京都・東山三条「丹」の朝ごはん
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<献立>
- 季節の白和え
- 丹後野菜の盛り合わせ
- 自家製納豆
- 生玉子
- 風呂吹き大根
- 瓜の糠漬け
- ごはんと味噌汁
京都・東山三条の白川沿い。柳がそよぐ川べりに、清潔なたたずまいの「丹」がある。朝食と昼食に特化した店として、料亭の「高台寺和久傳」が2016年にオープンした。
といっても、内容は高級さを前面にした料亭の朝ごはん版ではない。和久傳のルーツである丹後で採れた野菜を中心に、玉子、納豆、漬物と、献立はシンプルに徹している。
そこには二つの理由があると、経営者の桑村祐子さんは言う。
「店で使う野菜は、丹後にある自家の畑で採れた野菜と、丹後の農家さんが作る有機栽培の野菜です。農家さんの生活は決して楽ではないけれど、信念を持ってやっていらっしゃる。朝、まだ陽が上がらないうちに収穫してくださるものも多く、せっかくそれが店に届くなら、夕方ではなく、朝においしく食べていただきないな、と思ったことが一つ」
もう一つは、料理屋における“働き方改革”である。
「料亭の厨房は男性が中心の徒弟制で、ヒエラルキーが厳然とある世界。『丹』は家庭的な献立を基本にすることで、そのヒエラルキーを離れ、男女を問わずフラットな働き方ができる場にしたかったんです」
スタッフには子育て中のお母さんも多い。「仕事のやりがい」「生活費の確保」「店の持続性」といった経営の歯車を、「家庭的」というキーワードで、どのように回していけるか、その工夫を凝らしている最中という。
「家庭的」は、朝ごはんの供し方にも表れている。店は真ん中に大テーブルを据えて、大皿、大鉢に盛った野菜と惣菜を、隣り合った同士が分け合い、回し合って、わいわいと食卓を囲む形式だ。
「友だちの家に行ったら、ありあわせの材料で、心を込めた料理を出してもらった。結局、そんな時のうれしさに勝るおもてなしはないな、と思うんです」
さらにもう一つ、「健康的」も大事なキーワード。昔、新規出店した店を切り盛りしていた時に、ストレスと忙しさで体を壊した経験が桑村さんにはある。その時、無農薬で育てられた地場の野菜や、漬物など昔ながらの日本の発酵食品を食生活の基本に据え直して、健康を取り戻すことができた。
店は白川疎水に面し、春から秋は入り口を通りに開け放つ。風にそよぐ柳とともに、空気の通りが爽快である。
ある日の朝ごはんは次の通り。
〇温かい一番出汁
最初のお迎えは、お茶代わりの出汁。丁寧にひいた出汁が香る碗に、料亭ならではの技がひそんでいる。
〇梅干し
梅干しは和歌山産のもの。
〇季節の白和え
さつまいも(紅はるか)、ほうれんそう、いぶりがっこ、しめじを、和久傳が得意とするごま風味の白和えで。クリームチーズを加えて、手ごたえのある味に仕上げる。
〇丹後野菜の盛り合わせ
玉ねぎの蒸し焼き、大浦ごぼう、赤大根、かぼちゃ、ポルトガルのオーガニック・オリーブオイル、自家製の菜味噌(刻んだ野菜と醤油のもろみを合わせたもの)、ポルトガルの天日塩を添えて。
〇自家製納豆
北海道のスズマル大豆を店で発酵させて作る。
〇生玉子
兵庫県の特別濃厚卵を使用。素材は、「丹」で料理長を務める北嶋靖憲さんが目利きをしている。
〇丸大根の柚子味噌かけ
柚子味噌は白みそベースに、柚子の皮をしのばせて。
〇瓜の糠漬け
〇白ごはん
〇味噌汁
土鍋で炊いたごはん
さりげなく使っているうつわは、現代作家のもの
場所柄、外国人の観光客も
大テーブルで見知らぬ同士が大皿を回し合う
食後のコーヒーは、白川沿いの柳を楽しめる2階席で
(文中敬称略)
取材・文:清野由美 撮影:楠本涼 シリーズ題字:金澤翔子(書家)
<情報>
丹
〒605-0036 京都市東山区五軒町106-13
電話 075-533-7744
ウェブサイト http://www.tan.kyoto.jp/
朝食 8:00~10:00(ラストオーダー 9:30)

