紅葉で彩られる世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」

・趣深い合掌造りの民家に紅葉が映える
・日本の伝統的な山間部の生活が感じられる集落
・観光地としても整備され、内部を公開している民家がある

日本の原風景が秋色に染まる

ユネスコの世界文化遺産に登録される岐阜県北西部の白川郷と富山県南西部の南砺(なんと)市に属する五箇山は、共に庄川流域にあり、豪雪地帯として知られている。そのため、かやぶき屋根に雪が積もった冬の景色が特に有名だが、錦秋の姿も実に美しい。

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ライトアップされた冬の白川郷 写真:染瀬直人

両地域の特徴となるのが、合掌造りの民家が形成する集落だ。湿度が高く、重たい雪が降る山間部にあるため、積雪対策として、手のひらを合わせたような急傾斜の屋根となった。その大きな屋根裏部屋では、養蚕が盛んに行われていた。広い切妻(きりづま)には窓を設けやすく、風通しも確保されるので養蚕に向いているという。農業を行うための平地が少ない山あいの集落にとって、雪対策に加えて収入にもつながる合掌造りは一石二鳥の建物であっただろう。

五箇山の合掌造り民家。屋根側面の切妻が広く、大きな窓が作れるので養蚕には最適

1950年代以降に急速な変化を見せた日本の中で、住民たちの努力もあって合掌造りの建物が保存され、歴史ある山間部の生活や文化を今に伝える。1995年には、ユネスコの世界文化遺産に「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として登録された。現在は観光地としても整備され、白川村の調査では平成292017)年の観光入込客が176万人で、そのうち外国人観光客は前年比9%増の65万人と人気が高まっている。

集落の氏神・白川八幡神社も色づく

白川郷の合掌造りと紅葉を一望

白川郷の中心となる荻町集落では、10月中旬に色づき始め、下旬から11月上旬までが紅葉の見ごろとなる。「山から紅葉が下りてくる」と表現したくなるような染まり方で、山の頂上付近から赤や黄色になり、里の木々へと広がっていく。

天守閣展望台(城山展望台)と荻町城跡展望台からは、合掌造り集落を見渡すことができる。天守閣展望台には車でのアクセスが可能だが、道幅が狭いため、展望台行きシャトルバスを利用するのが便利。歩いて行くこともでき、白川郷バスターミナルから20分ほどで到着する。行きはシャトルバス、帰りは遊歩道でのんびりと集落に戻るのがおすすめだ。

天守閣展望台から望む錦秋の荻町集落

紅葉に染まる山を背景にすると趣がより深まる合掌造り

荻町合掌集落は、3時間ほどあれば一周することができる。内部を公開している民家、民宿や飲食店、土産物屋など、多くの合掌造りの家屋が点在しているので、のんびりと散策したい。

紅葉時期の一番の見ものは、11月上旬頃に行われる一斉放水。火災が多い冬に備えた放水訓練であるが、秋色の白川郷が水のカーテンに覆われる光景は圧巻だ。野外博物館の合掌造り民家園では、期間限定のライトアップも開催される。

地酒や土産などを扱う白川郷の山峡(やまあい)の家

 ●白川郷 交通アクセス

  • 名古屋駅から:岐阜バスの高速白川郷線で約2時間50分
  • 金沢駅から:北陸鉄道・濃飛バスの白川郷・金沢線で約1時間15分
  • 富山駅から:富山地方鉄道・濃飛バスの高山線で約1時間25分
  • 高岡駅から:加越能バスの世界遺産バスで2時間10分

のどかな山あいの生活がより濃く残る五箇山

五箇山とは、庄川沿いの5カ所の谷間(赤尾谷、上梨谷、下梨谷、小谷、利賀谷)の総称。その地域で世界遺産に登録されるのは、白川郷ICから東海北陸自動車道を北上して1つ目の五箇山IC近くにある菅沼集落と、そこから国道156号を北東に15分ほど走る相倉(あいのくら)集落である。

白川郷とほぼ同時に、五箇山にも紅葉シーズンが訪れる。色づいた山を背景に集落を歩けば、干し柿がつるされた合掌造りの家などから、昔ながらの日本の秋を感じることができる。

のどかな菅沼の合掌造り集落が紅葉で彩られる菅沼集落はわずか9棟の合掌造りからなり、各家屋の間隔が広いためのどかな印象を受ける。白川郷に比べて雪質がさらに重いとされる五箇山では、合掌造りの屋根はさらに急な勾配を持つという。

色あせた茶色のかやぶき屋根に紅葉が映える(菅沼集落)

相倉集落には23棟の合掌造りの家屋があり、ほとんどが今も生活の場として実際に使用されている。集落駐車場から坂道を5分ほど上ると展望台があり、オレンジに染まる山々に囲まれた集落を見渡すことができる。

集落の間をまっすぐ伸びる道が印象的な相倉

五箇山には2つの集落以外にも、国の重要文化財に指定される岩瀬家と村上家の合掌造りや、くろば温泉や民謡の里などの観光スポットがある。白川郷・五箇山の集落は人々が暮らしている場所なので、観光の際には以下のことに気を付けて出掛けてほしい。

●白川郷・五箇山観光の注意点

  • 集落内にごみ箱はほとんど設置されていないので、持ち帰るように
  • 合掌造りは火に弱い建物。所定外の場所での喫煙や歩きたばこは厳禁
  • 集落は住民の居住区なので、個人の敷地に入ったり、家の中をのぞいたりしない
  • 集落内は保存地区のため道路や水路に柵などがないので、通行には気を付ける 

白川郷・五箇山で最大、5階建て合掌造りの岩瀬家。7月に撮影

●五箇山 交通アクセス

  • 名古屋駅から:イルカ交通のきときとライナーで約2時間30分
  • 金沢駅から:北陸高速バスの高山線で約1時間
  • 富山駅から:あいの風富山線で高岡駅まで約20分、高岡駅から世界遺産バスで「相倉口バス停」まで約1時間20分
  • 相倉集落から菅沼集落:世界遺産バスで「相倉口バス停」から「菅沼」まで約15分
  • 菅沼集落から白川郷:世界遺産バスで「菅沼」から「白川郷(荻町)」まで約40分

取材・文・写真=黒岩 正和
(バナー写真=天守閣展望台から見下ろす秋の白川郷)

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