【焼きピロシキ】まるたま小屋 ライカ北紀行 —函館— 第16回

曲がりくねり、石畳の欠けた坂道の先に広場があった。露店の八百屋、魚屋、パン屋、バルなど……生活感にあふれている。そこから裏小路へ入り、青いタイルと花でいっぱいの白い家とパティオをのぞきこんだ。スペインはグラナダの旧市街、アラブ人がきずいた世界遺産アルバイシン。その路地裏で、函館の坂道の裏小路を思った。

まるたま小路
まるたま小路

元町の細長い裏小路。坂沿いに築80年の長屋7軒が連なる一角が、「まるたま小屋」だ。先ずは焼きピロシキ。“塩バターリンゴ”を一口がぶり、美味い。同じものを、もう一つ頼んだ。ロシアの女の子が、国で食べるよりおいしいとびっくりしていた、と手作りした店主の北見伸子さん。店は、主の人となりをあらわす。かろやか、のびのび、自由で心地よい。ピロシキ一個とお茶一杯で思わず長っ尻になる。この小屋には日本人、外国人さまざまな個性がつどう。奇人、変人も。

まるたま小屋(2017)
まるたま小屋(2017)

1年ほどまえ、お店に迷い人来たり。英語が話せる? ボルシチが食べられる? 無料のキャンプ場ある? と三つの“?”を連発したフランス男は40代のバックパッカー。日本縦断途上で、ひげ面の顔がかなりやつれている。心配だから店の2階に泊め、北見さんは酒とご飯で歓待した。日本に来なきゃよかった、なんて思わせたくない、おいらの名にかけても、という主の心意気なり。翌日、彼は、北ではなく南の佐渡島へむかった。

空き家が増えつづける西部地区を、ロサンゼルスの高級住宅地ビバリーヒルズにしようと函館市が打ちあげた。再開発は良い考えだが、路地裏がポイントだ。古びているが魅力的な小路がところどころ散在している。きれいに整備しただけでは旧と新、和と洋が入り交じる佇まいに欠け、元町の味わいが失われる。水清ければ魚棲まず。淀みも必要なのだ。住民と話し合い、路地裏の魅力をふかめ、人をひきつける空間の再開発が好ましい。

人生にはいろんな坂ある。上り坂に下り坂、‟まさか”まであるとか。アルバイシンの坂を上り下りして迷いこんだ小路から、アルハンブラ宮殿がまさかに垣間見えた。この思わぬがいい。元町の裏小路にも思わぬ仕掛けが増えれば楽しい。

焼きピロシキ。ロシア人が好む・さけクリームチーズ
焼きピロシキ。ロシア人が好む・さけクリームチーズ

●道案内
函館山ロープウェイ「山麓駅」より、徒歩1分(地図へ

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