写真で楽しむ九州の国立公園(南部編):青く透明な海と緑豊かな山々が美しい屋久島や奄美群島

海に囲まれた九州には活火山が点在し、波に浸食された海岸線と荒々しい山容が雄大な景色を織りなし、海上に浮かぶ多くの島々、火山の恵み・温泉の湯けむりがアクセントを加える。九州[南部]にある国立公園を絶景写真で紹介していく。

霧島錦江湾国立公園(鹿児島県、宮崎県)

中央左下が霧島山最高峰の韓国岳で、右が火口湖の大浪池(おおなみのいけ)。左奥には、新燃岳(しんもえだけ、標高1421m)と高千穂峰が見える © K.P.V.B
中央左下が霧島山最高峰の韓国岳で、右が火口湖の大浪池(おおなみのいけ)。左奥には、新燃岳(しんもえだけ、標高1421m)と高千穂峰が見える © K.P.V.B

霧島山は、天孫降臨の地と伝わる霊峰・高千穂峰(たかちほのみね、標高1574 m)や最高峰の韓国岳(からくにだけ、標高1700m)などで構成される火山群で、宮崎と鹿児島の県境にまたがる。その周辺地域を含む「霧島国立公園」は、1934(昭和9)年に日本で初めて指定された3カ所の国立公園の1つ。30年後には錦江湾国定公園と屋久島地域を編入して「霧島屋久国立公園」となったが、2012(平成24)年に「屋久島国立公園」が分離し、現在の「霧島錦江湾国立公園」が誕生した。

北部の霧島地域には大小20以上の火山が連なり、火口湖や温泉の湯けむり、高原の植物が雄大な風景を織りなす。神話の舞台である高千穂河原や霧島神宮、霧島温泉には、多くの観光客が訪れる。

日本神話に登場する「天の逆鉾(さかほこ)」が突き立つ高千穂峰の山頂 写真:PIXTA
日本神話に登場する「天の逆鉾(さかほこ)」が突き立つ高千穂峰の山頂 写真:PIXTA

紅葉の名所・大浪池から韓国岳を望む © K.P.V.B
紅葉の名所・大浪池から韓国岳を望む © K.P.V.B

6世紀の創建と伝わる霧島神社は、観光客に人気のパワースポット © K.P.V.B
6世紀の創建と伝わる霧島神社は、観光客に人気のパワースポット © K.P.V.B

錦江湾の象徴といえば、現在も噴煙を上げる桜島だ。県庁所在地・鹿児島市の対岸にあり、都市空間と活火山の共演を至る所で見ることができる。桜島フェリーで海を渡り、噴火の歴史やメカニズムが学べる桜島ビジターセンターや桜島溶岩なぎさ公園、展望所などを巡れば、火山の息吹が間近に感じられる。

九州本土最南端・佐多岬には亜熱帯性植物が多く生育し、西側の薩摩半島南端では開聞岳や知林ヶ島など、独特の風情を持つ景観が広がる。

(指定:1934年3月16日、面積:3万6586 ha)

上空から見た錦江湾に浮かぶ桜島と鹿児島市の沿岸部 © K.P.V.B
上空から見た錦江湾に浮かぶ桜島と鹿児島市の沿岸部 © K.P.V.B

早春の島津家別邸・仙巌園から桜島を望む © K.P.V.B
早春の島津家別邸・仙巌園から桜島を望む © K.P.V.B

足湯に入りながら、ゆっくりと桜島が眺められる溶岩なぎさ公園 © K.P.V.B
足湯に入りながら、ゆっくりと桜島が眺められる溶岩なぎさ公園 © K.P.V.B

薩摩半島最南端・長崎鼻から臨む開聞岳 © K.P.V.B
薩摩半島最南端・長崎鼻から臨む開聞岳 © K.P.V.B

天気が良い日は、屋久島や種子島まで見渡せるという佐多岬。50メートル沖の大輪島にあるのは日本最古の灯台の一つ「佐多岬灯台」 © K.P.V.B
天気が良い日は、屋久島や種子島まで見渡せるという佐多岬。50メートル沖の大輪島にあるのは日本最古の灯台の一つ「佐多岬灯台」 © K.P.V.B

屋久島国立公園(鹿児島県)

コケに覆われた森の中を、いく筋もの清流が流れている屋久島の白谷雲水峡。写真は「もののけ姫の森」 写真:PIXTA
コケに覆われた森の中を、いく筋もの清流が流れている屋久島の白谷雲水峡。写真は「もののけ姫の森」 写真:PIXTA

佐多岬から南へ約60キロに位置し、1993年にユネスコの世界自然遺産に登録された屋久島。その山岳部を中心とした地域に加え、西南西へ12キロの海上に浮かぶ口永良部島(くちのえらぶじま)で構成されるのが「屋久島国立公園」である。

