「観自在王院跡」「無量光院跡」「金鶏山」を訪ねる:世界遺産 岩手・平泉

・「無量光院跡」で極楽浄土を思い浮かべる
・「観自在王院跡」の浄土庭園を散策する
・伝説が語り継がれる「金鶏山」に登る

浄土庭園の遺構「観自在王院跡」

11世紀末から12世紀に、人々の安寧を願い、地上に極楽浄土を表す国造りを行なった奥州藤原三代。世界遺産・平泉の構成資産の一つである「観自在王院跡(かんじざいおういんあと)」は、12世紀中頃に2代・基衡(もとひら)の妻が建立したと伝えられている寺院遺構だ。

観自在王院の建物は、1573年に兵火により焼失。その後荒廃して水田と化していたが、現在は発掘調査に基づいて浄土庭園が修復され、史跡公園として整備されている。鶴が翼を広げたような形の「舞鶴が池(まいづるがいけ)」を中心に、巨石を組み上げて荒磯(あらいそ)の風景を表した石組や、玉石を敷き詰めたこぢんまりとした州浜(すはま)などが見られ、浄土庭園として整えられていたことがうかがえる。池の北側には、御本尊の阿弥陀如来(あみだにょらい)を安置していた大阿弥陀堂跡と小阿弥陀堂跡などの遺構も残っている。

浄土庭園の修復・整備が進み、市民の憩いの場となっている観自在王院跡

DATA

  • 住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字志羅山地内
  • アクセス:JR平泉駅から徒歩8分。JR平泉駅から巡回バス「るんるん」で「毛越寺」下車、徒歩2
  • TEL:0191-46-4012(平泉文化遺産センター)
  • 営業時間:見学自由
  • 定休日:無休
  • 料金:無料 
  • 多言語対応:看板=英語

人々に極楽浄土を想像させた「無量光院跡」

春分、秋分には、本堂中心と「金鶏山(きんけいさん)」の山頂に夕陽が沈んだ(復元CG) 写真提供:平泉町教育委員会

「無量光院(むりょうこういん)」は、3代・秀衡(ひでひら)によって造営された。鎌倉時代前半を記した歴史書『吾妻鏡(あずまかがみ)』には「宇治の平等院に模す」と記述されており、日本の10円硬貨にも描かれている京都の「平等院鳳凰堂(びょうどういんほうおうどう)」をモデルに造られた荘厳な寺院であった。

境内の中心には池があり、その中島に本堂である阿弥陀堂が建っていた。阿弥陀堂の柱間(はしらま)の距離や、左右に伸びる翼廊(よくろう)の長さは平等院鳳凰堂を超える大きさだったという。阿弥陀堂の真西には金鶏山があり、春分、秋分の夕刻には、建物の背後にそびえる金鶏山の山頂へと沈みゆく夕陽が眺められた。その光景を眺めながら、当時の人々は西にあるという極楽浄土を思い描いたのであろう。

奥州藤原氏の滅亡後、無量光院は荒廃・消滅し、現在は池跡と中島、礎石(そせき)のみが残る。現在、「無量光院跡(むりょうこういんあと)」として史跡の発掘調査と周辺の整備が行なわれている。

現在、史跡公園として整備が進む無量光院跡

DATA

  • 住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字花立地内
  • アクセス:JR平泉駅から徒歩8分。JR平泉駅から巡回バス「るんるん」で「無量光院跡」下車すぐ
  • TEL:0191-46-4012(平泉文化遺産センター)
  • 営業時間: 見学自由
  • 定休日:無休
  • 料金:無料
  • 多言語対応:看板…英語/中国語(繁体)/韓国語

平泉を守る伝説が残る信仰の山「金鶏山」

標高98.6メートルの円錐状の山である金鶏山は、奥州藤原氏がその山頂に経塚(きょうづか)を営んだ信仰の地。平泉の平和を守るために、雄雌一対の黄金の鶏が埋められたという伝説も残っている。周囲には、中尊寺(ちゅうそんじ)、毛越寺(もうつうじ)、無量光院跡が点在しており、金鶏山は平泉の都市計画の基準点となったといわれている。

江戸時代、平泉を訪れた俳人・松尾芭蕉(まつおばしょう)が、この地で兄に追い詰められた源義経と奥州藤原三代の栄枯を思い、「夏草や兵どもが夢の跡」と詠ったことは有名である。1702年に刊行された紀行文『おくのほそ道』には、「秀衡が跡は田野に成て、金鶏山のみ形を残す」という言葉も記し、平泉の栄華を偲んでいる。

登山口から山頂までは徒歩約15分。急坂が続く

DATA

  • 住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字花立地内
  • アクセス:JR平泉駅から巡回バス「るんるん」で、「悠久の湯」下車、登山口まで徒歩5分、山頂へは徒歩15
  • TEL:0191-46-4012(平泉文化遺産センター)
  • 営業時間:見学自由
  • 定休日:無休
  • 料金:無料
  • 多言語対応:看板…英語

●周辺情報
平泉文化遺産センター

平泉の歴史をパネルを使い時系列で紹介 写真提供:平泉文化遺産センター

金鶏山の麓にある「平泉文化遺産センター」は、世界遺産に登録された資産を中心に平泉の文化遺産を映像やパネルで分かりやすく紹介するガイダンス施設。奥州藤原三代が築いた平泉をジオラマと映像で再現した展示などがあり、史跡を訪れる前の予習として見学するのがおすすめだ。

DATA

  • 住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字花立44
  • アクセス:JR平泉駅から巡回バス「るんるん」で、「平泉文化遺産センター」下車すぐ
  • TEL:0191-46-4012
  • 営業時間:9:0017:00(最終入館は16:30
  • 定休日:年末年始、展示替え期間(HPで要確認)
  • 料金:無料
  • 多言語対応:公式ホームページ…全103カ国語サイト翻訳にて対応 パンフレット…英語/中国語(簡体・繁体)/韓国語、施設内案内表示…英語/中国語/韓国語、音声ガイド…英語/中国語/韓国語

取材・文・写真=シュープレス
(バナー写真=浄土庭園が修復された「観自在王院跡」)

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