ニュースで振り返る2018年の日本

社会

政治

安倍首相の堅実な政権運営続く

安倍晋三首相は森友学園問題、加計学園問題で批判を浴びながらも、総じて堅実な政権運営を続けた。9月の自民党総裁選では連続3選を果たし、さらなる長期政権へ道を開いた。通常国会では「働き方改革」関連法、成人年齢を18歳に引き下げる改正民法、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)実施法などを、臨時国会では外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法を可決・成立させた。一方、憲法改正では、臨時国会に自民党の憲法改正案を提出できなかった。

中央省庁の不祥事相次ぐ

学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却で財務省の決裁文書が書き換えられたとの疑惑が3月に発覚。前理財局長の佐川宣寿国税庁長官が辞任し、財務省は改ざんを認めた。4月には女性記者へのセクハラ疑惑が報じられた財務省の福田淳一事務次官が辞職した。7月には文部科学省の局長、幹部職員が受託収賄、収賄の疑いでそれぞれ逮捕。8月には、中央省庁による障害者雇用の水増しが発覚した。

辺野古移設を巡り紛糾

沖縄県は8月、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回。10月に国土交通相が承認撤回の効力を停止し、防衛省は関連工事を再開した。沖縄県との協議も平行線をたどり、12月14日に土砂投入が始まった。

野党の動き

民進党と、希望の党の多数勢力が合流し、5月に野党第2党となる新党「国民民主党」が結成された。9月に代表選挙が行われ、共同代表だった玉城雄一郎衆院議員が代表に選ばれた。

外交

北朝鮮との関係は、6月の米朝首脳会談で核問題の緊張が和らいだものの、拉致問題での具体的な進展はなかった。安倍首相は9月の日米首脳会談で、両国間の貿易・投資を拡大する物品貿易協定(TAG)締結に向け、農産品などの関税を含む2国間交渉に入ることで合意した。 安倍首相は10月に訪中し、習近平国家主席と会談。両首脳は新たな日中関係を築くとの認識で一致。「競争から協調」など三つの新原則や安定的な首脳往来を進めることを確認した。日韓関係は10月30日、韓国最高裁が「徴用工訴訟」で新日鉄住金に賠償命令を出したことを受け、一気に冷却化した。 日ロ関係では、北方領土をめぐり、複雑な駆け引きが続いた。安倍首相は11月にプーチン大統領とシンガポールで会談し、歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎として、平和条約締結交渉を加速させることで合意した。 2017年に大筋合意したTPP11(環太平洋連携協定)は、18年3月に11カ国の閣僚が署名。10月までに日本を含む6カ国が国内手続きを終えたことで、12月30日に発効した。日EUの経済連携協定(EPA)は7月に合意の署名が行われ、19年2月に発効する。

経済

黒田日銀、2期目に

政府は4月、黒田東彦日銀総裁を再任した。これまでの金融緩和政策は基本的に継続され、7月には政策金利の先行きを示す「フォワードガイダンス」を導入することで、長期にわたり現在の低金利を継続する姿勢を明確にした。

日産のゴーン会長逮捕

東京地検特捜部は11月、役員報酬を実際より約50億円少なく見せ掛けたとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで日産自動車のカルロス・ゴーン会長を逮捕。同社と三菱自動車の会長を解任された。

止まらない品質不正問題

神戸製鋼所、三菱マテリアルや東レの子会社などで2017年に相次いで発覚した品質不正の不祥事。18年にも同様の例が相次いだ。産業部品大手のKYBは10月、建物用免震・制振装置の一部で検査データの改ざんが判明したと発表。日立化成は11月、顧客と約束した検査を怠ったり、検査データを改ざんしたりするなどの不正が広く行われていたと公表した。

社会

オウム裁判終結、死刑執行

最高裁は1月、オウム真理教の地下鉄サリン事件(1995年)で殺人などの罪に問われた元信者の上告を棄却する決定を行い、教団の裁判は事実上終結。法務省は7月6日、元代表の松本智津夫(麻原彰晃)(63)と元教団幹部ら死刑囚7人の刑を執行。26日には残る6人の死刑を執行した。

オウム真理教の元代表松本智津夫死刑囚らの刑執行を報じる号外=2018年7月6日、東京都港区(時事)