屋久島は周囲約130キロの島ながら、九州最高峰の宮之浦岳(標高1935m)を筆頭に、永田岳(標高1886m)や黒味岳(標高1831m)など1000メートルを超える峰が約40も連なり、“洋上アルプス”と称される。年間を通して温暖な海辺からは寒暖差が大きく、雨も多いことから植生が豊か。特に「縄文杉」を代表とする屋久杉は、標高500メートル以上に自生し、日本固有種・スギの中でも最南端、最大の群落である。

九州最高峰の宮之浦岳は、春にはヤクシマシャクナゲやアセビで彩られ、冬には雪を冠する 写真:PIXTA
九州最高峰の宮之浦岳は、春にはヤクシマシャクナゲやアセビで彩られ、冬には雪を冠する 写真:PIXTA

樹齢2000年以上で屋久杉最大の縄文杉 写真:九州観光推進機構
樹齢2000年以上で屋久杉最大の縄文杉 写真:九州観光推進機構

雨が多い屋久島の山には、清流と名瀑(めいばく)が多い。写真は落差88メートルの大川(おおこ)の滝 © K.P.V.B
雨が多い屋久島の山には、清流と名瀑(めいばく)が多い。写真は落差88メートルの大川(おおこ)の滝 © K.P.V.B

ウミガメの産卵地として知られている人気ビーチ・永田いなか浜 写真:PIXTA
ウミガメの産卵地として知られる人気ビーチ・永田いなか浜 写真:PIXTA

口永良部島は面積約36平方キロメートルの小さな火山島。2つの火山群をつないだひょうたん型で、東側の新規火山群地域では、最高峰の古岳(標高657m)や活発な噴火活動を続ける新岳(標高626m)がダイナミックな火山景観を生み出している。海岸線は波に削られ、海食崖や洞穴など変化に富んだ地形が見もの。

(指定:2012年3月16日、面積:2万4566 ha)

海上から浸食崖の向こうに、煙を上げる新岳と古岳(右)を望む 写真:PIXTA
海上から浸食崖の向こうに、噴煙を上げる新岳を望む 写真:PIXTA

古岳の西麓から、照葉樹林の奥に島西部の番屋ヶ峰を眺める 写真:PIXTA
古岳の西麓から、照葉樹林の奥に島西部の番屋ヶ峰を眺める 写真:PIXTA

奄美群島国立公園(鹿児島県)

雄大なマングローブ群生地と奄美の山々 © K.P.V.B
雄大なマングローブ群生地と奄美の山々 © K.P.V.B

「奄美群島国立公園」は、2017年に指定された最も新しい国立公園。鹿児島県南端に浮かび、奄美大島から南へ、加計呂麻島、徳之島、沖永良部島、与論島などが続く。“アマミンブルー”と称される青く澄んだ海に囲まれる島々は、亜熱帯照葉樹林に覆われ、固有で希少な動植物が生息する。人々の生活も独自性が強く、島唄や豊年祭など地域の伝統文化が受け継がれている。

奄美大島は、群島最高峰の湯湾岳(標高694m)がそびえ立ち、“生きた化石”といわれるヒカゲヘゴが群生する金作原(きんさくばる)原生林や住用マングローブ林など緑豊かな島。加計呂麻島との間にある大島海峡は、入り組んだリアス海岸で夕日の名所だ。

原始時代を想起させる金作原原生林のヒカゲヘゴ 杉 写真:九州観光推進機構
原始時代を想起させる金作原原生林のヒカゲヘゴ 写真:PIXTA

奄美の人気スポット「ハートロック」。干潮時に出現する 写真:PIXTA
干潮時に出現する奄美の人気スポット「ハートロック」 写真:PIXTA

大島海峡の夕景。加計呂麻島方向に太陽が沈んでいく 写真:PIXTA
大島海峡の夕景。加計呂麻島方向に太陽が沈んでいく 写真:PIXTA

五穀豊穣(ほうじょう)を祈願する秋名集落の平瀬マンカイ © K.P.V.B
五穀豊穣(ほうじょう)を祈願する秋名集落の平瀬マンカイ © K.P.V.B

2番目に大きい徳之島には、リーフに囲まれた白い砂浜の畔海岸や巨大な花崗岩(かこうがん)が連なるムシロ瀬、断崖が続く犬田布岬と景勝地がそろう。沖永良部島のサンゴ礁の洞穴・フーチャ、与論島の沖合に干潮時だけ出現する百合ヶ浜など絶景ポイントがめじろ押しの地域だ。

(指定:2017年3月7日、面積:4万2181 ha)

徳之島のムシロ瀬は、壮大な風景。海岸近くには、大島紬(つむぎ)の染料に使う車輪梅(シャリンバイ)が群生する © K.P.V.B
徳之島のムシロ瀬は、壮大な風景。海岸近くには、大島紬(つむぎ)の染料に使うバラ科の低木・車輪梅(シャリンバイ)が群生する © K.P.V.B

波が作る砂紋が美しい百合ヶ浜は、人気のシュノーケリング・ポイント © K.P.V.B
波が作る砂紋が美しい百合ヶ浜は、人気のシュノーケリング・ポイント © K.P.V.B

バナー写真:与論島のビーチ  © K.P.V.B

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