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宮沢賢治ゆかりのグルメを味わう:岩手県花巻市

宮沢賢治の故郷・岩手県花巻市では、賢治ゆかりのグルメを堪能できる。教師時代に通った「やぶ屋総本店」、設計した花壇が残る喫茶店「茶寮かだん」、童話をモチーフにした洋食店「山猫軒」などを紹介。

賢治が足しげく通ったそばの名店「やぶ屋総本店」

どっしりと重厚感のある玄関に歴史を感じる
どっしりと重厚感のある玄関に歴史を感じる

わんこそばが名物の「やぶ屋総本店」は、1923年に創業したそば処。宴会ができる広い座敷席を2階に設けたスタイルは、当時のそば屋としては珍しかった。20代後半で農業高校の教師をしていた宮沢賢治は、開店当初に店主と意気投合し、同僚を誘ってはそばを食べに通った。

和風のたたずまいをしたやぶ屋を、賢治は「Bush(ブッシュ)」と呼んだという。英語で「藪」という意味があり、語学が堪能な彼らしいシャレの効いたエピソードだ。

店内には座敷席とテーブル席がある。名物はわんこそば
店内には座敷席とテーブル席がある。名物はわんこそば

賢治が好んで注文したのは、天ぷらそばとサイダー。同僚とサイダーを飲みながら楽しく会話する姿は、酒を酌み交わす客たちよりもにぎやかだったそうだ。花巻で賢治ゆかりの地を巡るなら、ぜひ訪れたい一軒である。

賢治お気に入りの天ぷらそばとサイダーを味わえる「賢治セット」1000円(税別)
賢治お気に入りの天ぷらそばとサイダーを味わえる「賢治セット」1000円(税別)

【DATA】

  • 住所:岩手県花巻市吹張町7-17
  • アクセス:JR花巻駅から徒歩10分
  • TEL:0198-24-1011
  • 営業時間:午前11時~午後3時、午後5時~午後8時、わんこそばは午後7時30分まで
  • 定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)、1月1日
  • 多言語対応:ホームページ=英語/韓国語/中国語(簡体・繁体)/イタリア語/スペイン語/フランス語 

「茶寮かだん」で賢治設計の花壇を眺めながら一服

賢治が自ら造った花壇が現存する貴重な庭園 写真提供:茶寮かだん
賢治が自ら造った花壇が現存する貴重な庭園 写真提供:茶寮かだん

宮沢賢治はライフワークとして造園や花壇設計をしたが、当時の姿で残る場所は少ない。「茶寮かだん」には、彼が手掛けた花壇が残り、レンガをはじめとした資材も当時のままである。この喫茶店の建物と庭は、元は賢治の祖母方の又従兄弟に当たる橋本家の別邸で、賢治は自身が造った花壇を眺めによく訪れたそうだ。

5月頃には約270本ものチューリップが咲き誇る 写真提供:茶寮かだん
5月頃には約270本ものチューリップが咲き誇る 写真提供:茶寮かだん

橋本家は、岩手県内随一といわれるほどの大店「大津呉服店」を営む商家だった。1927年に建てられた邸宅には、贅(ぜい)を尽くした母屋と別邸、離れが造られたが、現存するのは別邸のみとなっている。建物に使用された貴重な古代杉の建材、繊細な職人技が施された欄間や飾り障子に加え、その庭園には賢治作の花壇が残された。茶寮かだんの店主は、「この別邸と花壇は花巻の財産だ。大事にしてくれる人に任せたい」と、前の所有者から託されたという。

引き取った時は、庭も建物も手入れがされておらず、花壇も1メートル四方しか見えていなかった。しかし、草むしりを始めると、賢治が置いた仕切りのレンガが長く続いているのを発見。最終的には、全長9メートルもの大きな花壇が出現した。建物の修復はプロに依頼したものの、庭園や屋内は店主一家で手入れして、公開までに1年半の時間を要したそうだ。

美しい日本庭園を望む縁側のテーブル席
美しい日本庭園を望む縁側のテーブル席

当初は庭園と建物を公開するだけであったが、「お茶を飲みながらゆっくり花壇を見てほしい」という店主の思いから、茶寮かだんを始めた。賢治が花壇を眺めた縁側は、今は喫茶店のテーブル席となっている。抹茶やしるこ、コーヒーなどを味わいながら花壇を観賞でき、偉人を身近に感じられるスポットとなっている。

