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死刑の執行件数の推移

社会

2000年以降、日本では98人の死刑囚に対して刑が執行された(2022年7月26日時点)。執行の基準は明確にされていないが、法相の心情や考え方が反映されている面もあるようだ。

(2018年7月9日公開の記事を一部加筆、グラフをアップデートして再公開)

法務省は2022年7月26日、東京・秋葉原で2008年に7人を殺害、10人を負傷させ殺人などの罪で死刑が確定した加藤智大死刑囚の刑を執行した。事件発生から14年、死刑確定から7年余りでの執行となった。加藤死刑囚はJR秋葉原駅近くの歩行者天国の交差点にトラックで突入し通行人をはねた後、無差別にその場にいた人をダガーナイフで刺すなどした。

刑事訴訟法では、死刑確定後6カ月以内に執行するように定めている。しかし、実際には、確定後6カ月で執行されることはまずない。2000年以降、2022年7月26日までに98人の死刑囚に対して刑が執行された。最も短いケースで確定から1年、長いケースでは19年5カ月だった。法務省は執行対象者を決定する基準などは一切、明らかにしていない。それどころか、かつては死刑執行の事実も公表していなかった。1998年10月、当時の中村正三郎法相の指示で執行の事実と人数の公表が始まり、2007年9月から当時の鳩山邦夫法相の指示で、氏名と執行場所も公表するようになった。

死刑執行には、その時々の法相の考え方、心情も反映されていると考えられる。2005年10月に法相に就任した杉浦正健氏は、就任会見で「心の問題、宗教観、哲学の問題だ」として死刑執行の拒否を明言した。その後、法律で定められた職務を法相が拒否するのは問題があるとの指摘が相次ぎ、すぐに発言を撤回。しかし、約11カ月の在任期間中に死刑の執行は行われなかった。その一方で、特定の法相の在任期間中に数カ月に1回のハイペースで執行が続いたこともあった。

2009年9月に発足した民主党政権の法務相は死刑執行に慎重な考えを持つ人が多く、政権が続いた2012年12月までの3年強での執行は9人だった。民主党政権最初の法相だった千葉景子氏は、もともと死刑廃止論者であり、「死刑廃止を推進する議員連盟」に名を連ねていたが、10年7月に2人の死刑囚に対する執行命令書にサインした。その際、千葉氏は、歴代の法相として初めて死刑執行に立ち会い、「死刑について広く国民的な議論が行われる契機としたい」として、存廃も含めた死刑制度を考える勉強会を省内でスタートさせた。また、同年8月には、東京拘置所で絞首刑が実施される「執行室」と、宗教者の教戒を受ける「教戒室」を初めて公開した。

2011年1月に就任した江田五月氏も、就任会見で「死刑というのはいろんな欠陥を抱えた刑罰だ」と指摘(その後、発言を撤回)。同年7月には千葉氏から続く勉強会が継続中であることを理由に、「当面、執行しない」意向を示した。2011年には1人の執行もなかった。勉強会は、その後の法相に引き継がれたが、12年3月に存廃の結論を示すことなく両論併記形式で終了した。

2009年に始まった裁判員裁判では、一般の人が死刑の判決に関わる例も出ている。その一方で、2017年には再審請求中の死刑囚に対する執行が相次いだ。また、2018年1月にオウム真理教関連の裁判が終結し、同年7月に元幹部13人に対して相次いで執行したことについて国内外から批判や疑問の声も上がった。

(2018年7月9日公開、同月27日、19年11月22日、19年12月26日、22年7月26日更新)

バナー写真 : PIXTA (死刑の刑場がある東京拘置所)

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