世界に通じるダテ男、初代仙台藩主・伊達政宗ゆかりの地【青葉城編】

歴史

戦国武将・伊達政宗(だて・まさむね、1567-1636)が礎を築いた宮城県仙台市。人口100万人超を有する東北最大の都市には、今なお国内外の人々を魅了する“独眼竜”や伊達家と縁深い観光スポットが随所に残る。まずは政宗が居城とした仙台城、通称「青葉城」を紹介したい。

奇抜な戦略で現代人も魅了する独眼竜

全国で戦国武将が台頭し、覇権をめぐる争いが頻発した戦国時代(1493-1590)。政宗はその真っただ中、当時出羽国(現在の秋田県と山形県)を治めていた伊達家の嫡男として米沢城で誕生した。幼少期に天然痘を患って右目を失明するも、17歳で家督を継いで以降、奇抜な戦略と数々の武功によって、「独眼竜」の異名とともにその名を全国にとどろかせた。

1600(慶長5)年の関ケ原の戦いでは、勝利を収めた徳川軍に加勢。翌年から青葉山(仙台市青葉区)で城の建設を開始し、仙台藩が成立した。城下町も整備し、東北地方最大の都市・仙台の礎を築いていく。米の生産量を基に領地の規模を表す「石高(こくだか)」で、仙台藩は62万石。これは、「加賀(現在の石川と富山)100万石」の前田氏、約73万石の薩摩藩(現在の鹿児島)の島津氏に次いで3番目の規模だったという。

政宗の銅像や絵の多くは両目を見開く。「死後につくる肖像には両目を描くように」と遺言したとも伝わっている 写真提供:仙台観光国際協会
政宗の銅像や絵の多くは両目を見開く。「死後につくる肖像には両目を描くように」と遺言したとも伝わっている 写真提供:仙台観光国際協会

政宗は、料理や和歌にも精通する⽂化⼈であった。しゃれた装いと粋な振る舞いは「伊達男」の語源になったともいわれ、⽚⽬に眼帯、漆⿊の甲冑(かっちゅう)に⾝を包んだ独特の⾵貌で、⼩説や映画、アニメ、ゲームの登場⼈物となることが多い。1987(昭和62)年放送のNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』は、平均視聴率39.7パーセントと大河ドラマの歴代最高を誇る。

小田原征伐への参加が遅れ、天下人・豊臣秀吉(1537-1598)の反感を買った際には、白い死に装束をまとって謁見(えっけん)し、その覚悟に感服した秀吉から許しを得たというエピソードは有名だ。そうした個性豊かで機知に富んだパフォーマンスの数々が伝わるため、政宗は現代の人々をも引き付けるようだ。

青葉山の仙台城跡から市街地を一望 写真提供:仙台観光国際協会
青葉山の仙台城跡から市街地を一望 写真提供:仙台観光国際協会

伊達家の要塞・仙台城跡へ

第2次世界大戦の空襲によって仙台は焼け野原となり、江戸時代の町並みは消えてしまったが、政宗と伊達家の面影が感じられる場所は数多い。その代表格が仙台城跡だ。標高130メートルの青葉山に築かれたため、「青葉城」の呼び名でも親しまれている。北と東を流れる広瀬川、南の竜ノ口渓谷が堀の役割を果たし、西側にはうっそうとした御裏林(おうらばやし)が広がり、高い防御力を備えていた。政宗はあえて天守閣を築かなかったが、そこには徳川幕府の警戒心をそぐ計算があったという。

明治時代、陸軍によって本丸内が解体され、その後の火災によって大半の建造物が焼失。昭和初期まで残っていた大手門と脇櫓(わきやぐら)は国宝の指定を受けたが、戦火に焼かれた。現在、仙台城跡には最大17メートルの高さの石垣、1967(昭和42)年に復元された脇櫓などが残る。公園として整備された本丸跡には「伊達政宗公騎馬像」が立ち、天下取りの野望に燃えた政宗と同じ視点で仙台平野が見渡せる。

