500年の歴史を持つ山形・銀山温泉で名湯と大正ロマンに浸かる

・レトロな木造多層建築が軒を連ねる温泉街
・老舗旅館でぜいたくなひとときを過ごす
・足湯や立ち寄り湯で気軽に名湯を楽しめる

川沿いに木造多層建築の旅館が連なる温泉街

山形県尾花沢市には、江戸時代初期に大銀山として栄えた延沢銀山があった。その銀山で働いていた坑内員によって発見されたのが、約500年の歴史を持つ「銀山温泉」だ。温泉街は銀山の衰退とともに一時はさびれていたが、大正・昭和時代に盛り返し、銀山川の両岸に木造多層建築の旅館が次々と建てられた。

雪化粧した温泉街も趣がある 写真提供:尾花沢市商工観光課
雪化粧した温泉街も趣がある 写真提供:尾花沢市商工観光課

石畳の小道やガス灯が懐かしさを誘う

銀山温泉の魅力の一つは、木造建築の旅館が作り出す昔ながらの街並みだ。石畳の小道を歩けば、所々に埋め込まれた色鮮やかなタイルが目を楽しませてくれる。クラシックな着物やはかまを借りられる店もあり、着替えて散策すれば大正ロマンの世界を体験できる。

のどかな日中の雰囲気も良いが、夕暮れ時も風情がある。橋のたもとに立つガス灯に明かりがともり、一層ノスタルジックな雰囲気に包まれる。豪雪地帯ならではの雪景色もまた、感動的な美しさだ。

気軽に足湯を楽しめる「和楽足湯(わらしゆ)」 写真:シュープレス
気軽に足湯を楽しめる「和楽足湯(わらしゆ)」 写真:シュープレス

レトロで落ち着いた雰囲気の能登屋旅館

鏝絵(こてえ)には銀山開拓の祖・木戸佐左ェ門の名前が記されている 写真:シュープレス
鏝絵(こてえ)には銀山開拓の祖・木戸佐左ェ門の名前が記されている 写真:シュープレス

銀山温泉のシンボル的な存在なのが、4階に望楼がある「能登屋(のとや)旅館」だ。創業は1892(明治25)年、本館の建物は1921(大正10)年に建てられたもので、国の登録有形文化財にも指定されている。

風格ある建物はもちろん、柱や戸袋などに施された精細な鏝絵(こてえ)にも注目したい。鏝絵とは、左官職人が漆喰(しっくい)で作ったレリーフのことで、銀山温泉では能登屋旅館以外の建物にも見ることができ、職人の心意気を感じさせる。

ゆったりとくつろげる純和風の客室 写真提供:シュープレス
ゆったりとくつろげる純和風の客室 写真:シュープレス

木のぬくもりに満ちた館内もまた、趣あるたたずまいだ。丁寧に磨き上げられた廊下の床板や階段の手すりはあめ色に輝き、長い年月を経ているからこその美しさを宿している。客室は、大正時代の建物が使われている本館と、モダンな雰囲気の別館がある。いずれも広々とした造りの和室で、上質なひとときを過ごせるだろう。

ぜいたくに注がれる源泉掛け流しの湯を堪能 写真:シュープレス
ぜいたくに注がれる源泉掛け流しの湯を堪能 写真:シュープレス

能登屋旅館には男女別の大浴場のほか、温泉街の奥にある「白銀の滝」を望む展望露天風呂や、貸し切りで利用できる洞窟風呂などがそろう。日帰り入浴は受け付けておらず、宿泊者のみが利用可能。切り傷や神経痛などに効果的だといわれる銀山温泉の湯で、体を芯から温めよう。

DATA

  • 住所:山形県尾花沢市銀山新畑446
  • アクセス:JR大石田駅から「はながさバス」銀山温泉行きで、終点下車、徒歩8
  • TEL:0237-28-2327

設計が斬新な「共同浴場しろがね湯」

細い三角形の土地に建つ「共同浴場しろがね湯」 写真:シュープレス
細い三角形の土地に建つ「共同浴場しろがね湯」 写真:シュープレス

温泉街入り口のしろがね橋を渡り、向かって左へ少し歩くと、モダンな外観をした「共同浴場 しろがね湯」がある。黒板の格子が印象的な建物は、2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建築家・隈研吾氏が手掛けたもの。レトロな温泉街の雰囲気に溶け込む斬新なデザインは必見で、浴室の湯船も三角のユニークな形をしている。建築見学とともに、ほのかに硫黄の香りがする熱めの名湯を気軽に楽しめる施設だ。

 DATA

  • 住所:山形県尾花沢市銀山新畑433
  • アクセス:JR大石田駅から「はながさバス」銀山温泉行きで、終点下車、徒歩5
  • TEL:0237-28-3933(銀山温泉観光案内所)
  • 営業時間:8:0016:30(閉館は17:00
  • 定休日:無休(13月は不定休)
  • 料金:500

●周辺情報

野川とうふや

「立ち食い豆腐」(手前・170円)、「立ち食い生揚げ」(200円) 写真:シュープレス
「立ち食い豆腐」(手前・170円)、「立ち食い生揚げ」(200円) 写真:シュープレス

創業100年の「野川とうふや」が作る「立ち食い豆腐」は、温泉街散策の途中にぜひ味わいたい。濃厚な大豆の甘みを感じられるヘルシーな逸品で、少し甘めの醤油だれがよく合う。豆腐を揚げた「立ち食い生揚げ」は、外はカリカリ、中はフワフワの食感がたまらない。どちらも食べ歩きにちょうどいいサイズで、足湯に浸かりながら味わう人も多い。すぐに完売してしまう日もあるので、早い時間に訪れるのがおすすめだ。

DATA

  • 住所:山形県尾花沢市銀山新畑427
  • アクセス:JR大石田駅から「はながさバス」銀山温泉行きで、終点下車、徒歩3
  • TEL:0237-28-2494
  • 営業時間:午前7時~なくなり次第終了
  • 定休日:不定休

取材・文=シュープレス
(バナー写真=ガス灯の明かりに照らされる冬の銀山温泉 写真:尾花沢市商工観光課)

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