【坂道】 ライカ北紀行 —函館— 第2回

学生のころ夏休みに、上野駅から夜行列車と青函連絡船を乗り継ぎ、はるばる帰って来た、と函館山を見あげる。ふもとには幾筋もの坂道—その美しさと懐かしさに感動した覚えがある。

幾度かの大火の教訓から、火止めのために港から函館山にむけて広く真っすぐな坂道をつくりあげた。主な坂でも18ある。基坂、八幡坂、二十間坂、チャチャ登り、大三坂……

坂には、開港以来の歴史とドラマがつまっている。坂のそばに住む英国の商人ブラキストンが朝食中に、官軍の軍艦から撃たれた砲弾が食卓テーブルの上を滑りクロスをかっさらって、度肝を抜かれたという。

春の大三坂 (2010)

坂道のなかで僕が好きなのは、大三坂。

鐘の音がひびく元町のカトリック教会を横目に石畳の坂を下がると和洋折衷の建物がそこかしこ、これぞ函館といった風情で「日本の道100選」に選ばれたのも宜なるかな。一息つきたければ、伝統的建造物を改修した大三坂ビルヂング1階のカフェ「She told me」で珈琲をすすれば、ニューヨークはイーストヴィレッジに浸っているかの如くとなる。

函館の坂道を今いちど、一つひとつ上ったり下ったりして自分の足で古里をあらためて感じたいと思っている。

大三坂ビルヂング1階のカフェ「She told me」の店内
大三坂ビルヂング1階のカフェ「She told me」

冬の大三坂 (2017)

●道案内
大三坂 市電 「十字街」下車 徒歩5分 (地図

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