「負担増」に日本経済、政治は耐えられるか

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「負担増」への道筋をどう具体化できるかが、今年上半期の日本経済や政治に課せられた難題である。ユーロ危機に端を発した主要国の財政危機は日本にも忍び寄る。野田政権は消費税の増税法案を国会に提出し、成立のメドをつけなければならない。増税の他にも東京電力の原発事故による電力コストのアップが春には具体化する。国民や企業、そして野田政権は「負担増」に耐えうるのか。日本経済には際どいナローパスが待ち受けている。

野田佳彦首相は16日の民主党大会で、消費税率の引き上げを盛り込んだ「社会保障と税の一体改革」について「やり切ることなくして日本の将来はない」と決意を漲らせたものの、その行方は難問が多い。消費税率を現在の5%から2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げることを野田政権は決めたが、まず第1の関門は3月末までに増税法案を国会にどのような形で提出できるかという点だ。

法案提出前に自民党、公明党と事前協議をし、合意ができれば、衆院、参院を通過させることは可能だが、対立姿勢を強めている自民党はやすやすと民主党にすり寄らない。野田政権が単独で増税法案を提出しても、野党優勢の参院は通過しない。通常国会末の6月ごろには国会は立ち往生し、解散、総選挙へと向かう可能性はある。

政治の混乱が経済の混乱へ波及

政治と経済は車の両輪である。国債の国内消化がほとんどだが、主要先進国の中で最悪レベルの財政赤字を抱える日本がなんら財政再建に向けて歩み出せないと市場がみれば、ユーロ危機は対岸の火事ではなくなる。政治の混乱が経済の混乱へと波及してゆく。

たとえ消費税の増税法案が政治的な妥協で成立したとしても、日本経済にとってプラスかどうかはすぐには判断できない。税率引き上げは約2年後。その時に日本経済がデフレから抜け出していればいいが、デフレが続き、不況下での増税となれば、日本経済の致命傷になりかねない。

財政論議だけではない。3月末までに東京電力の経営の抜本的な見直し案を含めた「総合特別事業計画」がつくられる。東電の一時国有化など経営形態がどうなるかも焦点だが、原発比率がゼロとなった東電の発電コストアップを電力料金に転嫁するとなると、たちまち国民生活も企業活動も「負担増」となる。電力コストのアップは原発の再稼働が困難な情勢となっている他の電力会社も同様で、日本全体に及ぶ。

主要国のなかでは唯一、デフレが長期にわたり続き、確かな景気回復の糸口が見つけられない日本にとって、今後、避けて通れない数々の「負担増」は、背負わなくても良いものであれば、背負いたくはない重荷である。日本経済は辰年の2012年も竜が登ってゆくようには上向かないだろう。

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