観光

2018/6/9

山形「出羽三山神社」:山岳修験の伝統を継承

・参詣道は2446段の石段
・美し過ぎる国宝の五重塔
・自然崇拝など縄文時代の信仰形態を残す

羽黒山の山頂に三山の神々を合祭

山形県中央部にそびえる月山(がっさん、1984メートル)、その西側の湯殿山(ゆどのさん、1504メートル)、月山から峰続きの北端にある羽黒山(はぐろさん、414メートル)を合わせて「出羽三山(でわさんざん)」と言う。

ひときわ秀麗な月山は、古くからカンナビ(神の山、霊山)としてあがめられ、山中には神が降臨するイワクラ(霊験のある巨大な岩など)が点在する。湯殿山のご神体も赤褐色の巨大なイワクラで、羽黒山には神を迎える依り代(よりしろ、神霊が寄りつくもの)となるヒモロギ(古木、深い森)がある。日本では縄文時代より、山や海、木々、植物などあらゆるものに神が宿ると考えられてきたが、出羽三山はそうした信仰の典型といえる。

三山にはそれぞれに月山神社、湯殿山神社、・出羽神社(いではじんじゃ、羽黒山山頂)があり、それらを総称して「出羽三山神社」と呼ぶ。標高の高い月山と湯殿山は、冬季になると雪に覆われて閉山してしまう。そのため、出羽神社には三山の神々を一緒に祀(まつ)る「三神合祭殿(さんじんごうさいでん、山形県鶴岡市)」がある。羽黒山山頂には有料道路を使って車で上ることもできるが、徒歩で参拝すれば、古来より人々が信仰した神々しい山の雰囲気に触れることができ、修験者の気持ちに近づけるはずだ。

巨杉に囲まれた参道

東北最古、国宝の五重塔

羽黒山参詣道の入り口となる随神門をくぐると、その先には約1700メートル、2446段の石段が待ち構える。江戸時代に13年がかりで敷設されたもので、山頂までは約1時間を要する。

最初は急な石段下りから始まる。樹齢数百年といわれる杉の古木に囲まれた参道を進むと、約600年前に建てられた東北地方では最古の五重塔が現れる。高さは29メートルもあり、杮葺(こけらぶき)屋根で素木(しらき)造りという伝統的な手法による塔が美しく、1966年に国宝に指定された。

そのすぐ近くには樹齢1000年、根回り10.5メートル、幹囲8.25メートルの爺杉(じいすぎ)と呼ばれる巨杉がある。こちらは国の天然記念物に指定されている。

国宝に指定された五重塔

その後は、ひたすら上りが続く。石段には瓢箪(ひょうたん)や徳利(とっくり)など33個の彫り物が刻まれていて、全て見付けると願いがかなうとされる。これを探しながら上っていけば、つらさが紛れるかもしれない。途中には、休憩のための茶屋もある。

長く険しい石段を上り切ると、そこに三神合祭殿が姿を現す。中央に月山神社、右に出羽神社、左に湯殿山神社を祀る日本屈指の巨大な社殿で、厚さ2.1メートルの分厚い茅葺(かやぶき)屋根、総漆塗りの内部は見応えがある。月山神社の主祭神は、月の化身とされる月読命(つくよみのみこと)で、「月を読む」の名前の通りに暦をつかさどる。出羽神社は、出羽の地主神である伊氏波神(いではのかみ)、湯殿山神社は大いなる山の神である大山祇命(おおやまつのかみ)を祀る。

合祭殿前にある鏡池は、平安時代から参拝者が銅鏡を奉納し、数百枚が埋納されていることからそう呼ばれるようになった。1年間を通して水位があまり変化しないため、神秘的な力を持つ池として古くから信仰を集めていたという。

日本屈指の巨大な社殿「三神合祭殿」

交通アクセス:鶴岡市から庄内交通バス羽黒山行きで終点下車。所要時間50分。

文:戸矢 学
写真:中野 晴生
(バナー写真=三神合祭殿)