「高館義経堂」「達谷窟毘沙門堂」「骨寺村荘園遺跡」:岩手・平泉の奥深い歴史を知る

・「高館義経堂(たかだちぎけいどう)」で源義経をしのぶ
・岩壁に貼り付くように建つお堂「達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)」
・中世の農村景観が今も残る「骨寺村荘園遺跡(ほねでらむらしょうえんあと)」

悲劇の武将・源義経が最期を迎えた「高館義経堂」

鎌倉幕府を興した源頼朝の異母弟である源義経は、父・義朝が平治の乱(115960年)で殺害されたため、幼少期から逃亡生活を送った。一時は京都の鞍馬寺に預けられていたが、僧になることを拒否して出奔。元服後には奥州藤原氏の3代・秀衡(ひでひら)の庇護(ひご)を受けて平泉で暮らした。

1180年、流罪となっていた頼朝が平氏(へいし)打倒の兵を挙げると、義経は平泉から兄の元へ駆けつける。本拠地の鎌倉で地盤固めに専念する兄の代わりに最前線で活躍し、壇ノ浦の戦い(だんのうらのたたかい)で平氏を滅亡させるなど軍功を上げた。しかし、頼朝の許可を得ずに朝廷から官位を受けたことなどで怒りを買う。義経は再び秀衡を頼り、平泉へと落ち延びた。

1689年に高館を訪れた俳人・松尾芭蕉が、「夏草や 兵どもが 夢の跡」と詠んだ

義経が秀衡から与えられた居館「衣川館(ころもがわのたち)」は、北上川に面した丘陵「高館(たかだち)」にあったといわれる。1187年、秀衡は「源義経を大将とし、息子たちは力を合わせて源頼朝と戦いなさい」という言葉を残し、この世を去った。

しかし、その遺言が守られることはなかった。1189年、頼朝からの圧力に耐えられなくなった4代・泰衡(やすひら)は、この地で義経を襲撃し、妻子とともに自害に追い込んだ。恭順の意を見せた奥州藤原氏だったが、頼朝の大軍が押し寄せた奥州合戦によって、同年に滅亡している。

源義経の木像

高館は判官館(はんがんだて、ほうがんだて)とも呼ばれている。1683年、4代目仙台藩主・伊達綱村(だて・つなむら)が、非業の最期を遂げた義経をしのんで義経堂(ぎけいどう)を建てた。堂内には義経の木像が安置されており、毛越寺の飛び地境内として管理されている。

DATA

  • 住所:岩手県平泉町柳御所14
  • アクセス:JR「平泉駅」からタクシーで約5
  • TEL:0191-46-3300
  • 営業時間:午前8時30分~午後4時30分(冬季は午後4時まで)
  • 定休日:無休
  • 料金:大人200円、小・中学生50

平泉最古の寺院「達谷窟毘沙門堂」

懸崖(けんがい)造りの達谷窟毘沙門堂

征夷大将軍・坂上田村麿(さかのうえのたむらまろ)が、東北地方の蝦夷(えみし)を平定した戦勝記念に建てたと伝わる、達谷西光寺(たっこくせいこうじ)の「達谷窟毘沙門堂」。801年、京都・清水寺(きよみずてら)の舞台を模して、断崖の壁面にぴったりと沿うように造営された。お堂には、戦の守護神である毘沙門天(びしゃもんてん)を108体祀(まつ)っていたという。

その後、兵火などによる焼失と再建を繰り返し、現在のお堂は1961年に再建されたもの。堂内には、さまざまな時代につくられた毘沙門天が30体ほど安置されている。

巨大な岩面大仏

毘沙門堂の西には、岩に刻み込まれた3.6メートルの磨崖仏(まがいぶつ)「岩面大仏」が今も残る。大日如来とも阿弥陀如来ともいわれ、頼朝や義経の曾祖父(そうそふ)である源義家(よしいえ)が、11世紀後半に起こった「前九年の役(ぜんくねんのえき)」と「後三年の役(ごさんねんのえき)」で戦死した人々を供養するために刻んだと伝わる。

DATA

  • 住所:岩手県平泉町平泉北沢16
  • アクセス:JR「平泉駅」からタクシーで約10
  • TEL:0191-46-4931
  • 開館時間:午前8時~午後5時(冬季は午後4時30分まで
  • 定休日:無休
  • 料金:大人300円、中・高校生100

●周辺情報
骨寺村荘園遺跡

中世からの日本の農村風景が広がる「骨寺村荘園遺跡」 写真提供:岩手県

平泉町から車で約30分の一関市厳美(げんび)町にある本寺地区は、かつて「骨寺村(ほねでらむら)」と呼ばれた。平安時代末期から室町時代初期までの約300年にわたって、中尊寺経蔵別当(きょうぞうべっとう)の荘園だった地域である。

中尊寺には、中世に描かれた2枚の絵地図「陸奥国骨寺村絵図(むつのくにほねでらむらえず)」が現存する。それと照合すると、景観は今も大きく変わることなく残っていることが分かる。美しい田園や曲がりくねった水路など、穏やかな農村風景から中世の荘園の様子を思い描ける貴重な遺跡だ。

DATA

  • 住所:岩手県一関市厳美町本寺地区
  • アクセス:JR一関駅から岩手県交通バス「厳美渓・瑞山線・須川温泉線」で約35分、「塚(骨寺村荘園交流館前)」下車すぐ
  • TEL:0191-33-5022 骨寺村荘園交流館(若獅子亭)
  • 開館時間:骨寺村荘園交流館は午前9時午後5時 ※許可なく田畑や屋敷内への立ち入り禁止
  • 定休日:火曜、年末年始
  • 料金:無料 

取材・文・写真=シュープレス
(バナー写真=断崖にせり出すように建てられた「達谷窟毘沙門堂」)

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