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待機児童10年ぶりに2万人下回る:都市部での保育園不足、保育士不足は続く

社会

保育所に入れない「待機児童」の数は、2018年4月時点で10年ぶりに2万人を割り込んだ。しかし、政府が掲げる「待機児童ゼロ」の目標達成は遠い道のりだ。

厚生労働省のまとめによると、2018年4月1日時点で認可保育所などに入所できない「待機児童」の数は、前年同期比6186人減の1万9895人となり4年ぶりに減少した。2万人を下回るのは2008年以来、10年ぶり。国の助成によって事業所内に従業員向けの保育施設を設置する企業が増えたことや、幼稚園と保育所が一体運営する「幼保連携型」施設の定員増など、受け皿の拡大が一定の効果を発揮した。

政府は、「女性の活躍が経済再生のカギを握る」として、13年に「待機児童解消加速化プラン」を策定。自治体の保育所設置や、企業型保育所制度の活用などで受け皿を拡大し、17年度末までに「待機児童ゼロ」達成を目指していた。

ところが、「女性が活躍する社会」では新たな保育需要が生まれ、入所希望者は増加。その一方で、都市部は土地価格が高く、新たな保育所用地を確保するのが難しい。待機児童の解消は思うように進まず、政府は17年夏になって、目標達成時期を20年度末まで3年間先送りした経緯がある。

さて、18年春に4年ぶりに減少に転じ、このまま順調に待機児童ゼロの目標を達成できるのだろうか?

安倍晋三首相が2017年10月の衆院選で公約として掲げた19年10月からの保育無償化が、潜在需要を掘り起こす可能性は大きい。

待機児童の7割が首都圏や近畿圏などの都市部に集中している。大規模なマンション開発などに伴い、特定の地域で突発的に新規需要が高まり、柔軟に対応きないケースも少なくない。さらに、保育士不足も課題だ。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2016年)によれば、保育士の平均月収は全職種平均より10万円以上も少ない22万3300円だった。政府は処遇改善を掲げているが、十分に追いついていないのが現状だ。

近づいたと思えば、遠のく。待機児童ゼロの達成は容易ではない。

バナー写真 : PIXTA

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