【東海の小島の磯】石川啄木 ライカ北紀行 —函館— 第39回

天気が良いので、コンブ、イカ、ウニの匂いがただよう大森浜の砂をふんで、啄木小公園から函館山へむかってそぞろ歩いた。目に飛びこんできたのは、浜辺にたつ白亜の館。陽の光に輝いている。まるで、“エーゲ海の白い宝石”といわれるミコノス島の白いペンキを塗りたくった家のようだ。いきなり現れたギリシャにどっきり。

ルルーディー“花”(2009)
ルルーディー“花”(2009)

真っ白に輝く館は、ヘア&メイク「ルルーディー Luluwdy」。店の名前は、ギリシャ語で“花”を意味するとか。白髪頭の“枯れ氏”でも散髪、いやカットしてもらえるだろうか。お洒落な店のなかを思い浮かべては、いつも入ろうか否か、迷っている。

ルルーディー 屋上
ルルーディー 屋上

石川啄木は、大森浜の浜辺を散策して『一握の砂』を詠んだ。

東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる
―我を愛する歌

潮かをる北の浜辺の
砂山のかの浜薔薇(はまなす)よ
今年も咲けるや
―忘れがたき人人

大森浜
大森浜

浜辺の潮騒のなか、啄木のつぶやきが聞こえた—小さな蟹は足元を這いまわるが、あの砂山は消えてしまった。向うに見える白亜の館は何だ? ここは、エーゲ海の浜辺か。はて、東海の小島の磯をどう歌うか……。思案のしどころだな……。

啄木、何を想う(啄木小公園、2020)
啄木、何を想う(啄木小公園、2020)

●道案内
啄木小公園 バス「啄木小公園前」から徒歩1分(地図へ

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