京都観光を快適にする交通手段ガイド:「嵐電」「叡山電鉄」「嵯峨野トロッコ列車」編

日本最大の観光地・京都には、JRや地下鉄を中心にさまざまな鉄道路線があるが、今回は中心部から少し離れた観光名所を走るローカル線を紹介したい。嵐山(あらしやま)周辺をお得に回れる「嵐電(らんでん)」、洛北(らくほく)観光に便利な「叡山電鉄」、保津峡の景色が楽しめる「嵯峨野トロッコ列車」の3路線を上手に利用すれば、より趣深い京都を楽しむことができるだろう。

嵐山から周辺観光に向かうのに最適

歴史ある寺院があるのはもちろんのこと、渡月橋や竹林といった京都らしい風景に出会えることで知られる嵐山。春は桜、秋は紅葉が美しいことで名高い。そんな京都を代表する観光地をじっくりと楽しむなら、「嵐電」の利用がおすすめだ。

嵐電は、「嵐山駅」から「四条大宮駅」までの嵐山本線と、途中駅の「帷子ノ辻(かたびらのつじ)駅」から「北野白梅町駅」まで伸びる北野線という2つの路線がある。1910(明治43)年に「嵐山電車(らんざんでんしゃ)」として嵐山本線が開通したため、その名残で「あらでん」ではなく「らんでん」という名称が使われている。

京都駅から嵐山観光へ向かう場合、JR嵯峨野線(山陰本線)に乗れば「嵯峨嵐山駅」まで約15分で行ける。まずは、そこから渡月橋や竹林の道、世界文化遺産に登録される天龍寺(てんりゅうじ)などを観光した後、嵐山駅から嵐電沿線巡りをスタートさせると効率的だろう。

嵐山を巡るのに便利な嵐電(らんでん)

渡月橋や竹林など、嵐山ならではの景色にたくさん出会える

嵐山本線の沿線は、車折神社や広隆寺、東映太秦映画村など観光スポットがたくさんある。北野線沿線には、仁和寺(にんなじ)と龍安寺(りょうあんじ)という世界遺産に登録される2つの寺や広大な妙心寺がある。終点の北野白梅町駅からは北野天満宮が近く、20分ほど歩けば金閣寺まで行くこともできる。

見どころが点在する嵐電沿線を巡るなら、大人500円で購入できる「嵐電1日フリーきっぷ」を利用したい。1回の乗車は均一料金で220円のため、3回以上乗車するならお得になる計算だ。購入できる駅は限られているが、無人駅から乗車した場合でも、主要駅で駅員に伝えてから1日券を購入すれば、そこまでの運賃は無料になる。他にも「バス(市バス・京都バス)・嵐電一日券」(大人1100円)や「京都 地下鉄・嵐電1dayチケット」(大人1100円)など多種類の切符が販売されていて、沿線の寺院や観光施設の割り引き特典もあるので、公式ホームぺ時などで事前にチェックしておきたい。

嵐電1日フリーきっぷ

【DATA】

「嵐電1日フリーきっぷ」

  • 料金:大人500円、小児250円
  • 販売場所:四条大宮駅、帷子ノ辻駅、嵐山駅、北野白梅町駅、「らんでんや」金閣寺道、一部ホテル
  • 公式サイト:http://randen.keifuku.co.jp/ticket/
  • 多言語対応:HP=英語/中国語(繁体中文)

世界文化遺産に登録される仁和寺

洛北観光には、叡山電鉄を利用したい

最近はパワースポットとして人気の鞍馬寺や縁結びで有名な貴船神社、そして世界文化遺産に登録される比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)などがある京都の山里エリア「洛北」。魅力あふれる洛北観光に向かうなら、京阪本線で「出町柳駅」まで行き、そこからは叡山電車、通称「叡電(えいでん)」を利用するのが便利である。叡電は「宝ヶ池駅」から、貴船・鞍馬(くらま)方面への鞍馬線と、八瀬・比叡山方面への叡山本線の2つに分岐する。

こちらも、1日乗車券「えぇきっぷ」(大人1000円)を利用するのがお得だ。何度も乗り降りできるだけでなく、提示すると拝観料が優待料金になる寺社や、料金が割り引きされる飲食店や土産屋なども沿線に多数ある。

叡電1日乗車券「えぇきっぷ」

鞍馬線の展望列車「きらら」は、車内からの眺望を確保するためにガラス面を広く取り、窓に向いて座る席も設置されている。秋には大きな窓越しに、美しい紅葉が眺められると好評だ。

貴船・鞍馬方面へ向かう「きらら」

叡山本線には、2018年3月に新車両「ひえい」がデビューした。楕円系を基調とした斬新なデザインで、車外の行き先表示器は日本語の他に、英語、韓国語(ハングル)、中国語(簡体字)の4言語で表示される。

叡山電鉄の新車両「ひえい」

●叡山電鉄沿線の主な観光地
下鴨神社、詩仙堂、圓光寺、曼殊院(まんしゅいん)、修学院離宮、蓮華寺(れんげじ)、瑠璃光院(るりこういん)、妙満寺、実相院、貴船神社、鞍馬寺、比叡山延暦寺など

燈籠がズラリと並ぶ貴船神社の石段は訪日観光客に大人気

鞍馬寺の仁王門

【DATA】

叡電1日乗車券「えぇきっぷ」

  • 料金:大人 1000円(小児 500円)
  • 販売場所:出町柳駅、修学院駅事務所、鞍馬駅
  • 公式サイト:https://eizandensha.co.jp/good-value/
  • 多言語対応:HP=英語/韓国語/中国語(簡体中文・繁体中文)

片道25分で嵯峨野の四季楽しめるトロッコ列車

渡月橋がかかる大堰川(おおいがわ)の上流、保津川に沿って走るのが嵯峨野観光鉄道の「トロッコ列車」。JR山陰線の複線化により使用されなくなった線路を利用し、「トロッコ嵯峨駅」から「トロッコ亀岡駅」までを結ぶ。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色と、四季折々の保津峡の風景を楽しむことができる観光列車である。

観光列車「嵯峨野トロッコ列車」

5両編成の5号車「ザ・リッチ」は、床まで素通しの窓ガラスが無いオープン車両。列車からの景色をきれいに撮影したい人や、風を肌で感じたい人にはおすすめだ。

雨天の時は販売を中止するため、乗車券は窓口での当日販売のみ。人気車両のため、往復で乗車する場合、ザ・リッチの利用は片道のみに限られている。

窓ガラスがなく、撮影に最適な「ザ・リッチ」車両。天井も透明なアクリル板なのがうれしい

乗車券の予約販売は1カ月前から開始するが、11月中旬からの紅葉シーズンには予約受け付けから30秒で完売してしまうこともある。予約購入できなかった場合は、早朝からトロッコ列車駅の窓口に並ぶと当日券が比較的入手しやすい。

美しい保津峡渓谷沿いを走る

窓がないため、美しい風景写真が撮影できる

【DATA】

  • 料金:大人620円(小児 310円)※団体割引あり
  • 予約:乗車日の1カ月前の午前10時からJR西日本の主要駅にある『みどりの窓口』、全国の主な旅行会社など購入可能
  • 公式サイト:https://www.sagano-kanko.co.jp/
  • 多言語対応:HPー英語/韓国語/中国語(簡体中文・繁体中文)

取材・文=藤井 和幸(96BOX)
写真=黒岩 正和(96BOX)

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