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プルトニウム保有量の削減へ方針転換:現在47トン、国際社会の懸念受け

科学 技術

日本政府は国際社会からの懸念を受け、現在47トンまで積み上がっているプルトニウムの保有量を今後削減する新たな方針を決定した。内閣府の原子力委員会が7月31日に発表した。

日本が保有するプルトニウムは2016年末の時点で、国内に9.9トン、英国、フランスに再処理を委託し両国が保管している37.1トンの計47トン。1993年には10トン程度だったが、原子力発電の使用済み核燃料を再処理することで次第に増え、2003年、04年ごろから40トン台で高止まりしている。

このプルトニウムは核兵器にも転用できるため、核拡散リスクの上からも厳重な管理が必要。日本が保有する量は核保有国を除くと突出しており、米国や近隣諸国から懸念が挙がっていた。

世界各国の民生用プルトニウム保有量

国内 国外
英国 133.5(23.2) 0
フランス 81.7(16.3) 0.05未満
ロシア 57.2(0.0003) 0.0006
米国 49.4 0
日本 9.9 37.1
ドイツ 0.5 非公表
ベルギー 0.05未満 0
中国 0.04 0
スイス 0.002未満 0

単位・トン2016年末。IAEAに提出された各国の資料による。
カッコ内は他国の保有するプルトニウムの保管分

日本は原発の使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクル政策を掲げている。原子力委員会によると、今後は(1)ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を軽水炉で使うプルサーマル発電に必要な量だけ、再処理を認可する(2)プルトニウムの需給バランスを確保し、再処理から利用までの時間をできるだけ短くする――ことなどで、保有量を減少させるとしている。しかし、削減の時期や目標数値を打ち出すことはできなかった。

プルトニウムを廃棄しないで削減するにはプルサーマル発電を増やすしかないが、東京電力福島第1原発事故後に再稼働した原発は5つの原発の9基で、プルサーマル発電は4基のみ(2018年8月時点)。電気事業連合会は「16~18基」での導入を目指しているが、実施に向けたハードルは高く、今後大きく増える見通しはない。一方、日本原燃の六ヶ所再処理工場(青森県)が2021年上期、MOX燃料加工工場が22年上期に竣工予定で、フル稼働すると年7トンのプルトニウムが新たに生産される。

新方針のもとでは再処理工場の稼働が大幅に制限される可能性が高い。この場合、再処理事業の収支悪化、放射性廃棄物の処分負担増という新たな問題が発生し、将来的な発電コストへの上乗せが懸念される。

バナー写真:関西電力高浜原子力発電所に陸揚げされたウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の入った金属製容器の放射線量を測定する関電社員ら=2017年9月21日、福井県高浜町(時事)

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