ニュースで振り返る2017年の日本

社会

北朝鮮核・ミサイル問題の緊張激化、天皇陛下「生前退位」の正式決定、衆院選での自民党大勝、製造業大手で相次いで発覚したデータ不正――ニュースで2017年の日本を振り返る。

1月

東芝が経営危機に

東芝の米原発事業の損失が莫大な額になる可能性があることが19日、報道などで明らかになり、経営危機が表面化。同社は2月に、昨年12月末の時点でに1912億円の債務超過に陥ったと発表した。8月に3カ月遅れで発表した連結決算は、純損益が国内製造業で過去最大となる9656億円の赤字。債務超過を解消するため、半導体子会社「東芝メモリ」の売却を決めた。

2月

国有地売却めぐり紛糾

安倍首相夫人の昭恵さんが名誉校長を務めていた大阪市の学校法人「森友学園」の小学校用地として、国有地が格安で払い下げられていたことが17日明らかに。昭恵夫人は辞任し、同学園の籠池泰典理事長は3月、国会に証人喚問された。大阪地検特捜部は7月、補助金の不正受給や詐欺などの容疑で理事長を逮捕。会計検査院は11月、値引き額算定の基となった地中のごみの推計量について「十分な根拠が確認できない」との検査結果を公表した。

3月

北朝鮮の核・ミサイルで緊張

北朝鮮が6日、弾道ミサイル4発を同時に発射。うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。4月から9月まで毎月ミサイル発射は繰り返され、9月には核実験も実施し、緊張が高まった。8月29日には弾道ミサイルが日本列島上空を通過し、全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令。日本政府は米国と連携し、11月には北朝鮮の35団体・個人を新たに資産凍結の対象とする独自制裁追加措置を閣議了解するなど、圧力を強めている。

進むか「働き方改革」

政府は28日、「働き方改革実行計画」を決定した。長時間労働を是正するため、残業に罰則付きの上限(年720時間)を設定。「同一労働同一賃金」を推進し、正社員と非正社員の待遇に差をつける企業に説明義務を課す。当初は秋の国会に関連法案を提出する予定だったが、18年1月召集の通常国会に先送りした。

4月

中学生のプロ棋士が快挙

将棋の史上最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)が4日、16年12月のデビューから公式戦で11連勝し、新記録を達成した。その後も連勝は続き、6月には歴代単独1位となる29連勝を達成した。

5月

首相、改憲に前のめり発言

日本国憲法が施行70年を迎えた3日、安倍晋三首相は憲法改正推進派の会合に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せ、9条に自衛隊を明記する改正憲法の2020年施行を目指すと表明した。

眞子さま結婚へ

秋篠宮ご夫妻の長女眞子さま(25)が、大学時代の同級生で東京都内の法律事務所勤務の小室圭さん(25)と婚約されることが16日分かった。11月23日に宮内庁が正式発表した。天皇皇后両陛下の4人の孫のうち、最初の結婚となる。結婚式は18年11月4日に行われる。

獣医学部新設巡り疑惑

安倍首相の知人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛県今治市の国家戦略特区に大学の獣医学部を新設する計画を巡り、文部科学省が内閣府から「総理のご意向」と伝えられたなどとする文書を朝日新聞が17日報じた。前川喜平前文科事務次官は25日に記者会見し、「私が実際に在籍中に共有し、確実に存在していた」と述べた。首相は「圧力が働いたことは一切ない」と関与を否定。林芳正文部科学相は11月、獣医学部新設を認可したと発表した。野党は国会の場で、引き続き真相解明を求めている。

6月

天皇生前退位の道開く

天皇陛下の退位を実現する特例法が9日、参院本会議で可決、成立。1817年の光格天皇以来約200年ぶりの退位に道が開かれた。12月1日には皇室会議が開かれ、政府は同8日、19年4月30日を退位の日とし、5月1日に新天皇が即位するとの日程を正式に決めた。

「共謀罪」法が成立

「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日、参院本会議で、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。与党は参院法務委員会での採決を省略。主な野党が反発する中、本会議採決に踏み切った。

7月

都議選で自民惨敗

東京都議選が2日投開票され、小池百合子知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」が49議席を獲得して第1党に躍進した。公明党など知事支持勢力を含めると、過半数を大きく超える79議席を確保した。自民党は改選前の57から23へ議席を大きく減らして惨敗した。

