練習環境に「満足」わずか34%:パラ水泳アスリート対象に初の大規模調査

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パラ水泳に取り組む競技者のうち、今の練習環境に満足している選手はわずか3分の1にとどまり、練習回数も「週に1~2回程度」の選手が最も多い――。こんな実態が、日本障がい者水泳連盟(河合純一会長)がこのほど行ったアンケート調査で浮かび上がった。

競技環境については、マスターズ大会以外に参加できる一般大会が少なく、「競技を目指す障がい者は参加できるようにすべきだ」「障がい者も参加できるようにすべきだ」との回答が合わせて8割以上を占めた。

この調査は2017年9月から10月にかけ、同連盟の競技会に参加した選手682人に調査票を配布し、390人から回答を得た。連盟がこのようなアンケートを行うのは初めて。櫻井誠一常務理事は「パラ選手が直面する課題を裏付ける結果が出た。パラ全体の競技団体を通じてもこのような調査はこれまでなく、2020年東京パラリンピックのレガシーに位置付ける共生社会の実現に向けた貴重な資料となる」と話している。

練習場所、バリアフリー面で不満

調査結果によると、選手らが主な練習場所としているのは「公共のプール」が最も多く、59.2%。次いで「障がい者スポーツセンターのプール」41.3%、「スイミングクラブのプール」32.8%などとなっている(複数回答)。練習環境に「満足している」選手は34.6%にとどまり、28.5%が「不満がある」、35.9%が「どちらともいえない」と回答した。

不満の理由は「練習場所がない、遠い」55%、「施設が使いにくい」36%、「指導者がいない」35.1%など(複数回答)。施設が使いにくい理由については「バリアフリーになっていない」「車いす用駐車場がない」「市民プールで道具(パドルなど)が使えない」などが挙がった。

練習回数については「週1~2回」が37.7%、「週3回以上」31.8%、「ほぼ毎日」15.4%の順。この回数を「増やしたい」「増やしたいが困難である」と答えた選手は、合わせて54.6%に及んだ。増やしたいが困難な理由については「送迎の確保が難しい」「仕事や学業、家事・育児との両立」「介助者の確保」「体調の不良」などが挙がった。

4割超が「パラリンピック目指す」

43.8%が「主にパラリンピックなど競技を目指したい」と回答。その理由については「自分の可能性を試したい」「目標があれば頑張れる」「トップアスリートたちにあこがれ、自分もそうなりたい」と言った積極的な回答が目立った。

水泳を始めたきっかけは、「リハビリで始めた」36.9%、「家族のすすめで」25.6%、「友人や知人のすすめで」18.5%(複数回答)の順。「学校の授業やクラブ活動で」は15.6%と比較的少なかった。水泳を始める時に影響を受けた人物は「友人や知人」が最も多く32.1%。次いで「監督やコーチ」25.6%、「父母・兄弟など」19.5%、「トップアスリート」16.7%(複数回答)などだった。

パラ選手の悩み

同連盟によると、「練習プールを確保するのに苦労があった」ことについて、選手がアンケートに記述した主な内容は次の通り。

  • 1人では泳がせてくれない
  • 3カ所のプールで練習しているが、バリアフリーなのは1カ所。あと2カ所は介助が必要
  • 3歳から始めたスイミングスクールだが、8カ所問い合わせをして1カ所だけ受け入れてもらえた
  • 介助をつけろとうるさく言われた。自分はある程度の事は時間がかかるけど1人でできる。福祉センターという場所にも関わらず、障がい者への理解が全くなく、他に練習できる場所もなくて本当に困った
  • 近所ではコーチにみてもらえないので都内に出向いていた。経済面(で苦労がある)
  • 車イス使用者の利用実績がなかったため、担当者の判断ができず最初は利用を断られた

取材・文:石井 雅仁(ニッポンドットコム編集部)

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