青森「不老ふ死温泉」:大海原に沈む夕日が望める海辺の露天風呂

青森県深浦町の西海岸に湧く「不老ふ死温泉」は、目の前に日本海の大海原が広がる露天風呂が名物。秘湯好きの間でも、「一度は入りたい」と絶大な人気を誇る温泉の魅力を紹介する。

野趣あふれる海辺の露天風呂へは、人気の五能線で

美しい海岸線が続く、青森県西端にある深浦町の黄金崎周辺。古くから温泉が湧く海辺として知られ、地元の人々は岩盤を掘って湯船にして浸かっていた。その岬に建つ一軒宿「黄金崎不老ふ死温泉」では、宿泊はもちろん、日帰りでも気軽に日本海のパノラマと露天風呂が楽しめる。「ふ死」と平仮名を使用するのは、書道家に「否定を意味する漢字“不”が2つ続くと縁起が悪い」と言われたのが理由だそうだ。

日本海を一望する海岸に宿が建つ 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉
日本海を一望する海岸に宿が建つ 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉

この温泉へは、人気のローカル鉄道「五能線」での旅がおすすめ。日本海と世界自然遺産「白神山地」の間を走り抜け、車窓から絶景を眺めることができる。特に臨時快速「リゾートしらかみ」の新型車両「橅(ブナ)編成」は、大きな窓と、秋田産のスギや青森ヒバなど沿線の木材をふんだんに使用した内装が好評。津軽三味線の生演奏や津軽弁「語り部」実演といった車内イベントも開催している。「白神十二湖」トレッキングなど沿線の観光地も巡るなら、2日間有効で何度も途中下車できる「五能線フリーパス」(3880円。全車指定席の列車は別途、指定席券530円が必要)が便利だ。

深浦-広戸駅間の海岸沿いを走る観光列車リゾートしらかみ 写真提供:JR秋田支社
深浦-広戸駅間の海岸沿いを走る観光列車リゾートしらかみ 写真提供:JR秋田支社

開放感抜群の混浴露天風呂を堪能

不老ふ死温泉の茶褐色の湯は、鉄分を多く含む塩化物泉で、体の芯からよく温まって湯冷めしにくい。殺菌作用も高いことから皮膚病などに良いとされ、美肌効果が期待できるメタケイ酸や炭酸水素イオンも豊富に含む。「不老不死」の名にふさわしい豊富な効能があるので、日々のストレスや旅で疲れた体を癒やしてくれることだろう。

雄大な日本海の眺望を満喫できる新館大浴場「不老ふ死の湯」。サウナや日本海パノラマ展望風呂も備える 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉
雄大な日本海の眺望を満喫できる新館大浴場「不老ふ死の湯」。サウナや日本海パノラマ展望風呂も備える 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉

波打ち際にある名物「海辺の露天風呂」は、大きな湯船の混浴と小さめの女性専用と2つが並ぶ。開放的で、より海との一体感があるのが混浴風呂。湯船の中でタオルを巻いたり、水着を着たりはできないが、売店で入浴専用の湯あみ着をレンタル・販売している。厚めのタオル地で肩ひものあるワンピース形なので、女性でも混浴風呂に挑戦しやすい。

海辺の露天風呂の湯船は、目の前に水平線が広がり、まるで雄大な海に浸っているかのようで、岩に押し寄せて白く砕ける波の音も心地良い。湯はぬるめなので、のんびりと長湯をして絶景を満喫できる。

「不老ふ死温泉」の混浴露天風呂。冬の日本海は波が高く、入浴禁止になることも。 写真提供:青森県観光連盟
「不老ふ死温泉」の混浴露天風呂。冬の日本海は波が高く、入浴禁止になることも。 写真提供:青森県観光連盟

湯上りコーナーにはマッサージチェアのほか冷水や温茶のセルフサービスも 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉
湯上りコーナーにはマッサージチェアのほか冷水や温茶のセルフサービスも 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉

露天風呂から眺める夕日は宿泊者限定

日本海に面する深浦町は太陽が水平線に沈み、「日本の夕陽百選」にも選出されている。海辺の露天風呂の利用は、日帰り入浴だと午後4時まで。日没までゆっくりと湯に浸かり、雄大な夕景を堪能できるのは宿泊客の特権だ。