日没後には騎馬像がライトアップされる 写真提供:仙台観光国際協会
日没後には騎馬像がライトアップされる 写真提供:仙台観光国際協会

脇櫓から本丸跡までは曲がりくねった道が続く 写真提供:仙台観光国際協会
脇櫓から本丸跡までは曲がりくねった道が続く 写真提供:仙台観光国際協会

本丸跡には、宮城県護国神社や青葉城資料展示館もある。護国神社は、宮城県ゆかりの戦没者の魂を祀っている。緑豊かな青葉山の自然を背景に、鮮やかな朱塗りの拝殿が印象深い。本殿の隣には政宗を祭神とする別宮、浦安宮も建っている。

伊達家にまつわる資料を公開する青葉城資料展示館では、VR(仮想現実)で約400年前の仙台城を体験できるツアー「仙台城VRゴー」(大人500円)が好評。専属ガイドとともに仙台城跡を巡り、9つのポイントで専用のVRスコープをのぞけば、往時の仙台城が360度のパノラマ映像となって現れる。豪華絢爛(けんらん)な襖絵(ふすまえ)が並ぶ大広間や、崖にせり出すように建てられた「懸造(かけづくり)」の城の一角など、臨場感たっぷりだ。

護国神社は、正月の初詣スポットとして人気 写真提供:仙台観光国際協会
護国神社は、正月の初詣スポットとして人気 写真提供:仙台観光国際協会

現在、二の丸跡は東北大学の川内キャンパスとなっている。仙台城の背後を守った御裏林は、明治維新から陸軍が管理し、戦後は駐留軍用地となるなど長年一般市民が立ち入れなかったため、美しいモミ林を代表に貴重な動植物が守られてきた。1972(昭和47)年には国の天然記念物「青葉山」に指定され、その自然を研究と教育のために利用する東北大学植物園は人気の観光施設となっている。

自然植生であるモミの林が残る東北大学植物園 写真提供:仙台観光国際協会
自然植生であるモミの林が残る東北大学植物園 写真提供:仙台観光国際協会

仙台市博物館で伊達家寄贈の文化財を見学

三の丸跡には、仙台伊達家からの寄贈資料をはじめ、仙台に関わる歴史・文化・美術工芸資料など約9万7000点の文化財を収蔵する仙台市博物館がある。海外にも関心を持っていた政宗は、慶長遣欧使節の一人として支倉常長(はせくら・つねなが、1570頃-1621頃)らをヨーロッパに派遣。博物館では、現存する国内の油絵のうち、実在の日本人を描いた最古の作品でユネスコ記憶遺産にも登録されている「支倉常長像」、国宝の「ローマ教皇パウロ五世像」や「ローマ市公民権証書」なども保管・展示している。

常設展では約1000点の資料を展示。季節ごとに展示替えを行っている 写真提供:仙台市博物館
常設展では約1000点の資料を展示。季節ごとに展示替えを行っている 写真提供:仙台市博物館

特に政宗ファン必見なのが、期間限定で展示する政宗の甲冑「黒漆五枚胴具足(くろうるしごまいどうぐそく)」。漆黒のよろいとの対比で、金箔(きんぱく)張りのかぶとの前立て「弦月(げんげつ)」がより輝いて見える。

仙台市博物館所蔵の重要文化財「黒漆五枚胴具足 伊達政宗所用」 写真提供:仙台市博物館
仙台市博物館所蔵の重要文化財「黒漆五枚胴具足 伊達政宗所用」 写真提供:仙台市博物館

仙台市博物館

  • 住所:宮城県仙台市青葉区川内26
  • TEL:022-225-3074
  • 開館時間:午前9時~午後4時45分(入館は午後4時15分まで)
  • 定休日:月曜(祝日・振替休日の場合は開館)、祝日・振替休日の翌日(土・日曜、祝日の場合は開館)、12月28日~1月4日
  • 料金:一般・大学生460円、高校生230円、小・中学生110円
  • 多言語対応:HP…英語、パンフレット…英語/中国語(簡体・繁体)/韓国語、施設内の案内表示…英語/中国語(簡体)/韓国語
  • アクセス:仙台市地下鉄東西線国際センター駅から徒歩約8分

取材・文=シュープレス

(バナー写真=仙台城跡に立つ伊達政宗公騎馬像 写真:仙台観光国際協会)

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