大阪・古市古墳群:「百舌鳥・古市古墳群」として世界遺産登録へ

文化

日本で2番目に大きい応神天皇陵古墳を擁す、大阪府東南部に広がる「古市古墳群」。2019年6月末からの世界遺産委員会で、「百舌鳥・古市古墳群」として大阪初の世界遺産となる見通しだ。魅力ある古墳の数々を紹介する。

墳墓数、構成資産数で百舌鳥エリアを上回る

大阪府藤井寺市から羽曳野市にかけての東西2.5キロ、南北4キロの範囲に、大小45基の古墳が点々と散らばる「古市(ふるいち)古墳群」。2019年5月14日、百舌鳥(もず)古墳群(大阪府堺市)と共に「百舌鳥・古市古墳群」として、国際記念物遺跡会議(イコモス)が世界文化遺産に登録するよう国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告。6月30日からアゼルバイジャンで始まる世界遺産委員会で正式に決定すれば、大阪府で初めての世界遺産登録となる。

【追記 : ユネスコは2019年7月6日、アゼルバイジャンのバクーで開催した世界遺産委員会で、日本が推薦した「百舌鳥・古市古墳群」の世界文化遺産への登録を決定した】

上空から、市街地に点在する古市古墳群を見下ろす。手前中央が応神天皇陵古墳
上空から、市街地に点在する古市古墳群を見下ろす。手前中央が応神天皇陵古墳

古墳の中では、百舌鳥古墳群にある「仁徳天皇陵古墳(大山古墳)」が知名度で群を抜いている。全長約500メートルと日本最大の前方後円墳で、堀も3重にめぐらされているため、圧倒的な威容を誇る。

それに比して、全長425メートルと2番目に大きい「応神天皇陵古墳」と古市古墳群は国内でもあまり知られていない。しかし、現存する古墳の数は百舌鳥エリアの44個よりも1つ多く、世界遺産登録の構成資産となる49基中26基が古市エリアにあり、その規模、価値は引けを取らない。そして、ビルや住宅が密集する市街地に巨大な墳墓が次々と出現するという点では、両エリアとも世界的にも珍しい貴重な古墳群であることは変わらない。

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百舌鳥古墳群にある仁徳天皇陵古墳
百舌鳥古墳群にある仁徳天皇陵古墳

土師ノ里駅からの観光がおすすめ

数多くある古墳を効率良く回るためには、百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進本部会議が発行する『ウォーキング・マップ』が参考になる。マップは周辺駅や観光案内所などで手に入るが、公式ホームページでも日英版がダウンロードできる。

古市古墳群のマップでは、「健脚コース(約7.4キロ、約3時間)」「クイックコース(約4.4キロ、約1.5時間)」「撮っておき!コース(約4.4キロ、約1.5時間)」の3種類を紹介している。健脚コース以外の2つがスタート地点とするのが、近鉄南大阪線の「土師ノ里(はじのさと)」駅(藤井寺市)。ここから古市エリアでは一番大きい応神天皇陵古墳に至るまで、大小の古墳が連なっているので飽きることなく歩けるルートである。

巨大な応神天皇陵古墳から、尻尾のように右上に続く古墳群。大き目な仲姫命陵古墳の先で途切れた辺りに土師ノ里駅がある
巨大な応神天皇陵古墳から、尻尾のように右上に続く古墳群。大き目な仲姫命陵古墳の先で途切れた辺りに土師ノ里駅がある

土師ノ里駅を降りたら、まず北側にある「允恭(いんぎょう)天皇陵古墳」を訪れたい。駅から徒歩で約5分の住宅地に、古市エリアで4番目の大きさとなる前方後円墳が出現する。北側まで回り込むと前方部が眺めやすい。堀に群生するアシが冬枯れて茶色くなる12月は、古墳の緑と鮮やかなコントラストを描く。

北西から允恭天皇陵古墳を望む。堀のアシが茶色く染まる12月が特に美しいという
北西から允恭天皇陵古墳を望む。堀のアシが茶色く染まる12月が特に美しいという

一度駅に戻ってから、南西に位置する巨大古墳「仲姫命(なかつひめのみこと)陵古墳」を目指す。全長290メートルで、古市で2番目の大きさを誇る。允恭天皇陵古墳からは徒歩で10分ほど。拝所がある南西側には、前方部を向かい合わせに「古室山古墳」が見える。全長約150メートルで、仲姫命陵古墳と応神天皇陵古墳を橋渡しするような形で横たわっている。公園として整備されているので、墳丘の中に入ることができる珍しい古墳だ。

