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「近所の酒屋さん」「町の洋品店」が消えてゆく:老舗企業の倒産・休廃業調査-帝国データ

経済・ビジネス

帝国データバンクの調査で、業歴100年以上の老舗企業の市場からの撤退が2017年度は過去最多になった。倒産よりも、休廃業・解散数が多く、経営は黒字でも後継者がいない、産業構造の変化に対応しきれないなど苦しい現状が読み取れる。

帝国データバンクがまとめた創業100年以上の企業を対象にした「老舗企業倒産・休廃業・解散の動向調査」によると、2017年度は倒産、休廃業、解散合わせて461件(前年度比2.2%増)を記録し、3年連続増となった。リーマン・ショックが発生した08年度の430件、東日本大震災発生後の2012年度の451件を上回り、データのある2000年度以降で過去最多となった。

17年度の461件のうち、倒産した企業は79件(同18.6%減)、休廃業・解散は2000年度以降で最多の382件(7.9%増)となった。休廃業・解散は4年連続の増加。法的整理(倒産)に追い込まれる前に、休廃業や解散を選択する背景には、経営者の高齢化や後継者難があるとみられる。2000~17年度の18年間の老舗企業の倒産・休廃業・解散の合計は6432件となり、全企業の倒産・休廃業・解散件数の1%を老舗が占めた。

業種別にみると、17年度で最も多かったのは「小売業」の191件で、全体の41.4%を占めた。古くから地域に根付いて商売をしてきた「近所の酒屋さん」「町の洋品店」などの小売業者が、次世代に引き継ぐことを諦め、黒字経営のまま店を閉じるケースも少なくない。以下、「製造業」が97件で21.0%、「卸売業」が80件で17.4%となり、これらの3業種で全体の約80%を占めた。

業種の細分類別では、2017年度で最多だったのは「ホテル・旅館」の18件。2000年度以降の18年間のうち7回、最多件数となっており、1980年代後半のバブル経済期に増築した設備投資など過去の借入金負担が重荷となり、事業継続や自主再建を断念する企業が多かったとみられる。

帝国データバンクは、「後継者難に加えて、消費者の好みや流行のサイクルが短期化、規制の改正・緩和、産業構造の変化などへの対応が困難となり、事業継続を断念するケースが多い」としている。特に小売業では、台頭する量販店やチェーン店、ショッピングモールといった大型商業施設の進出が、旧来型のB to C(企業対消費者取引)の事業を展開してきた地場の店舗などの経営に影響を及ぼしているようだ。

バナー写真 : PIXTA

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