豪雨、台風、地震…相次ぐ自然災害

6月18日、大阪府北部で最大震度6弱を記録する地震が発生(死者5人、負傷者400人超)。7月7日には西日本豪雨で死者・行方不明220人を超える被害が出た。9月には台風21号が近畿、東海地方を中心に大きな被害をもたらした。関西国際空港は滑走路が水没して閉鎖。連絡橋にタンカーが衝突した。9月6日には最大深度7の北海道胆振東部地震が起き、土砂崩れや家屋倒壊が多数発生して41人が死亡。一時は道内の全約295万戸が停電した。

西日本豪雨により浸水した街並み=2018年7月8日午前、岡山県倉敷市上空(時事)

7月中下旬には日本列島を熱波が襲い、23日には埼玉県熊谷市で国内観測史上最高となる気温41.1度を記録した。消防庁は24日、16日から22日までの1週間に搬送された熱中症患者が全国で2万2647人(速報値)で、うち65人が死亡したと発表した。

医学部の不正入試が発覚

東京地検特捜部は7月、私立大学の支援事業選定で便宜を図る見返りに、東京医科大学を受験した自身の子どもを不正に合格させてもらったとして、文部科学省の局長を逮捕。これをきっかけに、複数の大学医学部で、女子や浪人生を不利に扱うなど不適切な得点調整を行っていたことが明らかになった。

科学・技術

本庶氏にノーベル賞

がん治療に「免疫治療法」という新しい道を切り拓いた京都大学の本庶佑特別教授が、2018年のノーベル医学生理学賞を受賞した。日本出身者のノーベル賞受賞は27人目(米国籍の南部陽一郎氏、中村修二氏、英国籍のカズオ・イシグロ氏も含む)。

進むiPS細胞の臨床研究

人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った心臓の筋肉細胞を重い心臓病患者に移植する大阪大学の世界初の臨床研究計画を、厚生労働省が5月に条件付きで了承した。11月には京都大学がパーキンソン病の臨床試験で、iPS細胞からつくった神経細胞を50代の男性患者に移植したと発表した。

3億キロ離れた小惑星を探査

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2014年に打ち上げた探査機「はやぶさ2」が6月、地球から約3億キロメートル離れた小惑星「りゅうぐう」に到着。同機構は9月、投下した2台の小型探査ロボットが小惑星への着地に成功したと発表した。

文化

是枝裕和監督の映画『万引き家族』が5月19日、第71 回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した。邦画では21年ぶり。6月30日には日本が推薦していた「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本両県)の、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産の登録が決まった。 将棋の藤井聡太棋士が2月、プロ初優勝し、中学生で初の六段に。5月には61 年ぶりに最年少記録を更新する15歳9カ月で七段に昇段した。12月には史上最速、最年少、最高勝率で公式戦通算100勝に達した。 囲碁では、井山裕太五冠(29)が12月19日、天元戦のタイトルを防衛。七大タイトルの通算獲得数を43とし、歴代単独1位の記録を達成した。

スポーツ

2月に韓国で開かれた平昌冬季五輪で、日本勢は金4、銀5、銅4と13個のメダルを獲得。史上最多記録を更新する活躍を見せた。フィギュアスケート男子で羽生結弦選手が五輪連覇を果たしたほか、カーリング女子のLS北見が銅メダルを勝ち取った。

平昌五輪のフィギュアスケート男子フリー。演技をする羽生結弦=2018年2月17日、韓国・江陵(時事)

テニス界の新星、大坂なおみ選手が9月、全米オープン女子シングルスでセリーナ・ウィリアムズ(米国)を破って初優勝。日本選手として初めて、四大大会のシングルスを制覇した。プロ野球では、大リーグ入りしたエンゼルスの大谷翔平選手が投打の「二刀流」で活躍。11月に2018年のア・リーグ最優秀新人(新人王)に選ばれた。

相次ぐアマスポーツのパワハラ、不祥事

日大アメリカンフットボール部の選手が5月、関学大との試合で過度な反則タックルを繰り返した問題が大きな波紋を呼び、監督が辞任、競技団体から除名される事態となった。過度なタックルは「監督の指示」と世間に認識され、スポーツ界のパワハラが社会問題となった。これに先立つ4月には、日本レスリング協会の強化本部長が、女子金メダリストへのパワハラで辞任。8月には助成金の不正使用疑惑で、日本ボクシング連盟会長と理事全員が辞任した。 バナー写真:衆院予算委員会の証人喚問で、挙手する佐川宣寿前国税庁長官=2018年3月27日、国会内(時事)

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