【昆布愛】ライカ北紀行 ―函館― 第68回

コーヒータイムのおともに昆布村の「リンコ」をつまんでポリポリと楽しんでいる。リンゴ・マンゴーなどの乾燥果実、ほそ切りの真昆布・がごめ昆布、クコの実がミックスされたおやつ。甘さと塩味がまじりあい、柿の種のごとく食べだしたら止まらない。 

函館市街から40分ほどの南茅部(みなみかやべ)は真昆布の名産地。前浜でそだち、身があつく、切り口が淡いクリーム色の白口(しろぐち)浜昆布は、品のある澄んだダシがとれる。古くは松前藩により朝廷や将軍家への献上昆布となった。

函館近海でとれるがごめ昆布は、表面が凸凹で「かごの目」のようなところから、そう呼ばれるようになった。ネバネバ感があるためダシがとれず、海の雑草扱いであった。だが、がごめ昆布に含まれる栄養素がこのところ健康と美容の食材として注目され商品化がすすむ。

水産加工業をいとなむ義父の会社が整理となり、能戸圭恵(たまえ)さんは新たなスタートを切った。昆布村(能戸フーズ)は、商品の企画・販売に専念し、販売はネットを主に、素材の加工は外注する。

昆布村のギフトセット。左端がギフト大賞を受賞したごめ昆布しょうゆ(2021)
昆布村のギフトセット。左端がギフト大賞を受賞した、がごめ昆布しょうゆ(2021)

それから3年、すべて北海道産の素材に替え、まろやかさとコクのある「天然がごめ昆布しょうゆ」は、「日本ギフト大賞2016北海道賞」にかがやいた。たまえ節が花ひらく。

これをバネに、昆布が入った自然のおやつ「ナツコ」、「リンコ」など商品の幅をひろげていった。これには、村を支える女性スタッフの目線が大きな力に。漁ともなると彼女たちの家族は昆布をとり、みずからも昆布干しに精をだす昆布愛がある。 

能登フーズ代表の能戸さん。函館生まれ、4人の子を持つ母 。前にあるのがおやつのナツコとリンコ(2021)
能戸フーズ代表の能戸さん。函館生まれ、4人の子を持つ母 。前にあるのがおやつのナツコとリンコ(2021)

ところで、昆布村のうら手、じゃがいも畑で発掘された中空(ちゅうくう)土偶が、2007年、北海道唯一の国宝となる「カックウ」(南茅部の「茅(カヤ)」と中空土偶の「空(クウ)」を合わせた愛称)となった。この辺りは、縄文の世から海と陸の自然のめぐみがゆたか。

義母が作ってくれた天然昆布の汁。この汁の味わいの深さで、南茅部へ嫁ごうと思ったと能戸さんは話してくれた。しかも、地元の人々は、一家総出で働きものぞろい。これほど良い里はあるだろうかと。

がごめ昆布の幟(のぼり)がはためく昆布村の店舗前に立つ能戸さん(2021)
がごめ昆布の幟(のぼり)がはためく昆布村の店舗前に立つ能戸さん(2021)

●道案内
昆布村 函館市街から車で40分(地図へ

「ライカ北紀行 —函館—」作品一覧はこちら

観光 北海道 ライカ北紀行 函館 真昆布 がごめ昆布 南茅部