新幹線・新神戸駅から徒歩15分の「布引の滝」で本格的ハイキング

JR西日本の新神戸駅(兵庫県神戸市)から、たった30分で往復できる名瀑「布引の滝」。緑豊かなハイキング道を歩けば、自然に癒やされ、海と山に挟まれた大都市・神戸の魅力を短時間で体感できる。

神戸の魅力の一つ、六甲山系の自然

奈良時代から瀬戸内海の海運の要衝として栄え、1868年(慶応3年)に開港した神戸。異国情緒漂う港町として知られるが、150万人以上が暮らす大都市のすぐ北側に、六甲の山々が横たわっていることも大きな特徴といえる。ベイエリアのシンボル・神戸ポートタワーからわずか2キロの距離に、緑あふれる登山道の入口があるのだ。

神戸ポートタワー展望台から見下ろした神戸の中心街。その背後には六甲山系が横たわっている
神戸ポートタワー展望台から見下ろした神戸の中心街。その背後には六甲山系が横たわっている

海外から伝わったものの中には、登山やハイキングといった自然を楽しむ文化もある。1874(明治7)年、ピッケルや登山靴などを装備した外国人たちが六甲山に登った。それが日本で初めての本格的登山とされる。それまでの日本では山岳信仰や修験修行のためなどに山へ入ることはあったが、レジャーとしての山登りはほぼ存在しない。北野のように日本人と外国人の混住が認められた「雑居地」では、西欧の文化や生活習慣に触れる機会も多く、自然と触れ合うハイキング(山遊び)が神戸の人々にも浸透していったのだ。

人気観光スポット「神戸北野異人館 風見鶏の館(やかた)」も、六甲山系のすぐそばにある
人気観光スポット「神戸北野異人館 風見鶏の館(やかた)」も、六甲山系のすぐそばにある

新幹線の待ち時間に本格的なハイキング

そんな神戸の地形や文化が、短時間で感じられる場所が新幹線の「新神戸」駅の裏手にある。片道15分ほどで本格的なハイキング、森林浴が楽しめる「布引の滝」だ。新幹線で到着した直後や、神戸をたつ前にもうひと遊びしたい人が立ち寄ることの多い名所である。

新神戸駅の背後には六甲山が迫っている。1階まで降りて北側に進む道に出ると、「布引の滝 0.4KM」と大きな案内表示があるので地図などを持たなくても安心だ。駅の裏手すぐには澄んだ渓流があり、その水が駅舎の下を流れていることに驚かされる。

六甲山を背負うJR西日本の新神戸駅
JR西日本の新神戸駅のすぐ背後には六甲山系が連なる

新神戸駅1階から駅舎の下を通る道路に出ると、大きな案内表示が見える
新神戸駅1階から駅舎の下を通る道路に出ると、大きな案内表示が見える

駅から2分ほどの場所にあるれんが造りの砂子橋(いさごばし)を渡ると、緑に包まれたハイキングコースが始まる。すぐに分岐点があり、左側の平坦な道は「雌滝(めんたき)」まで100メートル、右の急斜面の階段を登れば「雄滝(おんたき)」まで270メートルという表示がある。

ハイキング道の入り口・砂子橋は重要文化財「布引水源地水道施設」の一つ
ハイキング道の入り口・砂子橋は重要文化財「布引水源地水道施設」の一つ

右の階段が雄滝への近道だが、左へ進む雌滝経由でも雄滝に向かえる
右の階段が雄滝への近道。左へ進む雌滝経由でも雄滝に向かえる

「布引の滝」は布引渓流にある4つの滝、雄滝・雌滝・夫婦滝(めおとだき)・鼓ヶ滝(つつみがだき)の総称。華厳の滝(栃木県日光市)や那智の滝(和歌山県那智勝浦町)とともに、日本三大神滝に数えられる。最大の落差を持つ雄滝が特に有名だが、時間に余裕がなければ雌滝に訪れるだけでも十分価値がある。

雌滝は美しい2段の滝で、新神戸駅からわずか5分の距離とは思えぬほど、豊かな自然に囲まれている。水が流れ落ちる音に耳を傾けていると、ついさっきまで駅の人波にもまれいたことがうそのように思える。少し遠回りになるが、雌滝から鼓ヶ滝を経由して、その先の雄滝と夫婦滝に向かう、「布引の滝」コンプリートコースがおすすめだ。

