【貴人たちの函館山】　ライカ北紀行 —函館— 第13回

函館の夜景は香港よりもすばらしい、とぽつりともらした、マハティールさん。マレーシアの首相として活躍していた60代後半ごろに、函館山をご案内したときのことだ。

函館山の夜景（2005）

お忍びで、奥さま、秘書官など6人とマイクロバスでやって来た。「欧米ではなく日本に学べ」とルックイースト政策により国力を成長させた方が、まったく飾らない風情。眼前にまみえる幸せを思った。

夜景を背に記念写真を所望され、みずからお立ち台に上がられた。観光客いっぱいの山頂で、誰ひとり首相ご本人とは気がつかなかった。

首相マハティール（1992）

皇太子徳仁親王が函館山ロープウェイに乗られた際、ご案内したことがある。ゴンドラのなかで、英国のオックスフォード大学留学中にアルプス山中を巡ったことを懐かし気に語り、実に自然体でフレンドリーな方だと思った。

偶然手に取った御書『テムズとともに』のなかで、2年間の大学と学生寮の生活を語っていた。アイロン掛けやすきま風の目張りもみずからやり、しかも普段着はジーンズなどのラフな格好。街なかで偶然出会った日本の若い女性に、「ウッソー！」と言われたとか。

「火星ちゃん」の愛称で親しまれる常陸宮正仁親王が函館山に登られたとき、展望台から指さし、「あれが津軽半島だよ」と、傍らの津軽にルーツをもつ華子さんに話しかけて、思いやりの深い人と知った。

2018年春、マハティールさんは92歳で首相に返り咲き、今春、徳仁親王は天皇に即位される。函館山に登るたびに、貴人たちの飾らぬ姿を思いだす。

奥さまに腕を（1992）

●道案内
函館山ロープウェイ山麓駅　市電「十字街」下車、徒歩10分（地図）

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