福島「相馬野馬追」:騎馬武者たちが繰り広げる勇壮な戦国絵巻

・甲冑に身を包んだ騎馬武者の大行列は迫力満点
・勇壮な「神旗争奪戦」で戦国時代にタイムトリップ
・白装束の男たちが荒馬を素手で捕える神事「野馬懸」も必見

1000年の伝統を持つ、勇壮で厳粛な馬の祭典

福島県南相馬市で行なわれる「相馬野馬追(そうまのまおい)」は、500騎もの騎馬武者が繰り広げる戦国絵巻のような祭りだ。“世界一の馬の祭典”ともいわれ、国の重要民俗無形文化財に指定されている。

今から1000年以上の昔、この地を治めた相馬氏の祖と伝わる平将門(たいらのまさかど)は、野馬を敵兵に見立てて軍事教練を行い、捕らえた馬を神前に奉納した。1323年に現在の南相馬市に移り住んだ相馬氏は、その伝統行事をこの地で守り続けてきた。現在でも、祭りの総大将は相馬氏の子孫が務めている。

戦国時代のようなダイナミックな光景がよみがえる 写真提供:相馬野馬追執行委員会毎年7月最終土曜日から月曜日の3日間にわたって開催される相馬野馬追には、数々の見どころがある。

初日には、ほら貝の合図とともに3カ所の神社から騎馬武者が出陣する。北郷陣屋(きたごうじんや)では、出陣した総大将を迎えて「総大将お迎え」の儀式を厳粛に執り行ない、会場となる雲雀ヶ原祭場地(ひばりがはらさいじょうち)を目指す。

2日目の「神旗争奪戦(しんきそうだつせん)」は祭りのクライマックスだ。500騎もの騎馬武者たちが、2本の御神旗を目指して群がり、勇猛果敢に奪い合う。その光景は、まるで戦国時代の合戦さながらの迫力だ。

人馬一体となって駆け抜ける迫力の「甲冑競馬」

甲冑姿の騎馬武者が砂煙を上げて駆け抜ける 写真提供:相馬野馬追執行委員会神旗争奪戦に先立って行なわれる「甲冑競馬(かっちゅうけいば)」も、迫力満点で見逃せない。色とりどりの旗指物(はたさしもの)を風になびかせ、甲冑姿の騎馬武者が人馬一体となって疾走する。湧き上がる歓声と大地を揺るがす蹄(ひづめ)の音が、エキサイティングなレースをさらに盛り上げる。

白装束で馬を追う「野馬懸」 写真提供:相馬野馬追執行委員会

祭り最終日に行なわれるのが、昔の名残をとどめる唯一の神事といわれる「野馬懸(のまかけ)」だ。騎馬武者が追い込んだ裸馬の中から「これぞ」という荒馬を追い、その馬を白装束に白鉢巻姿の男たちが素手で捕らえて神前に奉納する。見る者をはるか1000年前の情景へといざなう、人馬が繰り広げる勇壮な祭りが相馬野馬追なのだ。

【DATA】

  • 住所:福島県南相馬市(雲雀ヶ原祭場地他)
  • アクセス:JR原ノ町駅からシャトルバスで15分
  • TEL:0244-22-3064(相馬野馬追執行委員会事務局)
  • 開催期間:7月28~30日
  • 料金:一般自由席 1000円(前売り800円) ※7月29日のみ有料
  • 多言語対応:HP=英語、パンフレット=英語/中国語(繁体)/韓国語

●周辺情報

南相馬市博物館

広大な「東ヶ丘公園」内に建つ博物館 写真提供:南相馬市博物館

相馬野馬追の迫力ある映像やジオラマが、通年見ることができる「南相馬市博物館」。祭りで実際に使われる甲冑や祭具の他、県の重要有形民俗文化財に指定されている「相馬野馬追図屏風」も展示されており、1000年以上続くとされる祭りの歴史や変遷が学べる。館内には、旧石器時代から現代に至るまでの南相馬の資料があり、人々の暮らしや多様な自然環境についても深く理解することができる。

【DATA】

  • 住所:福島県南相馬市原町区牛来字出口194
  • アクセス:JR原ノ町駅からタクシーで10分
  • TEL:0244-23-6421
  • 営業時間:9:00~16:45(最終入館は16:00まで)
  • 定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)
  • 料金:一般300円、高校生200円、小・中学生100円
  • 多言語対応:パンフレット=英語

取材・文=シュープレス
(バナー写真=騎馬武者が勇壮果敢に疾走する「甲冑競馬」 写真:相馬野馬追執行委員会)

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