加計学園問題「行政ゆがめられた」—前文科次官が会見

社会

野党、証人喚問要求へ

安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が国家戦略特区に大学の獣医学部を新設する計画を巡り、安倍首相周辺が内閣府を通じ、認可手続きを急ぐよう圧力をかけていたとの疑惑が浮上し、大きな注目を集めている。野党は「首相の進退に直結しかねないスキャンダル」として、国会審議などで追及を強めている。

疑惑の現在の焦点は、大学新設計画に絡み、文部科学省で共有されたとみられる記録文書の存非。朝日新聞が5月17日の朝刊で、この文書の存在をスクープした。報道によると、内閣府が「官邸の最高レベルが言っている」「総理の意向だ」と文科省に協力を求めたという内容で、事実とすれば大学新設に関して政治的圧力があったことをうかがわせる文書だ。

菅義偉官房長官は当初、「怪文書」と冷ややかにコメント。松野博一文科相は19日、省内調査の結果、「該当する文書の存在は確認できなかった」と発表した。しかし前川喜平前事務次官が25日に東京都内で記者会見し、文書は「幹部の間で共有」され、「確実に存在していた」と証言した。

前川氏はまた、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられた」と主張。自身の責任については「非常に疑問を感じていたが、まっとうな行政に戻せず、結局押し切られた責任は大きい」と陳謝し、疑惑はさらに深まっている。

野党は前川前次官の証人喚問を求める方針で、与党は防戦に追われている。

学園理事長は首相と40年来の友人

加計学園は岡山理科大、倉敷芸術科学大学など3つの大学に加え、高校や中学校、専門学校を運営。このほかグループ企業が幼稚園など数々の教育施設を持っている。現理事長の加計孝太郎(かけ・こうたろう)氏と安倍首相は学生時代、米国での語学留学時代に知り合い、40年来の親しい友人といわれている。

獣医学部新設を巡っては、政府が昨年11月に制度の見直しを表明。今年1月には公募の結果、加計学園が獣医学部を運営する事業者に選定された。学部新設にあたっては、愛媛県今治市が市の所有地を学校用地として無償譲渡し、施設整備費96億円の助成も決めている。

国内のメディア報道によると、公募から選定に至る手続きを巡っては、加計学園のほかに京都産業大学が学部新設を目指していた。しかし結果的に加計学園が有利になるよう、選定の条件が最終段階で変更されたとも指摘されている。

バナー写真: 学校法人「加計学園」問題に関する記者会見を終え、会場を後にする前川喜平・前文部科学事務次官 (2017年5月25日、時事)

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