【雪見灯籠】 ライカ北紀行 —函館— 第55回

歴史

10年近くまえ、夜中に大雪が降りつもり、朝方には晴れあがって、函館公園に出かけたことがある。この公園には好きなものが二つあり、その雪をかぶった姿形を目にしたかったのだ。

1884(明治17)年に開場した旧函館博物館2号(有形文化財)。玄関にはコリント様式の柱と半円形のアーチがしつらえられている。ときおり雪が降りそそぐ。雲間から陽がもれるたびに真っ白い外壁に樹の影が映え、その白と影のコントラストが変化。130年あまりの時を刻んだ優美な博物館が、ますます美しくみえる。

有形文化財の旧函館博物館2号(2020)
有形文化財の旧函館博物館2号(2020)

そのそばに、灯籠が鎮座している。雪を頭にのっけた姿が良い雪見灯籠だ。まさに雪見。この和の灯籠と洋の博物館が和洋折衷の美を放っている。京都・桂離宮の岬灯籠にも目を見はったが、それに匹敵する品格と情緒がある。

旧函館博物館2号(奥の白い建物)のすぐそばにある灯篭
旧函館博物館2号(奥の白い建物)のすぐそばにある灯篭

1879(明治12)年、当時の函館駐在英国領事リチャード・ユースデンの勧めにより、函館の豪商渡辺熊四郎などが金や石灯籠などを寄付し、市民はモッコをかつぎ、この公園は開園した。

140年ほどまえ、日本で最も早い時期に築かれた洋式公園の一つで、函館山のふもと、津軽海峡をのぞむ高低差のある景勝の地にある。開拓使が博物館を、さらに函館市が図書館などの教育文化施設を充実させていった。

函館公園内にあるベンチに降り積もった雪が座布団のようになった
函館公園内にあるベンチに降り積もった雪が座布団のようになった

早朝のせいか園内には人っ子一人いない。公園そばのフレンチレストラン・唐草館も雪に囲まれていた。しばらくご無沙汰している。近々、公園散歩の帰りにランチをご馳走になろう。

●道案内
函館公園
 市電「青柳町」下車、徒歩3分(地図へ

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