【新書・選書紹介】米中貿易戦争は「21世紀の国家システム賭けた戦い」:近藤大介著「二〇二五年、日中企業格差」

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米中貿易戦争は「21世紀の国家システムを賭けた戦い」——
最先端IT 3社やファーウェイ、「中国製造2025」計画といった中国関係の基礎知識を紹介した上で、その中における日本企業の勝機を解説する。

 中国を中心に幅広く内外情勢を取材する近藤大介氏の近刊。

 本書が刊行された2018年9月、トランプ米大統領による中国叩きである「米中貿易戦争」の火ぶたがすでに切られていた。続く10月、ペンス副大統領が演説の中で対中戦略の転換を明確にして“宣戦布告”、12月には中国を代表するIT企業ファーウェイのナンバー2が拘束され事態はエスカレートする。本書は第4章で同社を解説した上で、米中対立は「アメリカン・スタンダード」か「中国模式(チャイナ・モデル)」か、という世界標準を巡る「21世紀の国家システムを賭けた戦い」(p238)とその本質を分析していた。

日本に大きな構造変革もたらす「中国製造2025」計画

 著者の強みは、中国留学と現地法人幹部の時に築き上げた情報ネットワークと現場経験、そして軽やかに情報ソースに直接当たるフットワークだ。ファーウェイについては、人民解放軍出身の創業者・任正非が創業した特殊な民営企業という基本情報から、米アップルや韓国のサムソンを抜いて世界制覇を狙う現在の業容まで過不足なくカバーしている。ファーウェイ以外に百度、アリババ、テンセントという中国の最先端IT 3社(略称BAT)についても日本との深い縁など詳細に紹介している。ただ、中国市場の巨大さと主要企業の売上高や世界シェアを列記するだけではなく、随所で共産主義国・中国の特殊性と党指導部との関係に対する注意喚起を忘れないのが単なる情報本と一味違う。

 中国が2025年までに世界一の製造強国を目指す「中国製造2025」計画については、実現すれば、「大きな構造変革が日本にもたらされる」と警鐘を鳴らす。副題でもある「日本は中国の下請けになるか?」(第2章)という問い掛けは挑発的だ。「中国企業は日本の下請け」という多くの日本人の古い固定観念とは裏腹に、巨大資本を有する中国企業が最終製品やサービスを世界へ輸出し、日本はそこに部品を提供する「日本企業の中国下請け化」現象が起きるというのだ。中国でビジネスの現場に立ち会った著者から見ると、日本企業の意思決定の遅さや弱い資金力というハンデは歯がゆくて仕方がないのだろう。

「戦後最長をうかがう好景気が継続中」と言っても、庶民に豊かさの実感は乏しく、不祥事を起こした大手企業が謝罪を繰り返す元気のない日本を見るにつけ、本書の指摘は簡単に否定できない重みを持つ。

 ただ、中国の代表的IT企業たちは本書で紹介されている通り、民営と言いながらも本国の大方針に忠実に従う。非民主的な計画経済を後ろ盾に国際市場で欧米先進国とも対等以上に渡り合う彼ら「紅船(あかふね)」を相手に、日本企業はどのように戦うべきか。米中貿易戦争が激しさを増す中で気になる一冊だ。(編集部)

二〇二五年、日中企業格差

近藤大介(著) 
発行:PHP研究所
新書判並製 266ページ
定価 880円+税
ISBN 978-4-569-84107-6
発売日 2018年9月14日

 

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