さらに深浦町は、環境省の「全国星空継続観察」で日本一星空が美しい土地に認定された。不老ふ死温泉の新館にある露天風呂なら、宿泊すれば午前0時まで入れるので、満天の星を見上げながら温泉も同時に堪能できる。

夕日を浴びて露天風呂の湯が黄金色に輝く 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉
夕日を浴びて露天風呂の湯が黄金色に輝く 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉

海が望める客室でくつろぎ、山海の幸に舌鼓

宿は海辺の高台にあるため、全ての客室が日本海を見晴らすオーシャンビュー。もちろん客室からも夕日や星空を眺められる。

海辺の露天風呂を存分に楽しんだ後は、夕食で深浦の恵みを味わおう。白神山地の清らかな伏流水が流れ込む海は豊かな漁場。宿から約30キロの沖に浮かぶ無人島で捕るサザエやアワビ、マグロ、タイなど、旬の魚介を使った料理がおなかも心も満たしてくれる。

海に面した客室は静かな波の音が耳に届く。趣のある和室は気取らない雰囲気なので、旅の疲れを忘れてくつろぐのにぴったり 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉
海に面した客室は静かな波の音が耳に届く。趣のある和室は気取らない雰囲気なので、旅の疲れを忘れてくつろぐのにぴったり 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉

ボリューム満点の夕食(メニューは季節により変更) 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉
ボリューム満点の夕食(メニューは季節により変更) 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉

天井が高く広々としたロビー。毎週土曜日には津軽三味線の生演奏を聴くことができる 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉
天井が高く広々としたロビー。毎週土曜日には津軽三味線の生演奏を聴くことができる 写真提供:黄金崎不老ふ死温泉

【DATA】

  • 住所:青森県西津軽郡深浦町舮作下清滝15-1
  • アクセス:JR五能線「ウェスパ椿山」駅からタクシーで5分 ※送迎バス有り リゾートしらかみ利用は、発着時間に合わせての送迎のため、予約不要。普通列車利用は、要予約
  • TEL:0173-74-3500
  • 宿泊料金:1泊2食付=1万2570円~
  • 宿泊客入浴時間:海辺の露天風呂=日の出~日没、本館「黄金の湯」午前8時~午9時、新館大浴場「不老ふ死の湯」=午前4時~9時/午前10時30分~0時
  • 日帰り入浴料・受付時間:大人600円、子ども300円  海辺の露天風呂=午前8時~午後4時、本館「黄金の湯」午前8時~午後8時、新館大浴場「不老ふ死の湯」午前10時30分~午後2時
  • 多言語対応:HP…英語、施設内の案内表示…英語、スタッフによる案内…英語/中国語(簡体・繁体)

【周辺情報】

白神十二湖「青池」

青森と秋田の県境にある山岳地帯に世界最大級のブナの原生林が広がり、日本で初めてユネスコの世界自然遺産に登録された白神山地。その西麓「津軽国定公園」内に点在する湖沼群「十二湖」は、白神山地随一の人気観光スポットだ。青いインクを流し込んだような水をたたえる「青池」は特に名高く、その透明度は水深9メートルの底にある倒木がはっきりと見えるほど。ブナが生い茂る森の中に、青池をはじめとする湖沼を巡る「十二湖散策コース」が整備されているので、気軽に世界自然遺産を体感できる。

青池の前に設置してあるデッキから眺められる 写真提供:深浦町観光課
青池の前に設置してあるデッキから眺められる 写真提供:深浦町観光課

【DATA】

十二湖散策コース・青池

  • 住所:青森県西津軽郡深浦町松神山国有林
  • アクセス:JR「十二湖」駅から弘南バス「奥十二湖駐車場行き」で約15分。終点から徒歩すぐの「森の物産館キョロロ」がスタート地点。青池までは徒歩約10分
  • 散策可能時期:4月上旬~11月下旬
  • 所要時間:1周(1.8キロ)=約60分
  • 多言語対応:施設内の案内表示…英語
  • TEL:0173-74-4412(深浦町観光課)

取材・文=シュープレス
バナー写真:海に沈む夕日を望む「不老ふ死温泉」の露天風呂 写真:青森県観光連盟

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