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内部留保は右肩上がり、労働分配率は右肩下がり:アベノミクス効果、個人には届かず?

経済・ビジネス

企業の内部留保が年々、積みあがっている。急速に進む少子高齢化、米国の保護主義的な貿易政策など、先行き不透明感から慎重姿勢を取らざるをえない面は確かにあるだろう。しかし、お金を貯め込んだままでは経済は活性化しない。

財務省が公表した2017年度法人企業統計(金融業・保険業を除く)によると、好調な業績を背景に、企業が蓄えた内部留保(=利益剰余金)は前年度比9.9%増の446兆4884億円となり、6年連続で過去最高額を更新した。内部留保は、安倍政権発足前の11年度末と比べると160兆円以上積み上がったことになる。

12年12月に発足した安倍政権が打ち出した「アベノミクス」は、大規模な金融緩和や法人税減税を通じて企業業績の回復を後押し。17年度の経常利益は前年度比11.4%増の83兆5543億円となり、過去最高を更新した。設備投資も前年度比5.8%増の45兆4475億円と高水準だった。

一方で、企業が生み出した付加価値のうち、従業員の人件費(給与、賞与、福利厚生)に充てた割合を示す「労働分配率」は、2012年度以降、右肩下がりに落ちている。17年度は前年度比1.3ポイント減の66.2%となり、1970年代と並ぶ歴史的な低水準を記録した。アベノミクスによる企業業績の回復は、個人に十分に還元されているとは言えない。

これまで、政府は再三、企業に対して賃上げを求めており、2017年10月の経済財政諮問会議では、安倍首相が「3%の賃上げが実現するよう期待する」と具体的な水準を示して異例の要請を行った。しかし、連合のまとめでは、18年春闘の平均賃上げ率は定期昇給とベースアップを合わせて2.07%にとどまった。

少子高齢化が進み、国内では需要の拡大が見込めない上に、大国間で保護主義的な貿易政策が展開されるなど、先行きの不透明感が強まる中で、企業は固定費の増加につながる人件費アップには慎重になっている。かたや、個人は賃上げに期待できず、「長い老後に備えなければ」との意識が強く、消費マインドは盛り上がっていない。

経済社会の血液であるお金が回っていない。過去最高の経常利益、過去最高の内部留保でも、健康体とは言い難い状況だ。

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