奈良「大神神社」:三輪山そのものを崇拝する最古級の神社

・横木のない独特の鳥居が目を引く
・本殿を持たず、ご神体である三輪山を礼拝
・三輪山では、飲食、喫煙、写真撮影が禁止

ご神体の三輪山を礼拝するための神社

奈良盆地の南東にある均整の取れた円すい形の三輪山(標高467メートル)は、古来より神宿る山として人々の信仰の対象とされてきた。その三輪山を神体山とする大神(おおみわ)神社(奈良県桜井市)は、「古事記」や「日本書紀」にも創建に関わる伝承が記されている、日本最古級の神社の一つである。本殿を持たず、拝殿からご神体である三輪山を礼拝する。拝殿前の鳥居は、左右に柱を立ててしめ縄を渡しただけで、横木さえ存在しない。自然物そのものを崇拝する、原始信仰の面影を強く残している神社だ。

三輪山

3世紀から始まる古墳時代には、近畿地方を中心とする政治勢力・大和王権が勢力をふるっていた。大神神社の祭祀(さいし)家である三輪一族は、大王(おおきみ)から「君(きみ)」の姓(かばね、王権との関係や地位を表す称号)を与えられていた。「君」は王権との結びつきが強い特別な位のため、三輪一族が信仰する三輪山は、最も尊い神山と考えられていた。

そのため、山内の一木一葉に至るまでを神宿るものとし、斧(おの)を入れることは許されなかったため、松、杉、ヒノキなどの大樹に覆われている。長らく禁足の地とされてきたが、明治以降は熱心な信者の要望に応える形で、登拝(とうはい)が認められるようになった。ただし、参拝証である白いたすきを首に掛け、御幣(ごへい)で自らおはらいをしなければ入山することができない。また山中では、飲食、喫煙、写真撮影の一切が禁止され、神の山に対する崇敬の気持ちを持つことが求められている。

三輪山登山口

生活全般の守護神を祀る

大神神社の主祭神は大物主大神(おおものぬしのおおかみ)。出雲の国の大国主命(おおくにぬしのみこと)の前に現れ、国造りを成就させるために力を貸すので「大和の三輪山の上に祀(まつ)るように」と、自ら三輪山に鎮まることを望んだとされている。

大神神社の摂社・檜原神社の三つ鳥居

大物主大神は、「大いなる物の主」として厄よけ、方位よけなど、生活全般の守護神として尊崇されている。また、「酒造りの神」としても知られ、酒造業者や酒屋の店頭に杉の葉を球状にかたどった「杉玉」をつり下げるのは、三輪山を覆う「三輪の神杉」の霊験にあやかろうというものだ。大神神社からも、多くの酒造業者に「しるしの杉玉」を授与している。拝殿と祈祷殿にもつるされている大杉玉も毎年秋に青々としたものに取り換えられる。

しるしの杉玉

●交通アクセス

JR桜井線(万葉まほろば線)「三輪駅」より徒歩約5

文:戸矢 学
写真:中野 晴生
(バナー写真=拝殿前の鳥居)

観光 神社仏閣 関西 神社 奈良 桜井市