九州北部豪雨で死者・行方不明40人超

九州北部で5日から6日にかけ、総降水量が多いところで500ミリを超える記録的な豪雨となり、福岡、大分の両県で大きな被害が出た。死者・行方不明者が合わせて40人を超えたほか、住宅の全壊288棟、半壊1079棟(消防庁まとめ、9月段階)。豪雨の直後には2000人以上が避難生活を送った。

日欧EPAで貿易自由化

安倍晋三首相は6日、ブリュッセルで欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長と首脳協議し、日EU経済連携協定(EPA)の大枠合意を正式発表した。日本側はEU産ワインにかける関税を、協定発効と同時にゼロにする。交渉は12月に妥結。19年春までの発効を目指す。

8月

内閣改造、外相に河野氏起用

安倍首相は3日、内閣改造を行った。全閣僚19人のうち13人が交代。外相には河野太郎・前国家公安委員長、総務相には野田聖子・元郵政相を充てた。また首相はこの日の記者会見で、20年に新憲法を施行するとの目標に必ずしもこだわらない考えを示した。

9月

日ロ共同経済活動、具体化へ前進

安倍首相は7日、ロシアのプーチン大統領とウラジオストクで会談。北方四島での共同経済活動で、観光や養殖などの5項目で事業の具体化を目指すことで合意した。23日には北方領土の元島民らが国後、択捉両島へ初の空路墓参を行った。元島民とその家族、政府関係者ら約70人が参加した。

10月

製造業のデータ不正相次ぐ

神戸製鋼所は8日、アルミ・銅製品などの一部について、強度などを示す検査証明書のデータが改ざんされ、顧客企業と交わした製品仕様に合わない不適合品が出荷されていたと発表した。現場の管理職が不正を隠していたことも明らかになった。11月には三菱マテリアルの子会社2社が検査記録データの改ざんなどにより、不適合品を出荷していたことが判明。東レも、子会社がタイヤ素材などの品質データを改ざんしていたと発表した。

衆院選で自民大勝

第48回衆院選が22日投開票され、自民党は284議席を獲得して大勝。公明党と合わせて連立与党は313議席となり、憲法改正の国会発議に必要な3分の2(310議席)を上回った。立憲民主党が55議席を獲得して野党第1党に躍進。小池都知事が率いる希望の党は50議席で、公示前から7議席減らした。

アパートに9人の遺体

神奈川県座間市のアパート室内で30日、9人の遺体が見つかり、警視庁は31日、死体遺棄容疑でこの部屋に住む男(27)を逮捕した。(その後、殺人容疑で再逮捕)男は主にツイッターを通じ、自殺願望のある女性に接触。部屋に誘い出していたが、警察のその後の調べに対し、自殺の手助けではなく殺人だったと認めている。9人は15~26歳で、高校生も3人含まれていた。

11月

トランプ大統領が来日

米国のトランプ大統領が5日、就任後、初来日した。6日行われた安倍首相との首脳会談では、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、圧力を最大限まで高めることで一致。天皇、皇后両陛下とも皇居で会見した。

バブル後では最高の株高

東京株式市場は7日、日経平均株価の終値が2万2937円60銭と、1996年6月につけたバブル崩壊後の最高値(2万2666円)を更新、92年1月以来25年10カ月ぶりの水準となった。

暴力事件で日馬富士が引退

大相撲の横綱日馬富士=モンゴル出身=が29日、日本相撲協会に引退届を提出した。10月下旬の鳥取市での巡業中、幕内貴ノ岩に暴行してけがをさせていた責任を取った。日馬富士は、九州場所3日目の14日から休場。17日に鳥取県警の事情聴取を受けた。同県警は12月12日、元横綱を傷害容疑で鳥取地検に書類送検した。

12月

リニア新幹線工事巡り、大手ゼネコンを捜査

東京地検特捜部と公正取引員会は18日、リニア中央新幹線の建設工事で大手ゼネコン4社が受注調整を行っていた疑いが強まったとして、独占禁止法違反容疑で鹿島と清水建設を捜索した。

19日には大成建設、大林組に対しても捜索が行われた。リニア中央新幹線は、東京・品川―名古屋間を最速40分で結ぶ計画で、2027年の先行開業を目指している。

バナー写真:米国のドナルド・トランプ大統領夫妻と会見される天皇、皇后両陛下=2017年11月6日、皇居・御所[代表撮影](時事)

ニュース