「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録

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ユネスコ(国連教育科学文化機関)は2013年12月4日、アゼルバイジャンのバクーで開いた第8回政府間委員会で、「和食」の食文化が自然を尊重する日本人の心を表現したものであり、伝統的な社会慣習として世代を越えて受け継がれていると評価し、無形文化遺産に登録することを決めた。

自然を尊重する心に基づいた食慣習

日本政府は12年3月、「和食:日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録申請した際、和食の特徴として以下の4点を挙げている。

1. 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられている。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達している。

2. 栄養バランスに優れた健康的な食生活

一汁三菜(1種類の汁物と3種類の菜からなる日本料理の基本的な膳立て)を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われている。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿、肥満防止に役立っている。

3. 自然の美しさや季節の移ろいの表現

食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴の一つ。季節の花や葉などで料理を飾り付けたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しんでいる。

4. 年中行事との密接な関わり

日本の食文化は、正月などの年中行事と密接に関わって育まれてきた。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間をともにすることで、家族や地域の絆を深めてきた。

「食」分野では仏・地中海・メキシコ・トルコに次いで5件目

無形文化遺産の登録は、芸能や祭り、伝統工芸技術など形はないものの、土地の歴史や生活風習などと密接に関わっている文化を保護しようというものだ。ユネスコの「無形文化遺産保護条約」(2006年4月発効)により登録制度を実施している。

無形文化遺産は遺跡や自然、建造物などを対象とした「世界遺産」、文書や絵画などを対象とした「世界記憶遺産」とともに、ユネスコの「3大遺産事業」と言われる。今回の政府間委員会では日本の「和食」や韓国の「キムジャン文化」(キムチ漬けの風習)など30件を登録、この結果、登録件数は合計328件となった。日本からは能楽、歌舞伎、アイヌの古式舞踏などに続き、「和食」で22件目となる。

食に関する無形文化遺産では「フランスの美食術」、「スペイン・イタリア・ギリシャ・モロッコ4カ国の地中海料理」、「メキシコの伝統料理」、「トルコのケシケキ(麦がゆ)料理」といった4件の食文化が社会的慣習として登録されており、「和食」で5件目。

登録を機に保護・継承を期待

「和食」はかつて、調理技術や素材にこだわり、「旬」を大切にしてきた。しかし、調理技術の簡便化が加速度的に進み、素材そのものに対する配慮も昔ほどではなくなってきている。

また、外国の食文化も取り入れて変化してきている。生活の洋風化につれ、若者の和食離れも進行し、日本国内で和食が危機的状況にあることも指摘されている。

無形文化遺産は登録されると、それを保護するための継続的な措置が求められる。日本政府は今回、「和食」が無形文化遺産に認定されたことを契機に、諸外国で日本の食文化への理解が広まることや文化の多様性につながることを願う一方、日本人自身が日本食文化を次世代に向けて守り伝えていく動きにつなげたいと期待している。

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