゆえの社会問題として深刻化する恐れがある。

他方、国の社会保障給付費は、2011年度で総額107兆4950億円となり過去最高の水準に達している。国民所得に占めるこの割合は1970年度の5・8%から2011年度は31・0%に上昇。社会保障給付費のうち、高齢者関係給付費は2011年度で72兆1940億円となり、社会保障給付費に占める割合は67・2%に達する。国の財政赤字削減が急務な中で、社会保障関連費が膨らむ状況が続いている。

先行事例のない高齢社会への取り組み

日本は平均寿命、高齢者数、高齢化のスピードという3点で、世界各国がまだ経験したことのない高齢社会を歩んでいる。高齢化に伴い認知症を患う高齢者が増え、高齢者向けの医療・介護サービスなどシルバー産業も広がっている。国や地方自治体でも高齢者の健康寿命(※4)を伸ばす「健康長寿」を目標に掲げ、さまざまな取り組みが展開されている。日本は人口減少が進む中で、先行モデルのない“超高齢社会”に向け突き進んでいる。人口減少と高齢化への同時対応が待ったなしで求められる。

(※1) ^ 平均寿命:0歳児が平均あと何年生きられるかという指標。1935年には日本人男は46.92歳、女性は49.63歳だった。戦後は乳幼児、青年期、壮年期の死亡率が著しく改善し、平均寿命は大幅に延びた。

(※2) ^ 団塊の世代:戦後間もない1947~1949年に生まれたベビーブーム世代。日本の人口構成上、常にコブのような塊を形成して推移し、社会に影響を与えてきた。

(※3) ^ 高齢化社会:総人口に占める65歳以上の人口割合が「7%以上」に達し、高齢化がさらに進んでいる社会のこと。1956年に国際連合が作成した報告書の中で使われた表現を基に作られた言葉。これに対し、「高齢社会」は高齢者人口が14%以上となり定着した社会をいう。最近は高齢者の割合がさらに20%を超える社会を「超高齢社会」と表現する例もある。

(※4) ^ 健康寿命:生涯のうちで病気や障害がなく過ごせる期間をいう。平均寿命も重要な数値だが、高齢者が自立して生活できる「健康寿命」の延長はより重要で、国もその延長を目標に掲げている。

高齢化 団塊の世代