奈良「秋篠の森」石村由起子の朝ごはん
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<献立>
- 季節の炊き合わせ
- 里芋の梅煮
- 茄子の揚げ浸し
- 漬物七種
- 大和茶粥
- 大和のほうじ茶
やさしいお顔の伎芸天像で有名な奈良・秋篠寺。そこからほど近い住宅地に、「秋篠の森」と名付けられた、心なごむ一画がある。
小高い丘の上に立つ木造の建物群。庭には四季折々に実をつける果樹をはじめ、さまざまな種類の木が植わり、文字通り町中の「森」をなす。敷地内には、レストラン「なず菜」とギャラリー「月草」が隣り合い、食事の後先に、ギャラリーでうつわの品定めをすることも楽しみのひとつだ。同じ奈良市内にある人気カフェ&雑貨ショップ「くるみの木」オーナーの石村由起子が、2004年から彼女ならではの「目と手」をもって、この一画を育ててきた。
そんな石村は、料理にも独自の感性を発揮する。彼女が作る朝ごはんは、「秋篠の森」の光景そのまま、季節を取り入れて、目にやさしく、さりげない工夫を細部にまで行き届かせた品々。豪華に飾るわけではないけれど、色彩感あふれる食卓に、思わず「わぁ!」と歓声を上げたくなる。
香川県高松市で生まれ育った石村は、大阪で店舗開発の仕事をした後、結婚を機に奈良市近郊に住まいを移した。以来、奈良という土地の奥床しさに心を寄せ続けているという。
「歴史的な社寺はもちろんですが、お米、お茶、野菜、そして工芸品と、奈良産のものは、どれも驚くほど丁寧に作られているのです。それなのに、声高な自己主張とは無縁で、おおらか。そんなところが、いとおしくて」
その思いを込めながら、大事なことは、「足し過ぎない」「余白を残す」こと。
「旬の野菜は炊き合わせなどで、手を加え過ぎずに。奈良の野菜はそれだけで力強い味わいを持っているので、その味わいを存分に楽しみます」
朝の光が入る空間で、清々しい気分とともに一日が始まる幸福。
ある朝に彼女が作ったメニューは次の通り。
〇季節の炊き合わせ:独活(うど)、筍(たけのこ)、蕗(ふき)、蕨(わらび)、たらの芽
「なず菜」の料理は、大和野菜を中心に、走りと旬、両方の材料をふんだんに取り入れる。暦の上で立春を迎えると、山菜が手に入るようになる。日々の気温はまだ低くとも、土の下では着実に春が芽吹いている。
〇里芋の梅煮:
ほっこりとした煮物は、ほっとした時間に欠かせない。里芋を梅干しと出汁だけで、シンプルに丁寧に炊く。柚子皮をのせて、その香りとともに。
〇茄子の揚げ浸し:
野菜を使った揚げ浸しは、朝のひと時に華やぎを添えてくれる一品。針生姜を添えて。
〇漬物七種:
パレットの上にカラフルな絵の具がのっているような漬物のひと皿。今朝は、柚子かぶら、奈良漬、昆布の佃煮、梅干しと、きゅうり、茄子、ラディッシュの浅糠漬。すべて自家製で、それぞれの色に合わせて、切り方、並べ方も工夫する。
漬物七種。上段左から時計回りに、柚子かぶら、奈良漬、きゅうりの浅糠漬、昆布の佃煮、梅干し、ラディッシュ、茄子の浅糠漬
〇大和茶粥:
奈良なので朝ごはんは茶粥を。奈良産の「ヒノヒカリ」をさらっと炊く。
〇大和のほうじ茶:
奈良産のお茶は、お米と同じく丁寧に、真面目に作られていて、おいしい。石村は「大和」のおおらかなイメージとともに、奈良の名産品を広く知ってほしいと願い、プロデュースも担っている。ギャラリー「月草」では、それらの品々も販売している。
☆「秋篠の森」は、石村が集めたうつわと料理の取り合わせが、また格別だ。「炊き合わせ」「里芋の梅煮」「茄子の揚げ浸し」のうつわは李朝の骨董。
庭の白木蓮を店内に活けて
「秋篠の森」の玄関
レストラン「なず菜」の店内
「なず菜」に設けられた暖炉。晩秋から早春までは、薪をくべて部屋を暖める
(文中敬称略)
取材・文:清野由美 撮影:楠本涼 シリーズ題字:金澤翔子(書家)
<情報>
秋篠の森
〒631-0012 奈良県奈良市中山町1534
電話 0742-52-8560
ウェブサイト http://www.kuruminoki.co.jp/akishinonomori/
現在、「なず菜」では、昼と夜を予約制で供する。夜は土日祝のみ。朝ごはんは要問い合わせ。
近鉄「大和西大寺」よりタクシーで約15分。