「抹茶(和菓子付き)」と「おしるこ(おしんこ付き)」各500円(税込)
「抹茶(和菓子付き)」と「おしるこ(おしんこ付き)」各500円(税込)

【DATA】

  • 住所:岩手県花巻市花城町11-12
  • アクセス:JR花巻駅から徒歩13分
  • TEL:080-2823-1048
  • 営業時間:午前10時~午後6時
  • 定休日:木曜 

童話の中から飛び出した「山猫軒」で洋食を

小さな洋館を思わせるかわいらしい外観 写真提供:山猫軒
小さな洋館を思わせるかわいらしい外観 写真提供:山猫軒

宮沢賢治記念館の駐車場にある「山猫軒(やまねこけん)」は、賢治の童話の中でもファンが多い『注文の多い料理店』をモチーフにした洋食店だ。作中に出てくる「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」という一文が掲げられた玄関を入ると、土産物が並ぶ売店の奥がレストランになっている。その入り口付近を見ると、塩とクリーム、香水が置いてある。童話の描写を再現した演出なので、見落とさずにチェックしたい。

広い店内にはレトロなテーブルやイスが並ぶ
広い店内にはレトロなテーブルやイスが並ぶ

『注文の多い料理店』の主人公たちはテーブルにたどり着けないが、ここではちゃんと席に着いて注文ができるのでご心配なく。各テーブルには、賢治や山猫軒に関するクイズが楽しめる冊子が置かれている。花巻の見どころも載っており、食後に訪れる場所の参考にもなる。

ナポリタンやビーフシチューなど洋食店らしいメニューが並ぶが、地元の食材を味わえるセット料理も見逃せない。特製の味噌をたっぷり塗った香ばしい焼きおにぎりとすいとんの「山猫すいとんセット」と、豚の角煮と季節野菜の天ぷら、すいとんを組み合わせた「イーハトーブ定食」が人気だ。定食の角煮に使用される「白金豚(はっきんとん)」は、賢治が短編童話『フランドン農学校の豚』の中で「豚は白金と同等のもの」と例えたことにちなんで命名された花巻のブランド豚である。

地域の食材をふんだんに使用したすいとんが味わえる「山猫すいとんセット」1200円(税込)
地域の食材をふんだんに使用したすいとんが味わえる「山猫すいとんセット」1200円(税込)

【DATA】

  • 住所:岩手県花巻市矢沢3-161-33
  • アクセス:JR新花巻駅から岩手県交通バス「土沢線」で約3分、「宮沢賢治記念館口」下車、徒歩10分
  • TEL:0198-31-2231
  • 営業時間:午前9時~午後5時 食事は午前10時~ラストオーダー 午後4時30分
  • 定休日:年末年始 

●周辺情報

林風舎

JR花巻駅からほど近い「林風舎(りんぷうしゃ)」は、賢治の弟・清六の孫が営むショップ&カフェだ。1階のショップには、賢治作品をモチーフにした小物やアクセサリーなどオリジナルグッズが多くそろう。2階のカフェはレトロな雰囲気で、人気メニューは米粉を使った「ロールケーキ・オリザ」。その名前は、童話『グスコーブドリの伝記』の中で、米のことを稲の学名から「オリザ」と書いたことに由来する。ケーキは柔らかくもっちりとした口あたりが評判だ。他にも、「イギリス海岸バームクーヘン」といった、賢治の作品世界から発想を得た特製スイーツを味わえる。

しっとりとした食感の「オリザ・ケーキセット」1000円~(税込) 写真提供:林風舎
しっとりとした食感の「オリザ・ケーキセット」1000円~(税込) 写真提供:林風舎

【DATA】

  • 住所: 岩手県花巻市大通り1-3-4
  • アクセス:JR花巻駅から徒歩3分
  • TEL:0198-22-7010
  • 営業時間:午前10時~午後6時(ラストオーダー 午後5時30分)
  • 定休日:木曜 

取材・文・写真=シュープレス
(バナー写真=耳としっぽがかわいらしい、遊び心のある山猫軒の看板)

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