お茶をにごした、玉虫色の「福祉的給付金」

政治・外交

民主党からも修正内容に戸惑いの声

民主、自民、公明の3党は、修正合意した社会保障・税一体改革関連法案に、低所得の高齢者に基準額5000円(月額)の「福祉的な給付金」を配る方針を盛り込んだ。政府原案の年金加算案を大幅に手直ししたものだ。しかし、三者の歩み寄りを最重視して政策目的をあいまいにしたため、民主党内からも「有権者にどう説明すればいいか分からない」と戸惑う声が漏れる。

新たな給付金は、消費税率が10%となる15年10月以降、年間所得約77万円以下の人に税財源で支給する。77万円とは15年度の満額の基礎年金(年額)で、収入がそれしかない人を想定した設定額だ。現役時の所得が低く保険料を免除されていた人は年金額も低いため、5000円の基準額とは別に、最高で約1万700円(月額)を上乗せする。ただし、免除手続きをせず保険料を払っていなかった未納者は、未納期間が長いほど基準額が減る。

政府が今国会に提出した法案はもともと、所得約77万円以下の人の基礎年金に一律6000円(月額)を加算するという内容だった。ところが、現役時代の保険料納付額にかかわらず定額を加算する点に、自公両党は「保険料を払う意欲を損ね、モラルハザードを引き起こす」と猛反発した。

公明党はこれを解消する案として、年金受給額の25%を上乗せする案を主張した。「過去に払った保険料に見合う今の受給額への定率加算なら、現役時の努力が反映される」との考えからだ。

それでも自民党は公明党案にも抵抗した。「負担なしに受給なし。それが年金の大原則だ」。社会保障分野の修正をリードしてきた鴨下一郎元環境相らはそう主張し、譲らなかった。

3党折衷案、理念や目的あいまいに

消費税率アップに執念を傾ける野田佳彦首相は、民主党の前原誠司政調会長に妥協を指示した。その結果、民主党は加算を「年金ではない給付金」とする案を受け入れ、年金関連法の改正ではなく新法で対応する方針に転じた。一方で、年金保険料の未納期間が長い人ほど減額したり、支給などの実務を担う組織を日本年金機構に委託することになった。民主党政調幹部は「年金受給者には年金の加算と思えるようにした」と説明する。

結局、民・自・公3党の主張を少しづつ採り入れて合意にこぎ着けた格好だが、その分理念や目的はうやむやにされた。名の通り「福祉的な給付」であれば、生活の苦しい人を一律対象とすべきだ。しかし、「負担に応じた給付」という年金の原則にこだわるあまり、保険料未納者にはペナルティーを課す仕組みとなった。自公を除く野党は「玉虫色の極致」と批判を強めており、審議入りした参院で徹底追及する構えだ。

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