統一規格で全国の観光名所をつなぐ「ロゲットカード」:旅の思い出を収集しよう

日本各地の観光スポットを統一規格でカード化した「ロゲットカード」の配布が、7月3日からスタートする。“旅の思い出”として人気を呼びそうな観光PRグッズについて、仕掛け人に話を聞いた。

全国の観光名所の写真をカラフルにあしらった「ロゲットカード(LOGet!CARD)」。裏面では施設の歴史や見どころ、周辺情報などを紹介している。第1弾は、北は旭山動物園(北海道旭川市)から南は屋久島(鹿児島)までの52種類で、各スポットで7月3日から配布を開始。現地に行かないと手に入らないため、希少価値が高く、収集家の心をくすぐりそうだ。

どの観光地のカードも同じフォーマットで、カード番号やアイコン、QRコードなどが入っている。テーマカラーは北海道が紫、関東は水色と地域ごとに違い、アイコンにはタワーや城、山などをデザイン。「まずは地元の関東から集めてみよう」「城をコンプリートしよう」など、自分好みの楽しみ方ができるように工夫が凝らしてある。

「No.0001」の札幌市時計台。裏面には、季節ごとの姿や内部の写真などが掲載されている 画像提供=Storynote
「No.0001」の札幌市時計台。ロゲットカードの裏面には、四季折々の風景や施設内部の写真などを掲載している 画像提供=storynote

地方ごとにテーマ色が違うロゲットカード。いろいろな集め方が楽しめる 画像提供=Storynote
地方ごとにテーマ色が違い、アイコンなどが配置してあるので、いろいろな集め方ができる 画像提供=storynote

下水道のPRマンが手掛けた観光客誘致

東京・神田明神でロゲットカードの先行配布が6月27日に行われ、早くも長蛇の列ができる人気だった。

神田明神の文化交流館前に設置されたロゲットカードの配布会場。マンホールカードの愛好家も集まったようで大盛況
神田明神の文化交流館前に設置されたロゲットカードの配布会場。マンホールカードの愛好家も集まったようで大盛況

神田明神のロゲットカードは、裏面に日本三大祭りの一つ「神田祭」の解説などがある
神田明神のロゲットカードは、裏面に日本三大祭りの一つ「神田祭」の解説などが載る

このカードの仕掛け人は、シナリオ制作会社「ストーリーノート」(本社東京・稲城市)の山田秀人さん。「マンホール蓋(ぶた)の伝道師」と呼ばれる人物だ。水道機器メーカーで働いていた2016年、下水道の存在をPRするために「マンホールカード」を発案。現在までに535自治体が参加し、全667種類が累計で約560万枚も発行されている。

マンホールカードは、観光名所や名産品をカラフルにデザインした「ご当地マンホール」をカード化したもの。設置場所近くで配布されるので、現地まで行かないと手に入らないことから、マンホール愛好家が旅に出掛け、地域の観光振興にも大きく寄与している。

「マンホールカードを配布するとき、一緒に周辺の名所や飲食店などを載せたマップなども手渡しています。日本各地で観光のお手伝いをするうちに、観光スポットそのものをカードにしたいと思ったのです」(山田さん)

ロゲットカードを手にする山田さんは、おもちゃメーカーでの勤務経験がある
ロゲットカードを手にする山田さんは、おもちゃメーカーでの勤務経験がある

配布場所に行けばもらえるマンホールカードとの違いは、手に入れるための条件があること。例えば、東京タワーでは予約制の「トップデッキツアー」に参加する必要があり、伊香保温泉(群馬)では共同浴場「伊香保露天風呂」に入浴した人のみに配布される。

「ロゲットカードは旅の思い出と共に持ち帰ってほしい。条件が厳しいと感じる人もいるかもしれませんが、伊香保温泉のカードを眺めれば、温泉につかった至福の時を思い出せるでしょう。観光施設の利益に直接還元してもらうことで、カードの高い品質などが維持できていることをご理解いただきたい」

展望台「スカイデッキ」のツアーに参加しないともらえない東京タワーのロゲットカード
展望台「トップデッキ」のツアーに参加しないともらえない東京タワーのカード。その分、希少価値は高い

観光スポットをつなぐハブとなり、物語を生み出す

本来、ロゲットカードは春から配布を開始する予定であったが、新型コロナウイルス流行拡大の影響で延期となっていた。国内観光が再始動しつつある今、全国の観光名所が統一規格を採用するロゲットカードは、一つの起爆剤になる可能性を持つ。

「われわれストーリーノートはシナリオ制作会社で、エンターテインメントで社会に貢献したいと思っています。ただカードを配ることが目的でなく、今までバラバラにプロモーションしていた観光スポットを物語のようにつないでいきたい。その結果、コロナの影響で、一時落ち込んでしまった観光業の力になれればと願っています」

城でロゲットカードを受け取った人が「近くの動物園やタワーでも配ってるから行ってみよう」「あの県の城にもカードがあるみたい」となり、観光地をつなぐハブのような役割を果たす。そして、ロゲットカードを集めるのが目的で、旅程を立てる人たちが生まれる。山田さんは、そんな未来を描いている。

現在、インバウンド需要が見込めない中でも、すでに諏訪高島城(長野)は英語版と中国語版、軍艦島デジタルミュージアム(長崎)では英語版を制作しており、今後も外国語版カードが増える予定。おもちゃやゲーム大国である日本らしい観光客誘致策は、国内外で注目を集めそうだ。

軍艦島デジタルミュージアムの英語版と諏訪高島城の繁体字版 画像提供=Storynote
軍艦島デジタルミュージアムの英語版と諏訪高島城の繁体字版の裏面 画像提供=storynote

神田明神の岸川雅範神主と山田さん
神田明神の岸川雅範神主と山田さん

取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部

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