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若いメディア志望者が「メディア塾」から学んだこと
[2018.12.21]

若いメディア志望者のための「メディア塾」(公益財団法人「ニッポンドットコム」主催)は、3か月間に6回の講座を行い、2018年12月14日に終了。受講生からは「ネットを中心としたニューメディアは、ネット時代前の先輩たちが築き上げてきたノウハウをもっと学び、活用する必要があることを、今回のメディア塾は教えてくれた」など、今日のメディア界に参考になる声が寄せられた。

先輩記者の取材姿勢を学べ

新聞社、テレビ、通信社、出版社出身の取材体験が豊富な講師による連続講座を受けた若者たちは何を学んだのか。受講生の意見の一部を紹介する。

(1)ドイツ・ミュンヘン在住、33歳、男性。現地の日系会社に勤務(両親の仕事の関係で10歳から海外生活。この塾のため、ドイツ―日本を往復し皆勤)

ジャーナリズムは「書くこと」から始まる。これはすべての講義に共通していたことだ。その書く作業が各媒体でどのように行われるのか。放送局、新聞社、通信社、週刊誌など今日でいえばオールドメディアで活躍してこられた講師の方々が、自分たちの経験をもとにそれぞれの媒体でどのように報道や取材が行われ、どのような機能を果たしているかを語ってくれた。

メディアの歴史はまだ浅い。文字が発明されたのはおよそ5000年前といわれ、活版印刷術が発明されたのは600年前である。新聞の誕生はまだ約200年前のことだ。20世紀末からインターネットが普及したことを受け、メディアのあり方はいま再び大きく変わろうとしている。メディアの歴史の中で最も激的な変化だと言っても過言ではないはずだ。

今回のメディア塾は、いわゆるネット時代が到来する前に活躍されたジャーナリストが、ネット世代に向けて培ってきたノウハウを共有する場とも受け取れる。既存メディアの影響力が相対的に弱まる中、それらが社会的に担ってきた社会的役割を我々若い世代はこれからどのようにして引き継いでいけばよいのか。デマやフェイクニュースが問題視される昨今だが、それらの現象は既存メディアの衰退をニューメディアが埋められていないことを示しているのかもしれない。

手嶋龍一さんは第1回講義で、近年のドキュメンタリー映画作品で用いられるシンボリズムや表現方法はとても想像力に乏しいと指摘している。ネット時代で情報発信が大衆化したからといって、必ずしも表現力が豊かになるとは限らないと。これは書くことにもあてはまる。谷定文さんは第2回講義で、限られた時間で正確に書くことがどれだけ難しいかを教えてくれた。取材中に断片的な情報しか手に入らない場面はしばしばあるが、裏の取れていない内容を報道することは許されない。速報性と正確性と報道倫理を両立させることをジャーナリストは努めなければならない。

今日のニューメディアのあり方に目を向けると、速報性のみが重視されており、正確性と報道倫理が怠られているように映ることは否定できないだろう。

第3回講義で野嶋剛さんは、経験者として戦場ジャーナリストの重要性を説きつつも、戦場ジャーナリストをむやみに美化することには疑問を投げかける。報道とは特定の出来事を伝えることであるが、それは大半の場合、他人の不幸であり、ジャーナリストはそれを自覚するべきであると。小俣一平さんの第4回講義では、取材を行う上で人脈や人付き合いがどれほど大切かを伝えてくれた。事件が発生した際、正しい取材源から的確な情報を聞き出せるかどうかがスクープ記事を書けるかどうかを左右する。それには人望の厚さがものをいうのだ。

第5回講義では、斉藤勝久さんが、記事を完成させるにあたってどのような取材活動が行われたのかを語ってくれた。特ダネをつかんでも、報道するには裏を取らなければならない。それには慎重さと巧みな調査が求められる。いつでも冷静に物事を捉えることが優れた報道につながるのだ。四方田隆さんの行った第6回講義では、週刊誌の報道が新聞社や通信社とどのように違うかを教えてくれた。新聞社では伝えきれない視点や評論も含めて週刊誌では報道する。それは事実のみをそのまま伝える作業ではなく、ナマの情報に切り口を入れてニュースに一定の枠組みを与えてくれるのだ。

マスメディアで築き上げられてきたこれらのノウハウはネット時代にも活用する必要があるのは明白である。現時点では、それがどのような形で現実的に可能なのかが、いまだ不透明である。

(2)千葉県、33歳、女性。フリーランスライター

簡単に情報が手に入るネット時代において、ニュースも速報性が一層求められている昨今。しばしば取材先の会見場でもパソコンを打つ音ばかりが目立ち、記者の質問に関しても的を射ていないとの指摘をSNS上でも見かけるようになりました。

そうした時代にあって、百戦錬磨の卓越したジャーナリストであるメディア塾の講師の方々は、「楽して情報を手に入れよう」とする傾向に警鐘を鳴らしているように感じました。情報に対する慎重で真摯な向き合い方、知識を吸収するためのたゆまぬ努力、ときに泥臭く取材対象者と人間関係を築く姿勢、一つひとつのエピソードからメディアの世界で生き抜くヒントをいただくことができました。

私はライターとして6年間、ほぼ毎日のように取材に出向いており、書くことよりも人の話を聞くことが好きでこの仕事を選んだようなものですが、メディアで生きていく基本の心得をいまさらながら学んだような気持ちです。それぞれの講師の皆さんの後輩や部下だったら、講義でお話くださったような内容をもとに、厳しく鍛えられたのかもしれないとうらやましさも感じました。フリーランスなので正直どこまで取り入れられるかなと思うところもありましたが、取材対象者との向き合い方など、すぐに活かせるエッセンスもたくさんいただけました。

懇親会の折、同じく現在フリーランスで活動されている講師が、「身体が動く限り仕事をしていたい」と微笑みながら話されていたのを目にしました。ジャーナリストとはやはり職業の枠を超え、人生を賭して充分な、やりがいのある仕事なのだなと背中を押される思いでした。

  • [2018.12.21]
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