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非正規雇用、ついに4割に

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パートや派遣などで働く非正規雇用者の割合が年々増え、ついに4割を超えたとする調査結果が出た。正社員として就労を望みながらかなわないケースも多く、低賃金や不安定な雇用形態などの待遇改善が日本社会の大きな課題になっている。

4年で1.8ポイント上昇

厚生労働省が2015年12月に発表した14年の「就業形態調査」(※1)によると、民間事業者に勤める労働者のうち非正規社員の占める割合が40.5%に達し、初めて4割の大台を超えた。4年前に実施した前回調査から1.8ポイント上昇した。総務省の「労働力調査」(2014年)では、非正規の割合は役員を除く雇用者全体の37.4%だった。

高度成長が続いていた1980年代、日本における非正規雇用の割合は20%台にとどまっていたが、90年代に大きく増加した。バブル経済の崩壊がきっかけで正社員をリストラし、低賃金のパートや派遣労働に置き換える動きが強まったことが主因だ。

その後も非正規社員の割合が増え続けた理由は、諸説がある。厚生労働省は、15年1月公表の「労働市場分析リポート」で、減少した農家や個人商店などの自営業者・従業員の雇用の受け皿となったことが、非正規増加の大きな原因と分析した。

リタイア世代の割合増える

総務省調査によると、近年では非正規労働者に占める65歳以上の労働者の割合が増えている。2014年には非正規労働者1962万人のうち65歳以上は234万人に上り、2009年から70万人超増えた。これは、「団塊の世代」が65歳を超えたこととも関係がありそうだ。

正社員以外の労働者を活用する理由(複数回答)をみると、「賃金の節約のため」が38.6%と最も高く、「1日、週の中の繁閑に対応するため」が32.9%、「即戦力、能力のある人材を確保するため」が30.7%などとなっている。

「やむなく非正規」、25〜34歳で28.4%

総務省の調査(2014年)によると、正社員として働く機会が見つからず、非正規社員として働く者(不本意非正規)の割合は、非正規全体の18.1%。年齢層別では、25〜34歳グループが28.4%と最も多い。「初就職者」の4割が非正規との統計もあり、大学新卒者で就職後、数年で転職する人の割合が増えている一因ともなっている。

非正規社員から正社員への転職も容易ではない。総務省の「就業構造基本調査」(2012年)によると、過去5年間で転職した人のうち、非正規から正社員になった人は24.2%にとどまっている。

厳しい労働条件

非正規社員(フルタイム)の平均賃金は、正社員の約6割。一般的に雇用が不安定で、賃金が低い上に、能力開発機会が乏しく、健康保険や雇用保険などのセーフティーネット制度の適用が不十分だ(下表)。特に低賃金は、働いても生活保護以下の暮らししかできないワーキングプアの拡大につながる恐れがある。また、低賃金のために結婚や出産を断念するケースも多いとみられる。非正規社員として働く20代、30代の男性で、配偶者がいる割合は正社員の半分以下とされる。

健康保険制度などの適用状況

雇用保険 健康保険 厚生年金 退職金制度 賞与支給制度
正社員 92.5 99.3 99.1 80.6 86.1
正社員以外 67.7 54.7 52.0 9.6 31.0

厚生労働省の2014「就業形態調査」個人調査より(単位:%)

連合総研は2015年10月、インターネットを通じて非正規労働者の生活実態調査を実施。それによると、非正規労働者が主な稼ぎ手である世帯で、20.9%が生活苦のために「食事の回数を減らした」と回答した。連合総研は「非正規であるために収入が低く、医療費や食費を切り詰めることで『健康格差』が心配される」と指摘している。

こうした中、政府もようやく重い腰を上げようとしている。安倍晋三首相は、1月22日に衆参両院で行った施政方針演説で、「非正規雇用の均衡待遇の確保」に取り組む考えを表明。具体的には、(1)短時間労働者への被用者保険の適用拡大、(2)正社員化や処遇改善を進める事業者へのキャリアアップ助成金の拡充、(3)原則1年以上働いていれば育児休業や介護休業を取得できるようにすること、(4)同一労働同一賃金の実現などに言及した。

文:村上 直久(編集部)

(※1) ^ 5人以上の事業所(約1万7000カ所)と5万3000人の労働者を対象に、2014年10月1日現在の状況を調査。回答率は事業所が64.4%、労働者は65.2%。