台地の上にある仲姫命陵古墳の全長は300メートル近いが、周囲の堀は狭い
台地の上にある仲姫命陵古墳の全長は300メートル近いが、周囲の堀は狭い

仲姫命陵古墳の北西にある案内板。古墳のサイズや歴史、言い伝えなどを紹介する
仲姫命陵古墳の南西にある案内板。古墳のサイズや歴史、言い伝えなどを紹介する

古室山古墳は、中に入れる珍しい古墳。公園として、市民の憩いの場でもある
古室山古墳は、中に入れる珍しい古墳。公園として、市民の憩いの場でもある

古室山古墳の南の西名阪自動車道の高架をくぐると、すぐに墳丘長110メートルの「大鳥塚古墳」がある。その南側にそびえるのが、応神天皇陵古墳の森だ。拝所は北側にあり、その奥に広がる鬱蒼(うっそう)とした墳墓の迫力には息を飲む。墳丘を堀が囲み、その周囲にも木々が生い茂る。大き過ぎて地上から肉眼で全容を把握することはできないが、森には神秘の力が宿っているように感じられる。

大鳥塚古墳も墳丘内に立ち入ることができる
大鳥塚古墳も墳丘内に立ち入ることができる

応神天皇陵古墳南側にある拝所
応神天皇陵古墳の北側にある拝所

南側上空から見た応神天皇陵古墳。市街地に現れた巨大な森のようだ
南側上空から見た応神天皇陵古墳。市街地に現れた巨大な森のようだ

魅力的な古墳が散在する

応神天皇陵古墳から西へ徒歩30分ほどで、古市エリアで3番目に大きい「仲哀(ちゅうあい)天皇陵古墳」(全長230メートル)がある。周囲の堀は幅が広く、室町時代には城として使われていたという。

墳丘が3段に築かれているという仲哀天皇陵古墳だが、木々によって見ることができない
墳丘が3段に築かれているという仲哀天皇陵古墳だが、木々によって見ることができない

世界遺産の構成資産には含まれないが、仲哀天皇陵古墳の南20分の場所には「仁賢天皇陵古墳(仁賢天皇 埴生坂本陵)」があり、隣接する下田池越しに眺めると美しい。さらに南に300メートルほど進めば「峯ヶ塚古墳」があり、古墳を囲む峰塚公園は桜の名所で春には桜と古墳の共演が眺められる。

下田池越しの仁賢天皇陵古墳
下田池越しの仁賢天皇陵古墳

峰塚公園の噴水の向こうに広がる峯ヶ塚古墳
峰塚公園の噴水の向こうに広がる峯ヶ塚古墳

峯ヶ塚古墳から東へ行くと、全長200メートルの前方後円墳「白鳥陵古墳」に至る。日本武尊(ヤマトタケル)が白鳥に姿を変え、最後に降り立った地という伝説を持つ。そこから、さらに7分ほど東に歩けば近鉄南大阪線「古市」駅(羽曳野市)に到着する。

日暮れ時の白鳥陵古墳をドローンで撮影。幅30~50メートルと広い堀が、夕日の色で染まる
日暮れ時の白鳥陵古墳をドローンで撮影。幅30~50メートルと広い堀が、夕日の色で染まる

もずふるレンタサイクルで快適に巡る

土師ノ里駅前駐輪場、古市駅前駐輪場、大仙公園観光案内所(仁徳天皇陵に隣接)の3カ所にある「もずふるレンタサイクル」を利用すれば、百舌鳥と古市の両エリアをさらに効率よく巡ることができる。2つのエリアは約10キロ離れているが、レンタサイクルは電動アシスト付きなので移動はラクラク。

百舌鳥エリアの大仙公園観光案内所は閉まるのが早いため、百舌鳥出発・古市ゴールの順路にすると、じっくり時間をかけて古墳を見て回ることができるだろう。レンタサイクルの料金は1日1000円(貸し出しと同じ場所に返却すれば500円)。

土師ノ里駅前駐輪場
土師ノ里駅前駐輪場

電動アシスト付きの自転車で、ヘルメットも無料で貸してくれる
電動アシスト付きの自転車で、ヘルメットも無料で貸してくれる

【DATA】

  • 大仙公園観光案内所:申込=午前9時~午後4時30分 返却=午前9時~午後4時30分
  • 古市駅前駐輪場:申込=午前9時~午後4時 返却=午前9時~午後6時
  • 土師ノ里駅前駐輪場:申込=午前9時~午後4時 返却=午前9時~午後6時

取材・文=藤井 和幸(96BOX)
写真=黒岩 正和、藤井 和幸(96BOX)
(バナー写真=古市古墳群の夕景)

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