新幹線駅から徒歩5分とは思えない、緑あふれる雌滝の光景
新幹線駅から徒歩5分とは思えない、緑あふれる雌滝の光景

見晴らし所にはベンチがあるので、ゆったりと滝の音に耳を傾けよう
見晴らし所にはベンチがあるので、ゆったりと滝の音に耳を傾けよう

分岐点から階段を上って行けば、雄滝まで10分弱。道中には鼓ヶ滝を見下ろすポイントがあり、周りの木々を眺めながら歩けばすぐに到着する。急こう配で滑りやすい場所もあるが、手すりなども設置されているのでビジネスシューズでも登れないことはない。

雄滝は最大落差43メートルの雄大な滝だ。ねじれながら広がるように流れる水は、白い衣のように見える。これが「布引」の名前の由来でもある。その滝つぼから2筋に流れ落ちるのが夫婦滝。滝の向かいにはベンチが並び、自然が生み出した芸術品を堪能できる。

上段の優美な流れが雄滝。滝つぼから零(こぼ)れ落ちる2本の筋が夫婦滝
上段の優美な流れが雄滝。滝つぼから流れ落ちる2本の筋が夫婦滝

豪快な音を立てながらしぶきを上げる雄滝を観賞する人々
豪快な音を立てながらしぶきを上げる雄滝を観賞する人々

神戸ならではのぜいたくな朝の習慣

もう少し先にある「見晴らし展望台」まで足を延ばせば、神戸に根付くハイキング文化の一端に触れられる。雄滝の右側に続く階段を上り、創業100年以上の「おんたき茶屋」の横を通り過ぎると、5分ほどで見晴らし展望台に到着。神戸の町と海が一望できる公園だ。

見晴らし展望台は絶好の写真スポット
見晴らし展望台は絶好の写真スポット

大都市の向こうに海が見える、「ザ・神戸」という風景が広がる
大都市の向こうに海が望める、「ザ・神戸」という景色が広がる

園内には「ラジオ体操会場」という張り紙があり、「登山会署名所」の表札を掲げる小屋もある。麓の街に住む神戸っ子が毎朝、山道を登って運動を楽しんでいるのだ。ラジオ体操に何十年も通い続け、間もなく2万回参加を達成するという女性もいる。

おんたき茶屋には、街中の喫茶店のようにハムエッグ付きのモーニングセットメニューもある。ハイキングが神戸の日常生活の一部になっていることの証しだろう。

布引エリアに限らず、神戸では自宅近くにお気に入りのハイキングコースを持つ人が多い。天気の良い朝、少し早起きして山歩きへ。身体を動かした後に、緑の中でモーニングやコーヒーで一休みしてから、仕事などに出掛ける。そんな生活を楽しめる大都市は、日本では珍しい。街のすぐ背後に六甲山系が迫り、居留地の外国人がハイキング文化をもたらした神戸ならではのぜいたくな日常だ。

大正4年創業のおんたき茶屋では、滝を眺めながら一杯やっている地元民の姿も
大正4年創業のおんたき茶屋では、滝を眺めながらビールを味わう地元民の姿も

都会のけん騒を逃れ、水が流れ落ちる音を聞きながらの至福のコーヒータイム
都会のけん騒を逃れ、水が流れ落ちる音を聞きながらの至福のコーヒータイム

さらにハイキング道を15分進めば、歴史ファンやダム好きにはたまらない布引ダム(布引五本松堰堤)が出現する。1900(明治33)年に建造された日本初の重力式コンクリートダムで、国の重要文化財に指定される「布引水源地水道施設」の中核施設だ。

ダム湖の布引貯水池は、外国船の乗組員たちが称賛した「神戸ウォーター」「布引の水」を60万立方メートルも蓄えている。六甲山の花こう岩層でろ過されたミネラル豊富な水は、船に積み込むと長い航海の間も変質せずにおいしさを保ち続けたという。

新神戸駅で時間に余裕のある人は、神戸の魅力がつまった布引の滝のハイキング道に是非訪れてみてほしい。

水量が多い時にだけ出現する「五本松かくれ滝」。布引ダムの手前にある
水量が多い時にだけ出現する「五本松かくれ滝」。布引ダムの手前にある

粗石コンクリート造りの布引ダムは重厚なたたずまい
粗石コンクリート造りの布引ダムは重厚なたたずまい

布引貯水池からもまだまだ続くハイキング道では、野鳥観察なども楽しめる
布引貯水池からもまだまだ続くハイキング道では、野鳥観察なども楽しめる

取材協力=神戸観光局
取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部

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