【舶来居酒屋 杉の子】ライカ北紀行 —函館— 第8回

学生のころ、函館駅前の柳小路で、フィズ類を口あたりの良さに総なめにして、二日酔いならぬ三日酔いとなった。ジンフィズにはじまりモカ、バナナ……。もちろん腰がぬけた。函館が鮭鱒の北洋漁業景気にわき、この通りも夜ともなれば千鳥足がそこかしこ。遠い昔のことになる。

往時の柳小路(2010)

昭和の最盛期、柳の葉がゆれるこの小路で、果物屋のバナナ倉庫だった建物を借りて開業した舶来居酒屋「杉の子」。2年ほどまえ再開発のあおりで近くに移転したが、60年あまりの時をきざんで今も健在だ。

ラム酒の炭酸割り・ラムハイは開業当初から人気で、一杯60円が今は250円となったが、ご時世からいえば懐にやさしい。店主・青井元子さんの笑顔も素敵だ。

杉の子(2014)

10年ほどまえの夏、初代店主・杉目泰郎がまだ現役のころ、大学生と組んで港の旧桟橋に、一夜だけの杉の子を開いた。僕もかけつけ、開港場の雰囲気を味わい、潮風に吹かれる心地良さに酔った。店主の心意気や良し。二代目もその気質をひきついでいる。

●道案内
市電 「函館駅前」下車 徒歩4分(地図

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