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コメ輸出が伸びない理由:10年で10倍でも輸出額はイニエスタ1人分
[2018.08.10]

ヘルシーな食事として、日本食への注目が高まっている。しかし、日本産のコメの輸出量は2017年実績でわずか32億円。「おいしいけれど高すぎる」日本産のコメは需要が飛躍的に伸びづらく、また、日本のコメ農家にも、輸出用米を生産するインセンティブが働きづらい事情がある。

コメ(精米)の輸出量は、2007年の940トンから、2017年には1万1841トンと12.5倍にまで拡大した。「10年で10倍以上」の数字には勢いを感じるが、17年の輸出金額はわずか31億9800万円。サッカーのスペイン1部リーグのバルセロナからJ1ヴィッセル神戸に移籍したイニエスタ選手の推定年俸32.5億円にもわずかに及ばない程度の額だ。2013年には「日本食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、海外では健康的な食事として日本食への注目が高まっている。すしや牛丼が好きだという外国人も多い。しかし、日本で育てたコメは思うように世界に広まってはいない。

日本産米の輸出先は数量、金額ともにトップは香港で、4128トン、10億1600万円に上る。10年前と比べ数量は12倍、金額では6倍に増えた。2番手はシンガポールで数量が17倍、金額で8倍と同じく急増している。米国、英国、オーストラリアへの輸出もじわじわと拡大している。これらの国と地域は高価格のブランド米を購入できる所得水準が高いマーケットであるのが特徴だ。「日本産のおいしいおコメを食べたい」という一定のニーズは存在している。

では、今後もどんどん輸出量が増え続けるかというと、それはどうも難しそうだ。

米国や中国でも日本産品種の栽培が広がっており、価格は日本産米の半分程度。大需要地である中国では現地産のコシヒカリ、あきたこまちが日本産米の5分の1から10分の1程度の価格で流通している。日本産は品質の高さが売りではあるが、いくらおいしくても、それだけの価格差を受け入れられるのは、一部の高所得者に限定されてしまうのが現実だ。海外の日本食レストランでも、高級店を除けば米国産や中国産を購入しているところが多いという。

高齢化と人口減で日本国内の需要が先細る中で、コメ農家にとっては海外市場の開拓は中長期的には重要な課題と言える。しかし、コメ農家が輸出用のコメの作付けに積極的になれない事情がある。減反政策の一環で、食用米から家畜の餌となる「飼料用米」に転作すると、多額の補助金が付き、コシヒカリなどのブランド米を育てるのと変わらない収入になるのだ。飼料用米は、見た目の美しさにこだわる必要がないため生産にあまり手間がかからないこともメリットとなる。新しい市場で価格競争にさらされるよりも、補助金で安定収入を確保する方にインセンティブが働くのは当然のことだ。

政府は、「農林水産物・食品の輸出額を2019年までに1兆円に拡大」する目標を掲げている(17年実績は8071億円)が、コメ・コメ加工品はそのうち600億円に過ぎない。さらにその内訳はコメ加工品(米菓、日本酒)が570億円で、いわゆるコメとしての輸出は30億円と控えめな目標値だ。

コメは日本を代表する農産品ではあるが、生産量は世界第10位に過ぎない。コメ輸出大国のインドやタイは年間約1000万トンを輸出しており、「おいしいけれど、高すぎる」日本のコメが飛躍的に需要を伸ばす余地は限られている。

世界のコメ生産量(数値は精米ベース)

生産量(万トン)
1 中国 14450
2 インド 10480
3 インドネシア 3576
4 バングラデシュ 3450
5 ベトナム 2807
6 タイ 1876
7 ミャンマー 1260
8 フィリピン 1192
9 ブラジル 847
10 日本 782
11 米国 707
12 パキスタン 690

農林水産省のサイトを参考に編集部作成

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